脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力とは?
脊髄は、
脊椎の中央の脊柱管を走行する神経の束です。
脊髄損傷は、
この脊髄の損傷によって生じ、
損傷レベルに応じて様々な後遺症が生じます。
脊髄損傷とは、
“脊椎の中を走行する脊髄が何らかの原因で損傷した病態”
です。
受傷原因には、
交通事故や転倒・転落、スポーツ外傷など様々な要因がありますが、
いずれも強力な外力が加わることによって受傷します。
しかしながら、中には、
脊髄の腫瘍や椎間板ヘルニアなどの内的な要因が関与することもあります。
受傷機転の詳しい記事はこちら
→脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?
脊髄損傷には、損傷の部位や程度によって、
「完全麻痺」もしくは「不全麻痺」に分類されます。
「完全麻痺」とは、損傷レベル以下の機能の全廃、
「不全麻痺」とは、損傷レベル以下の機能の一部が残存
している状態です。
いずれの場合においても、治療者にとってみれば、
残存能力をいち早く、そして的確に評価をする必要があります。
例えば、筋肉においては、残存髄節ごとに残存筋が決まっています。
一目で分かる髄節レベルごとの主要残存筋
→脊髄損傷における主要残存筋と、その機能とは?
残存筋によって、獲得できる機能や能力はある程度決まってくるのです。
そこで今回は、脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力についてまとめます。
気になる脊髄損傷の再生医療はこちら
→脊髄損傷の再生医療とは?
Contents
損傷レベルごとの残存機能や能力とは?
脊髄損傷は、
損傷レベルごとにある程度の残存機能が決まっています。
例えば、
頸髄からの分枝によって支配を受けるのは、上肢筋であり、
腰髄からの分枝によって支配を受けるのは、下肢筋であるように、
筋においては、損傷レベルから残存筋の特定が可能です。
一目で分かる髄節レベルごとの主要残存筋
→脊髄損傷における主要残存筋と、その機能とは?
さらに言うならば、
残存する筋肉が分かれば、ある程度その人が行える能力の予想がつくため、
機能的な予後までをも判断することが可能です。
以下に、残存髄節ごと残存機能や能力を解説します。
C4
・自力での身の回りの動作は困難
・横隔膜(C3-5)の不全から呼吸補助器が必要な場合も…
・車椅子はリクライニングが必要で、操作は呼気または顎
・ティルトテーブル等で立位訓練開始
C5
・自力での身の回りの動作は困難
・電動車椅子と標準型車椅子の併用
・スプリングバランサーやBFO+外力駆動 flexor hinge splintの使用
C6
・食事はこのレベルから外力駆動を必要としない
・車椅子駆動はハンドリムに滑り止めで可能
・移乗動作はトランスファーボードで自立も可能
・座位におけるプッシュアップ動作が可能
・寝返りや起き上がり、座位保持が自力で可能な場合も…
C7
・車椅子は自立レベル
・このレベルより寝返りや起き上がり、座位保持が自力で可能
・LLB+pelvic bandを用いた平行棒内介助歩行が開始可能
C8
・身の回りの動作がほぼ自力で可能
・箸を使用した食事が可能
・手指でボタン脱着可能
・指のつまみ動作は不完全だが、実用的握力となる
・手動装置付き、または自動クラッチ式で車の運転が可能
TH1
・上肢の巧緻動作は完全に可能
TH6
・ロフストランドクラッチを使用して大振り歩行
TH12
・ロフストランドクラッチでの実用歩行
(Th10が実用歩行の上限)
・標準型の車椅子
L2
・長下肢装具を用いて社会生活上実用レベルはこのレベルから
L4
・短下肢装具の適応(L3が使用の上限)
・短下肢装具の実用レベルの上限
L5
・短下肢装具で歩行自立
(十分な足関節底屈あれば必ずしも装具は必要ない)
S1
・ハンドコントロールの必要ない車の運転が可能
・下肢装具は必要ないが、足趾の変形矯正のための靴型装具が必要な場合も…
S2
・下肢の機能は完全
脊髄損傷のリハビリテーション評価はこちら
→脊髄損傷におけるリハビリテーションに必要な評価項目とは?ASIAって?
まとめ
今回は、脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力についてまとめました。
必ずしも、この通りになるわけではありません。
稀に、何髄節かの能力を飛び越えてしまう人凄い能力を持った脊髄損傷の人に出会うこともあります。
一つの目安として参考にしてください!
スポンサーリンク