人工膝関節全置換術(TKA)における靭帯温存のメリットは?

    
Pocket

スライド39

 

人工膝関節全置換術(以下:TKA)は、

本邦において、年間8万件以上の手術療法が行われています。

 

手術手技やインプラントの性能の向上によって、

安定した成績を収めることが可能となっています。

 

その中でも、TKA施行者の歩行能力を左右するものの一つ

“靭帯の温存”の有無が挙げられます。

 

スポンサーリンク

 

「TKA」は、

主に“変形性膝関節症”に対して用いられる手術手技です。

本邦でも、年間8万件以上の実施が報告されており、

日々、手術手技やインプラントの性能向上によって、

予後も安定したものになっています。

 

 

TKAの最大の目的は、

“除痛”にありますが、

患者は当然ながら、歩行などの能力向上を期待します。

事実、除痛によってそれらの改善がなされています。

 

 

ここで、インプラントには様々な種類があるのをご存知ですか!?

幾つかのタイプの違いは、

「膝関節周囲の“靭帯を温存”するか否か」といった違いがあり、

実はこれによっても歩行能力の良し悪しが左右されることがあります。

 

そこで今回は、TKAにおける靭帯温存のメリットについて解説します。

 

【変形性膝関節症】はこちら
変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?

TKAにおけるインプラントの種類と、靭帯温存の有無は?

TKAにおいて一般に用いられているインプラントは、

代表的なものとして、

・PSタイプ
・CRタイプ

に大別されます。

 

さらに、最近では、

・BCRタイプ

といった最新のインプラントも登場しています。

 

 

【PSタイプ】

PSタイプは、Post & Camと呼ばれる独自の構造を有しています。

※Post & Cam機構:大腿骨コンポーネ ントの中央に作製された溝(cam)と、サーフェスの上に作製された突起(post)が入り込んで、膝の屈伸時に脛骨が過剰な後方移動を起こさないようにする機構

 

このように、人工物によって膝関節の安定をサポートする機能を有しているため、

基本的に、前十字靭帯(ACL)後十字靭帯(PCL)を切除します。

 

 

【CRタイプ】

CRタイプは、PSタイプとは対照的に、

後方の安定性を本来の働きであるPCLが担います。

そのため、PCLを温存する手術手技となります。

 

 

【BCRタイプ】

BCRタイプは、

ACLとPCLのいずれも温存するタイプです。

やや拘束性が強いといった問題もあります。

 

 

PSタイプ・CRタイプについての詳しい記事はこちら
全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?

BCRタイプについての詳しい記事はこちら
TKAのインプラント「BCR型」や「Medial Pivot型」とは?

 

 

 

靭帯温存のメリットとは?

上記のように、

インプラントの種類によって靭帯の温存の有無が異なります。

このような靭帯の温存は、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

大きく分けて、3つのメリットを解説します。

 

 

生理的運動に近い

靭帯が温存されるメリットの一つとして、

本来の生理的運動に近い、動きが可能であることが挙げられます。

 

特に後十字靭帯の温存は、

膝関節屈曲時のロールバックを誘導します。

 

このような特性から、患者の運動時の違和感も少ないと言われています。

 

 

メカノレセプターが温存される

メカノレセプターとは、

膝関節の靭帯の中に存在する固有受容器です。

 

どのような機能を有すかというと、

膝がどのような位置にあって、どのように動いているかを感じ取ることです。

 

よって靭帯の温存によるメカノレセプターの存在は、

膝の運動のみならず、身体の動揺などを抑制させることにも寄与すると言われています。

 

 

Mid Flexion Instabilityが生じにくい

mid flexion instabilityとは、

“膝関節を軽度屈曲させた時の不安定性”です。

 

事実、ACLとPCLの両者を切除するPSタイプなどでは、

歩行時の膝関節軽度屈曲において、

インプラント同士の当たりで「コツっ」と音がしたり、

大腿骨と脛骨が引き離されるような感覚が存在するようです。

 

反対に、ACLとPCLの両者を温存するXP対応では、

このような不安定性は感じることが少ないと言われています。

 

 

 

まとめ

今回は、TKAにおける靭帯温存のメリットについて解説しました。

靭帯温存は、歩行能力を左右する幾つかのメリットが存在しています。

 

このようなメリットから考えると、XPタイプが優れているように思えます。

(ただし、このタイプは比較的新しいもので、まだ広く普及はしていません。)

よって、まだその優劣が分からないのが現状です。

 

実際には、インプラントの選択が行われる際に、年齢や重症度、生活状況などの様々な要因から決定されるのです。

靭帯温存のメリットのみを優先するのではなく、その人ごとにあったインプラントが選択されるのです。

 

TKAに関するリハビリテーションはこちら
【変形性膝関節症】TKA術後のリハビリテーションって何をするの?
変形性膝関節症におけるリハビリテーションの評価項目とは?


スポンサーリンク
Pocket