変形性股関節症におけるリハビリテーションの評価項目は?

    
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変形性股関節症は、関節軟骨の変性に伴い、骨の変形や荷重時の疼痛を主症状とする骨関節系の疾患です。

保存療法、手術療法に限らず、リハビリテーションの適応となります。

日常生活動作能力の回復を目指す上で、適切な機能障害の評価は非常に重要となります。

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変形性股関節症は、

“関節軟骨の変性を主体として、関節の変形や荷重時の疼痛によって、日常生活活動能力の低下を来す骨関節系の退行性疾患”

です。

変形性股関節症に関する詳しい記事はこちらを参照ください!
変形性股関節症って治るの?原因や症状、治療方法とは?

 

変形性股関節症の治療方法は、

【保存療法】【手術療法】に大別されます。

いずれの場合にもリハビリテーションの適応となり、多くは理学療法士によって、運動療法や物理療法、日常生活動作指導などが行われます。

 

歩行を中心とした日常生活能力の獲得や回復には、適切な機能評価が必須となり、効果的な治療立案がなされなければなりません。

そこで今回は、変形性股関節症におけるリハビリテーションの評価項目について解説します。

※すべての項目を網羅するわけではないですが、これだけは評価を怠らないでもらいたい評価を記載します。医療従事者や、それらを目指す学生の参考になれば幸いです。

変形性股関節症のリハビリテーションに関する記事はこちらを参照ください!
変形性股関節症や人工股関節全置換術後のリハビリテーションとは?

基本情報

患者様の基本情報は、どの疾患にしても必ず網羅しなければならない項目です。

・年齢
・性別
・現病歴
・主訴やNEED、HOPE
・既往歴や合併症
・生活歴
・運動歴

このような項目は、患者様がどのような人間なのかを捉える上で非常に有用であるとともに、この疾患に至るまでの原因までもが見えてくることもあります。

 

また、医学的な所見として

・病期分類
・レントゲン画像(CT、MRIも含めて)によってSharp角、CE角、AHIなど

病態を解釈する上で必須の情報となります。

 

 

疼痛

疼痛の評価は、問診などによって詳しく評価を行います。

安静時や運動時、圧迫時や夜間時などの状況による変化と、

運動の中でもどのような動きをした際に、どういった痛みがあるかなどを詳しく評価することで、

・物理的
・化学的
・心理的

どのような痛みなのかも評価が可能です。

疼痛の評価は一般的に、

【VAS:Visual Analog Scale】
【WOMAC:Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index 】

などが用いられます。

 

 

関節可動域

当然のことながら股関節における関節可動域を評価します。

骨による変形・制限だけでなく、同時に生じている筋肉や軟部組織の短縮まで詳細に評価を行いましょう。

また、隣接関節である膝関節や、体幹(特に腰椎)の可動性も確認する必要があります。

重心の位置に近い股関節での関節可動域制限は、他の部位での代償を伴うことが多く、過可動性を有する部位などを認めることがあります。

【Hip-Spine Syndrome】に代表されるように股関節と脊柱の関係性が示唆されます。

 

 

筋力

筋力は一般的にMMT(徒手筋力検査)によって評価します。

不動や疼痛による回避などによって、筋力低下だけでなく筋萎縮などが生じているため見逃さずに評価を行いましょう。

また、股関節の構造的な変化は、筋の張力の低下を招き、結果として筋出力の低下につながるといった因果関係を考慮に入れる必要があります。

だからこそ、医学的情報としてのレントゲン画像などは必須の評価となるのです。

 

 

形態計測

形態計測の中には、

・周径
・下肢長

などが含まれます。

 

周径は、特に大腿周径や下腿周径などを測定することで、筋の萎縮の程度を評価することが可能です。

ただし、股関節周囲の臀筋群などの評価は、周径では評価しきれないという面もあります。

 

下肢長では、棘課長(SMD)や転子果長(TMD)を評価します。

特に股関節疾患であれば、SMDにおいて左右差を認めることが多いです。

 

いずれの評価も術前後での変化が大きいので、必ず評価を行う必要があります。

 

 

歩行動作能力

歩行の評価には、幾つかの客観的で量的な評価と、動作分析などの評価者による質的な評価が含まれます。

 

まずは、客観的な評価として、

・10m歩行速度
・TUG(Timed Up & Go Test)

などの量的な評価を行います。
これらは、標準化された評価尺度であり、年齢や性別ごとの適正値との比較が可能です。

 

次に評価者による質的な評価として

・歩行分析

があります。

これは、歩行周期を通してどのような特徴があり、どのような問題点があるのかを捉えるために非常に重要です。

変形性股関節症で生じやすい歩行の特徴としては、

【トレンデレンブルグ歩行】
【デュシャンヌ歩行】

があります。

これらの歩行の特徴に関してはこちらの記事を参照して下さい!
変形性股関節症や人工股関節全置換術後のリハビリテーションとは?

 

 

日常生活動作能力

歩行などの移動動作を中心として動作障害をきたすことが多いですが、それだけではありません。

例えば、股関節の関節可動域制限による【更衣動作障害】や【清拭動作障害】をきたすこともあります。

そのような能力障害を捉えるための評価法として一般的に、

・FIM(Functional Independence Measure)
・BI(Barthel index)

などがあります。

 

人工股関節全置換術後は脱臼への動作指導が重要です。
人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法

 

 

まとめ

今回は、変形性股関節症におけるリハビリテーションの評価項目について解説しました。

様々な評価項目との関係性を結びつけ、患者様が陥っている病態を適切に捉えることこそが、最適な治療に唾がるのです。

以上、評価の参考になれば幸いです。

変形性膝関節症におけるリハビリテーション評価はこちら
変形性膝関節症におけるリハビリテーションの評価項目とは?


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