変形性股関節症や人工股関節全置換術後のリハビリテーションとは?

    
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変形性股関節症は、軟骨の磨耗により、骨の変形や関節可動域制限、荷重時の疼痛などを症状とする退行性の骨関節系疾患です。

様々な治療方法がありますが、一般に

・保存療法
・手術療法

に大別されます。

いずれの治療を選択したとしても重要なのは、リハビリテーションです!

 

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変形性股関節症は、

“関節軟骨の磨耗により、関節の変形をきたし、関節の可動域制限や疼痛などから日常生活動作までもが障害される慢性で進行性の疾患”

です。

変形性股関節症に関する詳しい記事はこちらを参照ください!
変形性股関節症って治るの?原因や症状、治療方法とは?

 

 

治療方法に関して、大きく大別すると、

・保存療法
・手術療法

に分類できます。

 

保存療法とは、痛みのコントロールなどの投薬や、装具やサポーター療法、日常生活動作指導、運動療法や物理療法を手段とするリハビリテーションなどがあります。

一方で、手術療法は「人工股関節全置換術」が有名であり、構造自体の改変を伴う症状の消失を目指します。

変形性股関節症の手術療法はこちらを参照ください!
変形性股関節症の手術療法とは?どんな種類や方法がある?
人工股関節置換術のリスクや合併症は?脱臼や血栓に注意!

 

 

いずれの治療法においても重要となるのは、リハビリテーションです。

運動療法だけでなく、物理療法や生活動作指導を含むリハビリテーションは、症状の進行を防止するだけでなく、術後の機能回復にも重要な役割を果たします。

 

 

そこで今回は、変形性股関節症または人工股関節全置換術後のリハビリテーションについて、一体どんなことをやるのかについて解説します。

変形性股関節症のリハビリテーションに関する記事はこちらもどうぞ!
変形性股関節症におけるリハビリテーションの評価項目は?

関節可動域訓練

関節可動域訓練とは、文字通り関節の可動域を向上させるための訓練です。

保存療法・手術療法ともに施行されますが、

長年の骨の変形に伴った筋肉の短縮は一筋縄では改善は難しいです。

特に保存療法では、骨の変形を残したままであるので、劇的な改善は難しいと言えます。

 

反対に手術療法では、骨の変形が矯正されているため骨自体での制限は少なくなります。

ただし、前述のように筋肉や軟部組織の短縮が強い場合は、ストレッチなどの手技を施しながら術後早期より関節可動域改善に取り組みます。

 

椅子からの立ち座り、階段昇降、歩行などを加味すると、

最低でも屈曲は90°以上、伸展は0°以上の獲得を目指したいところです。

 

 

筋力増強訓練

長年にわたる疼痛による荷重不足不動などから、

股関節周囲筋は筋力低下または筋萎縮などを呈している場合が多いです。

 

手術後に関しては、大腿筋膜張筋や深層外旋6筋などの筋の切開や、術創部周囲の腫脹、痛みなどから極端に筋の出力が低下している場合があります。

まずは、自分の足を空間に持ち上げるだけの筋力の回復を目指します。

 

代表的な筋力増強訓練方法として、下肢伸展挙上(SLR)が挙げられます。

術後早期より、自主訓練としても実施可能です。

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SLRは、股関節周囲筋の中でも屈筋群である腸腰筋や大腿直筋の筋力増強訓練です。

加えて、筋萎縮の程度が強いと言われ、歩行にも重要な役割を担う大臀筋や中臀筋などの筋力増強も重要です。

 

 

立位訓練

立位などの荷重時には疼痛などを主要因として、荷重を回避する傾向を認めます。

保存療法であると、無理な荷重は疼痛を招く恐れがありますが、可能な範囲で体幹の代償などを最小限にした荷重を目指すことが望ましいです。

 

人工股関節全置換術や寛骨臼回転骨切り術などの手術後に関しては、早期は荷重制限が課せられる場合が多いです。(病院や医師の方針により)

早期からの過度な荷重は、骨への負担も大きいため、このようなプロトコールが用いられるのです。

 

1週間ごとに体重の1/3→1/2→2/3→全荷重といったように体重計などで荷重量を確認しながら徐々に荷重量を増加していきます。

骨への負荷を段階的に与えながら、徐々に荷重の感覚を掴んでいくのです。

 

 

歩行訓練

歩行訓練は、単純に量をこなすというものではありません。

変形性股関節症のように、股関節周囲筋の筋力低下をきたす場合、以下のような異常歩行を呈すことがあります。

 

【トレンデレンブルグ歩行】

トレンデレンブルグ歩行は、患側の立脚期に反対側の骨盤が下制する現象です。

主に外転筋などの筋力低下が原因とされています。

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【デュシャンヌ歩行】

デュシャンヌ歩行とは、股関節外転筋力低下による、トレンデレンブルグ歩行のような骨盤の下制を予測的に防ぐために、患側の立脚で反対側へ体幹を倒す現象です。

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これらの機能低下や代償動作を抑制するために、

介助歩行による筋収縮のタイミングを指導したり、そのような歩行の中での筋の活動を促通します。

ただし、歩行を行っていれば改善するというわけでもなく、筋力の回復や、足部や体幹の可動性などとの関連も重要となります。

 

 

日常生活動作訓練・指導

日常生活の中では、椅子に座るだけでなく、床へ座ったり、段差をまたいだり、様々な動作が要求されます。

特に人工股関節全置換術などの術後は、【脱臼】というリスクが伴います。

THA後の脱臼に関する詳しい記事はこちらを参照ください!
人工股関節全置換術後の脱臼の原因や時期は?
人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法

 

そのため、動作方法の指導や、場合によっては福祉用具や住宅改修のアドバイスをもらったりするのです。

 

 

 

まとめ

今回は、変形性股関節症または人工股関節全置換術後のリハビリテーションについて解説しました。

特に術後のリハビリテーションは今後の日常生活動作能力を左右するほどに重要なことです。

専門家のアドバイスや指導のもと、適切な訓練を進めていきましょう。


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