人工膝関節置換術(TKA)後って膝が重い?人工関節の重さってどれくらい?
人工膝関節置換術は、
変形性膝関節症に対する標準的な手術療法です。
人工膝関節置換術後によく聞かれる言葉に、
「膝が重たい」
があります。
なぜ重いのでしょうか!?
そして実際の重さは…?
変形性膝関節症(以下:膝OA)は、
潜在患者を含めると、本邦において約3,000人にも及ぶと言われる退行性の関節疾患です。
変形性膝関節症の病態はこちら
→変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
疼痛を主体とし、歩行障害をきたすこの膝OAに対する最も標準的な手術方法の一つに、
人工膝関節全置換術(以下:TKA)があります。
関節軟骨がすり減り変性した部分を人工物に置換する手術です。
いわゆる「人工関節」と言われるものですね。
TKAに関する詳しい記事はこちら
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
TKA後には、通常リハビリテーションを実施し、
関節可動域や筋力の回復、歩行を中心とした日常生活動作の回復を目指します。
その過程において、よく耳にするのが、
「膝が重たいです」という患者の訴えです。
確かに術後の炎症による腫脹によって重量が増えているため重く感じるはずです。
その他にも膝が重たく感じる要因にはどのようなものがあるのでしょうか!?
そして、実際の人工関節の重さってどれくらいなんでしょうか!?
手術後に膝が重たいと感じる要因は?
TKA後に、
「膝関節が重たい」と感じるにはいくつかの原因があり、
これらが単独、もしくは幾つかが重複して生じると考えられます。
膝関節の腫脹による重さ
手術による皮切によって、
膝関節周囲には術後早期より炎症症状が出現します。
この炎症症状では、
大きな腫脹が生じます。(それはそれは膝が大きく腫れ上がります…)
この腫脹による水分の蓄積によって、
実際に足の重量が増加し、膝を持ち上げたり伸ばしたりする際に重さを感じるのです。
筋力が不十分によることの重さ
手術による炎症症状は、
上記のように疼痛や腫脹を招きます。
疼痛が生じると、
当然のことながら筋肉を強く働かせることを嫌います。
また、膝周りに腫脹があると、
反射性の筋出力抑制が生じ、思うように力が出せません。
さらに、人工関節置換による手術によって、
関節のアライメントが整うことは、
筋の長さが変化します。
これらの複数の要因によって、
自分では力を入れているつもりなのに、
実際には力が入っていないという状態が生じるのです。
このような意図と実際の運動とのギャップが、
膝を重たいと感じさせる一つの要因となっていると考えられます。
実際の人工関節の重さは?
上記のような機能的な要因によって、
手術後の膝関節が重たく感じることがあります。
では、実際に人工関節はどのくらいの重さがあるのでしょうか!?
人工関節は、
金属の部分とポリエチレンという合成樹脂との組み合わせでできています。
また、人によって機種の違いやサイズの違いがあるため、
一概には言えませんが、
おおよそ200〜400g程度が標準的です。
ちなみに人工の股関節はそれより重く500g前後になります。
→全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?
→TKAのインプラント「BCR型」や「Medial Pivot型」とは?
まとめ
今回は、TKA手術後に、膝が重たく感じる要因について解説しました。
そして、実際の人工関節の重さについても触れました。
「人工関節が重いんだ」
というのは全く事実に反しており、
実際は腫脹による足の重さと、不十分な筋出力の低下が要因となっていることが分かりましたね。
TKAのリハビリに関する記事はこちら
→人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲制限の因子とは?
→TKA術後のリハビリテーション「膝関節伸展制限」の原因は?
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