人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲制限の因子とは?

    
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人工膝関節全置換(以下:TKA)は、

変形性膝関節症に対する標準的な手術療法です。

 

除痛や変形の矯正がなされ、

結果として歩行を始めとした日常生活動作の改善が期待できます。

 

理学療法士などのセラピストは、

膝関節の屈曲可動域の改善が日常生活動作改善の必須課題であり、

苦渋する点でもあります。

 

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現在では、

多くの病院で変形性膝関節症に対して、

TKAが施行されています。

 

 

TKAの目的は、除痛変形の矯正ですが、

術中には、皮膚や筋肉の切開などの侵襲が加わるため、

術後は、疼痛や筋力の低下、関節可動域制限を認めます。

 

 

通常、除痛や変形の矯正が叶うことで、

日常生活動作の改善がなされると思われるのですが、

日常生活では多くの場面で膝関節の屈曲が要求される動作が存在します。

詳しくはこちらを参照ください!
人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?

 

 

よって術後のリハビリテーションを担当する理学療法士などは、

膝関節屈曲可動域の改善が必須課題であり、苦渋する点でもあります。

インプラントの特性や術前の状態を考慮すると、

目標となる角度はおおよそ“120°程度”となります。

 

 

今回は、術後の膝関節の屈曲可動域の改善を阻害する因子について解説します。

 

伸展可動域制限に関する記事はこちら
TKA術後のリハビリテーション「膝関節伸展制限」の原因は?

TKA後の屈曲可動域の制限因子

TKA後の膝関節屈曲可動域を制限する因子は、

単一の要素ではなく、複数の要素が絡み合っている場合があります。

 

また、個々の症例ごとに違いもあるので、

きちんとした評価技術が必要です。

 

変形性膝関節症におけるリハビリテーションの評価項目とは?
変形性膝関節症とは?その診断や分類方法は?

 

 

 

疼痛の問題

TKAの術後は、

膝蓋骨を縦断するような皮膚切開や、筋や筋膜の切開が行われます。

当然ながら侵襲に対して炎症反応が出現し、

腫脹熱感、そして“疼痛”が生じます。

 

疼痛が生じると、

当たり前ですが動かしたくないですし、動かされることに対しての、

防御反応が出現し、後に述べるような筋の問題にも発展することがあります。

 

術式の違いはこちら
人工膝関節全置換術(TKA)における皮切後の侵入方法とは?リハビリへの影響は?

 

 

 

皮膚の問題

TKAによって切開された皮膚は、

術後早期より修復に向かい、徐々に瘢痕形成します。

瘢痕形成した皮膚は、伸張性に乏しく

膝関節屈曲に伴う制限となりえます。

 

特に、膝関節屈曲に際しては、

膝蓋上嚢部から膝蓋靱帯部にかけての皮膚の伸張が必要となります。

 

ただし、TKA術後患者では、

膝蓋骨から膝蓋靱帯部の伸張性が低下するとの報告があるため、

とりわけ重点的な対応が必要です。

 

 

 

腫脹の問題

術後に生じる炎症の一つに“腫脹”があります。

膝蓋骨周囲に出現し、膝関節屈曲を制限します。

(水が満タンに溜まったホースの中を曲げるのが難しいのと同じです。)

 

 

 

筋肉の問題

膝関節は屈曲に伴い、

大腿前面の大腿直筋中間広筋

大腿外側の外側広筋腸脛靱帯が伸張されます。

 

術前から屈曲制限が生じている場合には、

術前を超えた可動域を動かす際にこれらの伸張性の低下が問題となる場合があります。

 

また、腫脹などで圧迫を受けている場合にも、

伸張刺激に対して強い疼痛が生じ、防御性の収縮によって屈曲を抑制します。

 

さらに、TKAでは、膝のアライメントも変化するため(多くは内反膝が矯正される)、

大腿がより内転位となり、外側広筋や腸脛靱帯がより緊張位となりやすい特徴があります。

 

変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
変形性膝関節症の手術に伴うリスクは?感染や血栓に注意!

 

 

 

骨の問題

骨の問題となりうるのは、

特に“膝蓋骨”です。

膝蓋骨は上下のみならず、全可動方向への可動性が必要です。

 

 

 

軟部組織の問題

軟部組織として重要なのは、

膝蓋骨の上方に存在する“膝蓋上嚢”

さらには膝蓋靱帯の内側に存在する“膝蓋下脂肪体”の癒着です。

 

これらは、不可逆的な変化へと発展する場合があり、

術後早期からの改善が必要です。

 

TKAのインプラントの違いはこちら
全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?
TKAのインプラント「BCR型」や「Medial Pivot型」とは?

 

 

 

まとめ

今回は、術後の膝関節の屈曲可動域の改善を阻害する因子について解説しました。

膝関節屈曲角度の改善は、

TKA術後の患者に対しての必須課題です。

これなくして日常生活動作の改善はありません。

個々の症例が抱える制限因子を適切に評価し、治療に結びつける能力が必要となります。

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