全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?

    
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全人工膝関節置換術(TKA)は変形性膝関節症に対して行われる代表的な手術療法です。

除痛を主要な効果としながらも、

膝関節可動域の獲得は日常生活能力を左右する重要な要素です。

 

そんなTKAも、インプラント(人工の置換物)に幾つかの種類があることをご存知でしょうか!?

 
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全人工膝関節置換術(TKA)では、磨り減ってしまった軟骨に対して、骨きりを行い、関節自体を人工物に入れ替える手術です。

TKAに関する詳しい記事はこちらを参照ください!
変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
変形性膝関節症の手術に伴うリスクは?感染や血栓に注意!

 

 

術後のリハビリテーションにおいて、歩行の獲得はもちろんのこと、起立・着座、階段を上ることなどに必要な関節可動域を確保することも重要な役割です。

「ただ、ただ曲げる練習をすれば良い!」

…わけではなく、TKAのインプラントにも幾つか種類があり、それぞれに特性があるのです。

その種類には大きく分けて、

・PS型(半制御型)
・CR型(非制御型)
・CS型(制御型)

があります。

 

 

また、最近では、BCRタイプなんていう最新のインプラントも使われているようです。

なお、これらは重症度や年齢、活動度や靭帯組織の残存度などを考慮の上、決定されます。

そこで今回は、全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類について解説します。

変形性膝関節に関する詳しい記事はこちらを参照ください!
変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
変形性膝関節症|ヒアルロン酸注射って効果があるの?
人工膝関節全置換術(TKA)における靭帯温存のメリットは?

PS型(半制御型)

PS型は、Posterior Stabirizedの略で後方を人工物によって安定化させています。

PS型では、本来の膝関節に存在するPCL(後十字靭帯)を切除してしまいます。
そのため、膝関節には不安定性が生じてしまうのですが、

「Post & Cam」と呼ばれる独自の構造で制御するのです。

 

Post & Camは、

大腿骨コンポーネ ントの中央に作製された溝(cam)と、
サーフェスの上に作製された突起(post)が入り込んで、

膝の屈伸時に脛骨が過剰な後方移動を起こさないようにする機構のことです。

 

これによって、PCLの役割がなされ膝が安定するのです。

スライド4

 

重症度が高く、すでに後十字靭帯が変性してしまっている型などが適応になります。

 

デメリットとしては、ポストの磨耗や破損が知られていますが、手術手技への依存も少なく、関節可動域も比較的安定して得られやすいと報告されています。

ただし、ポストの破損などの可能性から140°以上の屈曲は禁忌で、おおよそ120°程度が目安となります。

TKA後の日常生活に関する疑問はこちら
人工膝関節全置換術(TKA)|正座や膝立ち、走る事は出来る?
杖の種類や特徴|適応や杖の選び方
変形性膝関節症にサポーターは効果がある?選び方のコツは?

 

 

 

CR型(非制御型)

PS型とは対照的に、CR型ではPCLを残存させます。

後方への安定性を本来の働きであるPCLによって担うのです。

 

CR型の利点として、より生体の動きに近い運動が可能で、回旋などへの対応や、PCL残存による固有受容器の存在などの点で有利な部分も多いのです。

ただし、PCLが適切に機能する症例に限り適応となります。

 

関節可動域訓練などを行う際には、本来の膝関節の運動である

「ロールバック機構」
「スクリューホームムーブメント機構」

などをきちんと理解して行う必要がありますね。

最近では、正座が行えるタイプのものも存在するようです。

TKAのリハビリテーションに関する詳しい記事はこちらを参照ください!
【変形性膝関節症】TKA術後のリハビリテーションって何をするの?
人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?

 

 

 

CS型(制御型)

CS型は、PS型と同じようにPCLを切除します。

サーフェスのくぼみを深くし、前後のエッジを高くすることで前後の不安定性に制動をかけます。

スライド4

骨自体を大きく削ることも特徴の一つです。

CS型自体が蝶番型のため、回旋運動は不可能なのが最大の欠点といえるでしょう。

 

TKAよりも低侵襲で行える手術はこちら
UKAってどんな手術?TKAとは違うの?そのメリットは?

 

 

 

まとめ

今回は、全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類について解説しました。

おおよそですが、

PS型が60%
CR型が30%
CS型が10%

程度のシェアとなっています。

 

また、最新のインプラントでは、BCRタイプというPCLだけでなくACL(前十字靭帯)までもが温存できる手技なども広まっています。

理学療法士などの専門家はもちろんのこと、患者自身も自分にどんな機械が入っているのか、興味を持って見てはいかがでしょうか。

 

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