膝関節の拘縮に適応「関節授動術」って何?
“関節”というのは、
必要な可動域を有してこそ、本来の機能を発揮することが可能です。
しかしながら、どの関節においても加齢や外傷、炎症などによって
組織に癒着などの変性を生じると、
「関節拘縮」という症状を引き起こすことがあります。
「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」とは、
“関節が固くなって動かせなくなる状態”
です。
関節には、
筋だけでなく、靭帯や関節包、筋膜や皮膚や皮下組織など多くの組織が密接に存在しており、
加齢や外傷をはじめとして、
なんらかの要因によってこれらの組織に癒着や変性が生じると、
組織が固まり、結果的に関節が動かなくなってしまうのです。
一般的に理学療法や作業療法などが、
これらの関節拘縮に対する治療法の一つとして知られていますが、
それらの方法をもってしても改善が得られない場合、
「関節授動術」と呼ばれる手術方法が適応となります。
今回は、「関節授動術」の中でも頻度の高い”膝関節”に着目して、
これらの手術方法や癒着が生じやすい原因などを解説します。
「関節授動術」とは?
「関節授動術」は一体どのような手術方法なんでしょうか!?
「関節授動術」は、
“関節内の癒着を剥離する手術方法”
です。
多くは、関節鏡視下の低侵襲の方法です。
当然ながら手術なのでリスクはありますが、
できるだけ早期に行うことで、より良好な関節可動域が得られると言われています。
膝関節に対する「関節授動術」の実際は?
膝関節拘縮の好発部位
「関節授動術」に至る場合には、それに至る要因があり、
特に膝関節に関しては好発する3つの要素があります。
①膝蓋上嚢の繊維化
膝蓋上嚢は、膝蓋骨のすぐ上方で、大腿四頭筋腱と大腿骨の間に存在します。
この組織は膝関節屈曲に伴う膝蓋骨の長軸移動を円滑にする役割を持ちます。
大腿骨骨幹部骨折や顆上骨折における長期間の外固定で生じやすく、
膝蓋上嚢の繊維化を生じると、70°以上の屈曲は行えないと言われています。
②関節内に生じる要因
膝関節内に存在する組織の癒着によって生じる場合があります。
多くは関節内骨折や十字靭帯損傷に対する手術後の長期固定などで生じます。
③膝蓋骨下方組織の要因
膝蓋下脂肪体や膝蓋腱に繊維化や短縮が生じることで拘縮が生じます。
膝蓋骨の損傷や、膝蓋腱損傷などによって生じます。
→「膝蓋下脂肪体」とは?膝痛みや膝関節可動域制限の原因?リハビリ方法は?
「関節授動術」後のリハビリテーションとは?
「関節授動術」は非常に優れた手術であるものの、
術後の適切なリハビリテーションの実施がその成績をも左右し、
計画的な介入が必要です。
理学療法士、または作業療法士による運動療法がその中心となり、
術中に得られた関節角度を目標に関節可動域を実施します。
手術により剥離された組織も長期間放置すると、
当然ながら再び癒着を引き起こすこともあるので、
その人ごとの拘縮の原因と、実施された手術方法に合わせた介入を早期から行います。
この際には、手術侵襲による炎症などの、
修復過程や疼痛をコントロールすることも関節可動域の獲得には重要となります。
膝関節に対するリハビリテーションはこちら
→「lateral thrust(ラテラルスラスト)」とは?その病態やリハビリでの対策は?
→大腿四頭筋(クアド)セッティングの効果や方法は?
まとめ
今回は、「関節授動術」の中でも頻度の高い”膝関節”に着目して、これらの手術方法や癒着が生じやすい原因などを解説しました。
リハビリテーションなどでも手に負えない関節拘縮が適応となりますが、
長年の拘縮はやはり頑固な繊維の癒着や繊維化が生じています。
出来るだけ早期に行うことが重要です。
膝関節に対するリハビリテーションはこちら
→TKA術後のリハビリテーション「膝関節伸展制限」の原因は?
→人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲制限の因子とは?
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