人工股関節置換術のリスクや合併症は?脱臼や血栓に注意!
変形性股関節症の治療方法に【手術療法】があります。
人工股関節全置換術は、その最も代表的な手術手技です。
除痛効果が得られるとともに、歩行などにおいても楽に行えるようになるでしょう。
しかしながら、どんな手術にも必ず、リスクはつきものです!
人工股関節全置換術は、変形性股関節症や、大腿骨の頸部骨折、大腿骨頭壊死、関節リウマチなどの疾患に対して行われる手術手技です。
人工股関節全置換術に関するより詳細な記事はこちら
→変形性股関節症の手術療法とは?どんな種類や方法がある?
変形性股関節症に見られるように、股関節の変性や疼痛は様々な日常動作を妨げます。
特に歩行などの荷重時の疼痛は深刻で、歩行が不能になることで多くの日常生活動作に影響が及びます。
人工股関節全置換術は、股関節の変性による変形の矯正や、除痛効果が得られ、同時に歩行を中心とした日常生活動作の改善が見込めます。
変形性股関節症に関する詳しい記事はこちらを参照下さい
→変形性股関節症って治るの?原因や症状、治療方法とは?
しかしながら、どんな手術でも必ずリスクや合併症を伴います。
人工股関節全置換術におけるリスクを挙げると、
・脱臼
・緩みや破損
・感染症
・血栓症
などがあります。
手術後の管理などで防げるものやそうでないものとがありますが、どのようなリスクがあるのかを知っておくことは重要なことです。
そこで今回は、人工股関節置換術後のリスクや合併症についてまとめます。
→下肢の手術後に注意すべき血液データは?CRPやDダイマーの持つ意味は?
脱臼
人口股関節全置換術は、特定の方向へ動かすことで脱臼することがあります。
その発生率は、
初回手術後:2-3%
再置換術後:4-6%
と言われています。
通常の股関節では、骨盤の臼蓋の中に、大腿骨の骨頭が入り込み、周囲を靭帯や筋などの軟部組織が補強しています。
しかしながら術後は、これらの筋の切開を行っており、それらの回復が十分でない、とりわけ【術後3ヶ月】以内が最も脱臼のリスクが高いのです。
脱臼が発生しやすい方向とは、後方アプローチ(術創が臀部の後面)の場合、
股関節の【屈曲・内転・内旋】となります。
一度脱臼した場合は、整復が可能な場合もありますが、基本的には再置換術を施行しなければなりません。
人工股関節全置換術の脱臼に関する詳しい記事はこちらを参照下さい!
→人工股関節全置換術後の脱臼の原因や時期は?
→人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法
緩みや破損
人工股関節置換術には、おおよその【耐用年数】があります。
もちろん、日常生活の活動度などの使用量にもよりますが、おおよそ
【20年】程度とされています。
(現在は、人工股関節自体の発展が進んでおり、中には30年と言われるものもある)
年数が経過してくると、緩みや破損が生じ始め、痛みや不要な動きが生じてくることがあります。
その際は「再置換」の必要性があるため、すぐに専門医などを受診する必要があります。
感染症
感染症は、手術中や術後早期に創部から感染する場合と、
術後数年経って、身体の別の部位から入って菌が患部で感染症を引き起こす場合とがあります。
前者の場合は、手術施行者の管理による部分があるとともに、術後早期より入浴の制限やガーゼなどでの感染対策を取るなどの医療機関の管理によるところがあります。
後者の場合、例えば、「膀胱炎」「腎盂腎炎」さらには「虫歯」「歯周病」などでも人工股関節周りの感染症を引き起こす可能性があるのです。
感染症の発生頻度は1000人に3人程度と低いのですが、感染するとやはり「再置換」を余儀なくされます。
人工の股関節に置換されると、白血球やリンパ球などが働きにくくなるために感染症を引き起こすと言われています。
→人工股関節置換術後(THA)の脚延長に伴う神経障害発生との関係
血栓症
血栓症は、人工股関節置換術のみならず、下肢の手術後に生じやすい合併症です。
別名「エコノミークラス症候群」とも言われています。
手術後の不動の影響などから、本来働くはずの筋肉のポンプ作用が低下し、ふくらはぎの静脈に血栓が生じるのです。
このように血栓が生じるだけならまだ良いのですが、この血栓が血管を流れて肺に達した場合【肺塞栓症】と呼ばれる命に関わる重篤な合併症となります。
血栓症を予防するためには、手術後早期から、足関節や足趾を動かすこと、血栓症予防の靴下を履くなどの対策が必要です。
人工股関節置換術後のリハビリテーションに関する記事はこちら
→変形性股関節症や人工股関節全置換術後のリハビリテーションとは?
→変形性股関節症におけるリハビリテーションの評価項目は?
まとめ
今回は、人工股関節置換術後のリスクや合併症についてまとめました。
手術した後に、「知らなかった」じゃ悲しすぎますよね。
これらを事前に理解・同意した上で手術を行えると良いですね。
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