大腿骨転子部骨折とは?手術の種類は?骨接合術ってどんな手術?

    
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「大腿骨転子部骨折」は、

大腿骨の中でも近位の転子部と呼ばれる部分の骨折です。

 

大腿骨頸部骨折と並んで高齢者に多い外傷性の骨折です。

 

大腿骨の骨折は、歩行などの日常生活動作能力を左右する重要な骨折であり、

その治療法は【手術療法】が一般的です。

 

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大腿骨転子部骨折は、股関節の付け根である、大腿骨頭のすぐ下「大転子付近」の骨折です。

広義には【大腿骨頸部骨折】とされることもありますが、

狭義には【大腿骨頸部外側骨折】とも呼ばれます。

※大腿骨頸部骨折は、大腿骨頸部内側骨折と呼ばれる。

大腿骨頸部骨折に関する詳しい記事はこちらを参照ください!
大腿骨頸部骨折とは?原因や症状は?治療方針は?
大腿骨頸部骨折の診断や分類方法は?Garden分類とは?

 

 

大腿骨転子部骨折の治療方法は、【手術療法】が一般的です。

関節方や骨膜から近位骨片への血流が保たれやすく、比較的骨癒合が得られやすいです。

しかしながら、大腿骨頸部骨折に比べて疼痛が強く、出血量も多いために、手術療法を選択することが殆どです。

早期荷重を得るためには、手術による強固な固定が必要なのです。

稀に選択される保存療法に関する記事はこちら
大腿骨頸部骨折や転子部骨折の保存療法のポイントは?

 

 

大腿骨転子部に対する手術療法は、

【骨接合術】が用いられます。

骨接合術には、

・CHS(Compression Hip Screw)
・ガンマネイル
・PHN(Proximal Hip Screw)
・エンダー釘

などの種類があります。

そこで今回は、大腿骨転子部骨折の特徴や、手術療法の種類でもある骨接合術について解説します。

大腿骨転子部骨折に合併する小転子骨折とは?リハビリは進めるべき?

大腿骨転子部骨折とは?

大腿骨転子部骨折は、股関節の付け根の付近に位置する「大腿骨転子部」の骨折です。

図で確認してみましょう!

スライド4

大腿骨転子部は、大腿骨頸部よりもさらに遠位に位置しており、外側に出っ張った部位(大転子)と内側に出っ張った部位(小転子)の間に相当します。

 

大腿骨頸部骨折と並び、高齢者に多い骨折で、転倒などによる軽微な外傷によって骨折をきたすことがあります。

 

発生率は大腿骨頸部骨折の2倍とも言われ、高齢者骨折の中でも社会的・医療経済的に重要な骨折と言われています。

 

 

大腿骨転子部骨折と大腿骨頸部骨折の違いは?

大腿骨転子部骨折と大腿骨頸部骨折は、その部位もさることながら幾つかの違いがあります。

 

・大腿骨転子部骨折は、関節包外骨折であり、骨表面の骨膜により、骨癒合に有利とされる。一方、大腿骨頸部骨折は、関節内骨折であり、大腿骨頭への栄養血管が損傷を受け、癒合の遅延や骨壊死をきたしやすい。

 

・大腿骨転子部骨折は、関節包外骨折であり、骨膜などの存在から強い疼痛が生じる。一方、大腿骨頸部骨折は、関節内骨折であり、骨膜が存在しないため疼痛が少ない。

 

・大腿骨転子部骨折は、関節包外骨折であり、出血量が多い。一方、大腿骨頸部骨折は、関節内骨折であり出血量が少ない。

 

まとめると、大腿骨転子部骨折は、関節包外骨折であるという理由から、骨癒合に有利だが、出血量が多く、痛みが強いということです。

 

骨癒合が有利であるため、大腿骨頸部骨折のように人工骨頭置換術ではなく、骨接合術が行われます。

大腿骨頸部骨折の手術療法に関する情報はこちら
大腿骨頸部骨折の手術療法の種類は?人工骨頭置換術とは?
大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容は?期間はどのくらい?

 

 

 

大腿骨転子部骨折の手術療法は?

大腿骨転子部骨折に対して行われる手術療法は、【骨接合術】が一般的です。

受傷後のレントゲンやMRI、CT画像を元に、重症度を判定します。

大腿骨転子部骨折に用いられる重症度分類は【Evansの分類】が有名です。

【Evansの分類】に関する詳しい記事はこちら
大腿骨転子部骨折の診断や分類方法は?Evans分類って何?

 

骨接合術と一概に行っても幾つかの種類があります。

・CHS(Compression Hip Screw)
・ガンマネイル
・PHN(Proximal Hip Screw)
・エンダー釘

などで、それぞれ利点や欠点を有しております。

以下に、その中でも代表的な手術方法を解説します。

 

 

CHS(Compression Hip Screw)

CHS(Compression Hip Screw)とは、我が国で最も使用頻度が高い術式です。

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メリット

・手術侵襲が少なく、比較的安定した骨折の型に適応がある
・lag screwのtelescopingにより骨折部の圧迫による癒合が期待できる
※テレスコーピング・・・荷重によりlag screwがスライディングし、骨折間に圧迫が加わること

デメリット

・lag screwの刺入位置の不良によって骨頭の内反変形やカットアウトを生じる
・骨粗鬆症などを有していると、ブレート端の骨折が起こりうる

大腿骨転子部骨折術後に生じるテレスコーピングやカットアウトとは?

 

 

ガンマネイル

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メリット

・安定型、不安定型の療法に適応がある
・lag screwのtelescopingにより骨折部の圧迫による癒合が期待できる
・髄内に荷重軸があるため固定力が強固である
・手術手技が閉鎖的なため、感染防止に有効である

デメリット

・lag screwの刺入位置の不良によって骨頭の内反変形やカットアウトを生じる
・遠位の横に止めているスクリューによって大腿骨骨幹部骨折のリスクがある

 

CHS法やガンマネイル法の詳しい解説はこちら
腿骨転子部骨折に対する骨接合術「CHS法」や「ガンマネイル法」とは?

 

 

 

まとめ

今回は、大腿骨転子部骨折の特徴や、手術療法の種類でもある骨接合術について解説しました。

大腿骨頸部骨折とは違った手術手技が用いられます。

それだけに、リハビリテーションなどの場面でも、その違いを十分に考慮した運動療法をプランニングしていく必要がありますね。

大腿骨転子部骨折に合併する小転子骨折とは?リハビリは進めるべき?


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