骨折によって生じる合併症とは?
20代から60代の男女600人を対象として、
「これまでに骨折をしたことがあるか?」
という質問をしたところ、
約3割が骨折経験がある!
と答えたそうです。
骨折は、ただ痛い、リハビリが大変だけでなく、
その合併症にも注意が必要です。
「骨折」とは、
“骨が自身の強度を超える外力を受けることで、生じる関節変形や破壊を呈した病態”です。
その解剖学的な連続性が絶たれた状態となります。
骨折は、
受傷原因や部位、骨折線の入り方などによって、
様々なタイプに分類されます。
その分類によって、保存療法や手術療法などの治療法の選択がなされるのです。
詳しくはこちら
→骨折とは何か?骨折の種類とは?
骨折の主要な症状は、【疼痛】である!
というのは、誰もが納得することでしょう。
このような骨折によって直接被る被害としては、
疼痛をはじめとして関節変形や歩行障害などの運動器に限定したものである場合が多いです。
骨折には、このような一次的に生じている症状のほかにも、
幾つかの重要な【合併症】が存在しています。
そこで今回は、骨折によって生じる合併症について解説します。
骨折に生じる合併症とは?
骨折に付随して生じる合併症には、
命の危険のあるものから、後遺症として残存するものまで様々です。
代表的な合併症は以下です。
・出血性ショック
・コンパートメント症候群
・血管損傷
・末梢神経損傷
・脂肪塞栓症候群
出血性ショック
出血性ショックとは、骨髄が存在する長官骨や骨盤骨折などの海綿体骨や、
大腿骨が骨折した場合などに大量の内出血をきたした病態です。
大量の出血によって、意識混濁などの症状をきたすとともに、
長い時間ショック状態が続くと、命にかかわる危険があるため、早急な治療の開始が重要です。
適切な止血や輸血などにより体内の血液量を保つ必要があります。
とりわけ骨盤骨折では、出血量が1000ml〜5000mlに達する可能性が高いために注意が必要です。
大腿骨の骨折はこちら
→大腿骨頸部骨折とは?原因や症状は?治療方針は?
→大腿骨転子部骨折とは?手術の種類は?骨接合術ってどんな手術?
コンパートメント症候群
骨折や脱臼などをきっかけとして、
それらの出血から筋膜などに包まれた隔壁内(コンパートメント)の圧が上昇し、
細動脈の血行障害を引き起こします。
これによって、筋や腱の壊死が生じる病態です。
各部位での疼痛や腫脹、圧痛や硬結、運動障害や知覚麻痺などを生じます。
主に下腿の前面で生じやすく、早期の診断や治療が重要といわれます。
血管損傷
骨折に伴う血管(動脈)損傷には、開放性のものや閉鎖性のものとに分類されます。
いわゆる創部からの出血か、内出血かという違いです。
末梢の症状としては、「6Ps」と呼ばれる兆候があり、
・pulseless(脈拍消失)
・pallor(蒼白)
・pain(疼痛)
・paresthesia(知覚障害)
・paralysis(運動障害)
・polkilothermia(冷感)
を早期診断することが重要です。
全身管理を行いながら、全身麻酔下での血管の修復や再建術が行われます。
末梢神経損傷
末梢神経障害では、骨折によって神経に損傷を受けた状態です。
小児の上腕骨顆上骨折での
橈骨・正中・尺骨神経麻痺 上腕骨骨幹部骨折における橈骨神経麻痺が好発します。
末梢神経損傷では、損傷を受けた神経の支配領域の運動麻痺や感覚障害、痺れ、疼痛、発汗異常などが生じることがあります。
脂肪塞栓症候群
脂肪塞栓症候群とは、骨髄の中にある脂肪が骨折を誘因として、
血液中に流れ込み、脳や肺などの全身の細血管に詰まる病態です。
重傷例では、脳梗塞や、肺塞栓症などの重傷な疾患を引き起こすこともあります。
基本的には、塞栓の部位にもよりますが、
・胸痛
・息苦しさ
・呼吸困難
・咳
などの症状が生じます。
治療方法は、対症療法が中心で脂肪の吸収を待つしかありません。
→骨折の治癒!骨癒合にかかる日数とは?
→骨折の治癒過程「リモデリング」とは?
まとめ
今回は、骨折によって生じる合併症について解説しました。
骨折によって生じる一次的な障害よりも、
より重度となるものが多い印象です。
このような症状が出現する可能性があるということを正しく理解し、
場合によっては早期の受診を心がけましょう!
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