「lateral thrust(ラテラルスラスト)」とは?その病態やリハビリでの対策は?

    
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変形性膝関節症における歩行の特徴の一つに、

「lateral thrust(ラテラルスラスト)」があります。

 

力学的なストレスを助長することで、

さらなる疼痛の悪化や、歩行能力の低下を招きます。

 

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「lateral thrust(ラテラルスラスト)」とは、

歩行の立脚期において、

膝関節が外側へスライドするように動揺する現象です。

 

 

もう少し運動学的に言うと、

初期接地から荷重応答期の全額面で観察が可能で、

脛骨の内反・外旋を伴います。

 

 

「lateral thrust」の出現は、

瞬間的な膝関節の内反(O脚)を助長することで、

さらなる疼痛の悪化歩行自体の安定性を損なう原因にもなります。

 

 

最終的には、膝関節の過度の緩みを引き起こし、

手術の適応となったり、疼痛によって歩行が不能となったりします。

 

 

そこで今回は、「lateral thrust」の病態や原因、リハビリテーションにおける対策などを解説します。

 

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「lateral thrust」の病態とは?

「lateral thrust」は、

初期接地から荷重応答期において、

膝関節が外側へ動揺する現象です。

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この時膝関節には、

(外部)内反モーメントが加わるため、

ただでさえ、内反変形している変形性膝関節症患者の内反膝を助長することになります。

 

実際に、膝関節の内反モーメントが1%増加することで、

変形性膝関節症の進行リスクが6.46倍増加するという報告もあります。

 

詳細な機序は不明であるものの、

このような繰り返される力学的ストレスは、

膝関節内側裂隙に生じる疼痛の悪化や、

関節症の進行に寄与することは確かであります。

 

 

 

「lateral thrust」の原因とは?

「lateral thrust」が生じる要因には、

幾つかの要因が複合的に関与します。

 

 

膝関節アライメントの問題

進行した変形性膝関節症の多くは、

膝関節のアライメントが内反位(O脚)となっています。

FTAでいうと180°以上の場合も少なくありません。

 

このようなアライメントを呈している場合、

足部に対して鉛直方向から荷重をかけたとしても、

重心の作用点と、膝関節との距離が遠くなればなるほど、

(外部)内反モーメントが増加し、「lateral thrust」が生じる要因となります。

 

 

 

筋活動の問題

通常立脚期では、

初期接地後に大内転筋や臀筋群が活動し、

骨盤を立脚側へ引き寄せます。

 

このことにより、

上半身の質量を立脚側に移動させることが可能ですが、

この機能が低下すると、

このような運動が生じることがなく、骨盤は遊脚側に傾きます。

 

この時に膝関節周囲では、大腿の外側にある腸脛靭帯などの受動的要素に依存します。

このような制御の場合、膝関節ではACLやPCLにおける靭帯での安定化機構も機能せず

不安定な状態となるのです。

 

また、腸脛靭帯の筋緊張の増加は、脛骨を外側へ引き込む力となり、

これらの複合的な要素が「lateral thrust」を生じさせるのです。

 

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「lateral thrust」に対するリハビリや改善方法は?

「lateral thrust」の根本的な改善方法は、

歩行立脚期の初期接地から荷重応答期に生じる、

膝関節の(外部)内反モーメントを軽減させることです。

 

「lateral thrust」が習慣的に生じている場合、

膝関節の外側支持機構であるLCLなども緩みが生じている場合が多いです。

 

このような状態の場合、

構造的な弱さを補うための、“サポーター”が有効な場合があります。

膝関節の側方に支柱を有するサポーターなどによって前額面上の安定を補います。

変形性膝関節症にサポーターは効果がある?選び方のコツは?

 

また、脛骨の外側への傾斜を抑制するために、

足底版としてラテラルウェッジなどを処方し、内反モーメントを軽減させることも有効とされています。

 

身体機能の改善としては、

筋活動のバランスの是正として、

特に股関節周囲筋である大内転筋や中臀筋などの側方の安定に寄与する筋の活動性の向上が有効です。

 

また、膝関節が軽度屈曲位(屈曲10°以上)で支持する場合には、

腸頚靭帯が優位に機能するため、より外側へ引かれ、「lateral thrust」が生じやすいのです。

そのため、荷重下における膝関節の伸展活動を高めることも重要と言えます。

 

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まとめ

今回は、「lateral thrust」の病態や原因、リハビリテーションにおける対策などを解説しました。

変形性膝関節症において、

「lateral thrust」への対策は必須課題と言えるでしょう。

もちろん手術などによってアライメントが変化すれば、より治療はしやすいですが、

保存療法においても、身体機能の改善や構造上の不利を補う補装具の使用によって、改善を図ることも可能なのです。

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