「トレンデレンブルグ歩行」と「デュシャンヌ歩行」とは?その原因は?
筋力低下や疼痛、関節可動域制限など、
様々な要因によって通常の歩行が行えないことがあります。
そのような場合には、
かばうようにして歩いたり、足をひきづったりと
外から見ても分かるような異常を認めます。
このような歩行の状態を「跛行(はこう)」と言います。
「跛行(はこう)」とは、
“外傷、奇形、その他の疾患により正常な歩行ができない状態”
と定義されています。
もう少し詳しく踏み込むと、
跛行の原因には、疼痛や筋力低下、関節可動域制限、さらには不安など…
これらによって、荷重の際に身体を支持することが出来ない、
または、足を降り出す際に通常の振り出しが行えない場合などに出現します。
そんな跛行ですが、
【変形性股関節症】や【大腿骨骨折】の術後など、
股関節周囲の機能低下を生じた際には、
代表的な二つの跛行が観察されることがあります。
それは、
“トレンデレンブルグ歩行”と
“デュシャンヌ歩行”です。
今回は、”トレンデレンブルグ歩行”と”デュシャンヌ歩行”のそれぞれの現象や特徴、その原因などを解説します。
【変形性股関節症】
→変形性股関節症って治るの?原因や症状、治療方法とは?
→変形性股関節症や人工股関節全置換術後のリハビリテーションとは?
【大腿骨骨折】
→大腿骨頸部骨折とは?原因や症状は?治療方針は?
→大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容は?期間はどのくらい?
トレンデレンブルグ歩行とは?その原因は?
トレンデレンブルグ歩行とは、
“歩行の立脚期において、骨盤を正中位に保てず、反対側の骨盤が下制する現象”
とされています。
通常歩行において、
立脚期には荷重側の“中臀筋”が作用し、骨盤を水平に保つ働きをします。
中臀筋は、遊脚後期から足底接地、さらには立脚中期にかけて機能しますが、
その作用時間は1歩行周期の中でも0.4〜0.5秒程度と、
非常に短い時間とされています。
一般にトレンデレンブルグ歩行が生じる原因として、
“中臀筋の筋力低下”が最も主要な要因であると言われています。
しかしながら、実際には中臀筋の筋力または筋出力が正常であってもトレンデレンブルグ歩行が生じると言われています。
中臀筋の筋力低下以外の原因として、
“中臀筋の出力遅延”などが挙げられます。
疾患による股関節の支点の不安定さや、固有感覚の低下、
さらには、フィードフォワード機構の破綻が”中臀筋の出力遅延”の要因とされています。
トレンデレンブルグ歩行のその他の原因として、
・中臀筋の疼痛
・股関節インナーマッスルの機能不全
・腸腰筋の機能不全
・誤った運動学習
なども報告されています。
単一の要因だけでなく、実際にはこれらの要因が複雑に関与している場合が多いようです。
デュシャンヌ歩行とは?その原因は?
デュシャンヌ跛行とは、
“歩行の立脚期において、体幹を立脚側へ傾斜させる現象”
とされてます。
一般に、
トレンデレンブルグ歩行が生じないようにするための代償機構として出現することが多いようです。
つまり、予測的に立脚側へ体幹を傾斜させ、股関節に生じる内転モーメントを相殺するというメカニズムです。
原因としては、トレンデレンブルグ同様の要因が考えられますが、
必ずしも股関節周囲の機能不全のみならず、
膝関節、足関節の疼痛や、
構造的な不具合を補うための代償機構として作用、学習されてしまっていることも多いようです。
まとめ
今回は、”トレンデレンブルグ歩行”と”デュシャンヌ歩行”のそれぞれの現象や特徴、その原因などを解説しました。
これらの歩行を呈すことは、二次的な障害を生じる可能性があり、
画一的なパターンに陥りやすく、動作のバリエーションを制限します。
多くの参考書やブログなどで、
原因を特定するような記事を散見しますが、
実際には機能的な要素のみならず、心理的、社会的な要素なども複雑に絡んだ末に生じる歩行と捉える必要があります。
つまり、これらの歩行は何らかの異常に対する結果として生じるものであり、
個々に生じる原因をきちんと評価する必要があるのです。
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