「バランス」とは?その評価方法とは?
「あの人はバランスが悪い…」
「バランスを良くして転倒を予防しよう」
などなど…
“バランス”という言葉は、
リハビリテーションに関わる職種のみならず、
一般の方々にも広く使われる言葉です。
しかしながら、“バランス”って一体何なのか説明できるでしょうか!?
「バランス」とは、
姿勢や動作において、安定性の観点から見た概念であり、
“姿勢や動作中の姿勢を保つ能力や、不安定な姿勢から姿勢を立て直す能力”
を意味しています。
「バランスが良い」という言葉は、
転倒したりせず姿勢を保持したり、つまずいて転びそうになっても、
転ばずに姿勢を立て直すことなどが該当します。
「バランス」それ自体には、実態がなく概念であるが、
バランスは幾つかの要素がシステムとして働くことで機能します。
その構成要素とは、
・姿勢調整に働く神経機構
・感覚機能(視覚・前庭・体性感覚)
・筋骨格機能
・認知機能
・呼吸
・循環
などが関与します。
では、一体このような実態のない「バランス」の良し悪しを、
どのように評価しているのでしょうか?
Contents
バランスの評価方法とは?
バランスを評価する方法には、
大きく分けて
・機器などを用いて行う方法
・パフォーマンスを評価する方法
に大別されます。
前者は、重心動揺計などを用いて行う方法で、
研究的な方法とも言えます。
重心動揺とはいうものの、
実際には足圧を算出し、その動揺量や動揺の質を評価します。
ただし、評価指標の持つ意味合いなどの解釈に関して、
一定したコンセンサスが得られていないという欠点もあります。
詳しくはこちら
→「重心動揺計」とは?測定の目的や、測定項目の意味とは?
後者はリハビリテーションの成果指標として臨床場面で評価されることが多いです。
それらに関して、方法や基準値などを詳しく解説します。
①Timed Up & Go test(TUG)
病院のみならず、老人施設などでも高齢者のバランス機能評価として多用されている方法です。
その方法は、
対象者を椅子に腰掛けさせます。
椅子から立ち上がり、
3m先に用意したポイントで方向転換させて再び座るまでの時間を計測します。
簡便であり、
を目安としている。
②functional reach test(FRT)
被験者は立位を取り、
一側の上肢を肩の高さまで前方挙上します。
挙上した上肢を可能な限り水平のまま前方に伸ばし、
その移動距離を測定します。
一般に、5回測定したうちの後半3回の測定値の平均値を採用します。
5分以内に簡便に実施できる方法です。
足の幅や左右のどちらで行うかで測定値に違いが出るため注意が必要です。
41歳〜69歳の一般集団の平均値は男性38±6cm、女性 35±6cmとされており、
15cm以下は特に転倒リスクが高いと言われています。
③片脚立位保持時間
文字どおり片脚で立つ時間を計測します。
省スペースで機器を使用しないため、最も簡便なテスト方法です。
5秒が転倒リスクのカットオフ値となります。
④マン検査(継ぎ足検査)
マン検査では、
被験者を一側の踵と他側のつま先を接し、
一直線状にして直立させます。(綱渡りのような足の位置)
その時間を計測しますが、
開眼や閉眼の差など、視覚条件の有無による違いなども評価すること(ロンベルグ検査)が可能です。
20秒程度の立位保持や、閉眼閉脚で30秒間の立位保持が安定した屋内歩行の目安になります。
⑤Berg balance scale(BBS)
Berg balance scaleとは、
バランスに関する14の検査項目からなり、
各0〜4点の5段階で評定し、合計点数を指標とします。
座位や立位の保持や、起立・着座、リーチ動作や、
床からの物拾いや、段差昇降など、
総合的なバランス評価と言えます。
15分程度の測定時間が必要となります。
45点が転倒のスクリーニングの基準値や屋内歩行自立の目安になると言われています。
⑥four square step test
T字の杖を十字になるように並べ、
左手前の区画に位置します。
前→右→後→前→左→後の順にステップをし、
その時間を測定します。
複数回の転倒傾向のカットオフを15秒としています。
まとめ
今回は、「バランス」について言及に、その評価方法を解説しました。
注意すべきは、カットオフ値や基準値より良いから転倒しないわけではないということです。
転倒リスクが低いことや、予後予測に有効なのは確かですが、
数値のみならず、その動作パターンなどから、個々の特性などを分析した上で、
バランスの良し悪しを吟味する必要があります。
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