脊髄損傷による「起立性低血圧」の原因や対策、リハビリ方法とは?

    
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脊髄損傷とは、

“脊柱の中を走行する脊髄の損傷”です。

 

運動麻痺や感覚障害などはもちろんのこと、

様々な合併症が存在します。

 

その一つとして、

「起立性低血圧」は特に頸髄損傷者が合併しやすい症状です。

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脊髄は、

上肢・体幹・下肢などの運動や感覚を支配する神経束です。

 

脊髄の損傷は、これらの運動や感覚障害はもちろんのこと、

呼吸・循環・排泄機能など様々な障害や後遺症を生じさせます。

脊髄損傷の詳しい記事はこちら
脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?
脊髄損傷における完全麻痺と不全麻痺の判定方法は?

 

 

これらのように、損傷によって直接的に生じる障害以外にも、

幾つかの合併症が知られています。

 

その中でも頸髄損傷者に多い合併症の一つとして、

「起立性低血圧」があります。

その他の合併症はこちらを参照ください!
頸髄損傷に好発する自律神経障害とは?
脊髄損傷の合併症とは?褥瘡や異所性骨化に注意!

 

 

「起立性低血圧」とは、低血圧の一種ですが、

安静臥床から起立した際に急激に血圧が低下することを言います。

脊髄損傷者における起立性低血圧の頻度は高く、急性期のリハビリテーション医療において、

その診断がつく者は74%、さらに立ちくらみや目眩などの症状を合併する者は59%に及ぶ

という報告もあります。

 

 

起立性低血圧は、多くの脊髄損傷者が社会復帰までの道のりの中で克服しなければならない合併症の一つです。

今回は、頸髄損傷者にスポットを当てて、起立性低血圧の原因やリハビリテーションの方法などを解説します。

起立性低血圧の原因は?

頸髄損傷者において、起立性低血圧の正確な原因は明らかではないものの、

幾つかの要因が挙げられていいます。

 

 

交感神経障害

Th5-12レベル由来の内臓神経は腹腔にある臓器の血管運動を支配しています。

Th5以上高位の脊髄損傷者では、これが障害されることによって、

腹腔内臓の静脈系への血液の貯留が生じてしまいます。

このため、起立などの抗重力姿勢によって、

静脈還流が低下し、心拍出量や収縮期血圧の低下を招くのです。

 

 

筋ポンプ作用の低下

通常血液は、起立などを行った際には重力の作用によって下肢へ貯留します。

これらの貯留した血液は、下肢の筋肉が収縮することで、まるで筋肉に押し出されるように還流するのです。

これを筋ポンプ作用と言いますが、

運動麻痺によって筋ポンプ作用の低下した頸髄損傷者は、これらの機能が働かないために、起立時のvenous returnの減少や1回拍出量、心拍出量、血圧の低下を招くのです。

脊髄損傷における主要残存筋と、その機能とは?

 

 

圧受容器反射の低下

Th4以上の脊髄損傷者は、

起立負荷時の圧受容器反射が正常に機能しないことがいわれています。

また、頸髄損傷者においいては、頸動脈洞反射が正常に機能しないことが言われており、

これらの受容器反応の低下が血圧低下を招くとされています。

 

 

 

起立性低血圧のリハビリテーションや対策は?

リハビリテーションにおける起立性低血圧改善のメカニズムとして、

・血管壁受容体の感受性の亢進
・脊髄レベルでの姿勢反射の回復

などが挙げられます。

 

実際には、ベッドのギャッチアップ機能を利用しながら、

徐々に抗重力姿勢をとることで、起立性低血圧に対する代償機能を獲得するとともに、

廃用の要素による圧受容器反射の低下を予防することが挙げられます。

端座位だけでなく、斜面台を用いた起立訓練なども徐々に進めていきます。

 

加えて、腹帯や四肢に対する弾性ストッキングなどの補装具を使用することで、下肢や内臓へ血液が貯留しない対策なども有効とされています。

 

これらの方法を組み合わせて行うことが、起立性低血圧に対しての最適なリハビリテーション方法なのです。

また、リハビリテーションの時間だけでなく、普段の生活の中で少しでも臥床の時間を減らすことができるかということも訓練と同等、いやそれ以上に重要なことなのです。

 

脊髄損傷のリハビリテーションに関する記事はこちら
脊髄損傷のリハビリテーション「関節可動域訓練」の目的や方法は?
脊髄損傷のリハビリテーション「プッシュアップ」に必要な筋とその機能とは?

 

 

 

まとめ

今回は、頸髄損傷者にスポットを当てて、起立性低血圧の原因やリハビリテーションの方法などを解説しました。

起立性低血圧があるから起きれない、

起きれないからさらに起立性低血圧が進行するという悪循環を断ち切る必要があります。

リハビリテーションの経過の中で安全に離床できる方法を見つけたのであれば、積極的な離床が必要なのは言うまでもありません。


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