脊髄損傷の再生医療とは?

    
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昨今では、様々な疾患に対して

【再生医療】の研究が進められています。

 

当然ながら、「脊髄損傷」に対しても例外ではありません。

再生医療においては、iPS細胞が最も有名なところでしょう。

 

しかしながら、iPSよりも早く実用化される可能性が高いのが、

【自家骨髄間葉系幹細胞】を用いた再生医療です。

 

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【自家骨髄間葉系幹細胞】に関する研究は1990年後半より進められています。

札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所

本望修(ほんもう おさむ)教授によって多数の臨床治験の報告がなされています。

 

自家骨髄間葉系幹細胞は、骨髄液の中に存在し、

本来造血に作用する細胞ですが、

神経や血管系などへ分化する能力を持つことが明らかとなってきました。

 

この神経再生能力に着目し、

主には脳梗塞の患者を中心に治験が進められています。

同様に「脊髄損傷」に対しても治験が進められているそうで、実用化ももはやすぐそこまで来ているとのことです。

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その効果は、最短で翌日より動かなかった手足が動き始めるという驚くべきものです。

そこで今回は、【自家骨髄間葉系幹細胞】を用いた脊髄損傷の再生医療について調べてみました。

自家骨髄間葉系幹細胞とは?

骨髄間葉系幹細胞は、骨髄液に含まれる細胞のうち、0.1%程度とされています。

 

過去には、神経の再生は有りえないとされていましたが、

内臓や血管系、骨や軟骨、脂肪、筋肉、そして神経への分化が可能な細胞なのです。

 

 

 

治療の流れは?

【治療の流れ】

(1)患者の腸骨から居所麻酔で骨髄液を採取する

(2)細胞調整施設にて、約2週間で1万倍に培養する

(3)約1億個に培養された細胞をバックに封入し、細胞製剤を製造する(40mL)

(4)製造された細胞製剤を静脈内注射する

 

このような流れで治療が行われます。

自己から摂取しなければならない制約はありますが、

点滴で、しかも腕から投与するだけであるため、非常にシンプルであると言えます。

 

また、自己から摂取するということは、

「免疫反応(拒絶)が少ない」という非常に重要なメリットがあります。

 

 

 

再生のメカニズムは?

(1)ホーミング作用:悪い部分に勝手に集まる作用

(2)神経栄養作用:損傷した神経を治す

(3)血管新生:新たな血管を新生する

(4)神経再生:脱髄した神経の再生や、軸索を延長する

 

(1)や(2)は、投与後すぐに作用が開始します。

一方で、(3)や(4)は、1週から2週後から作用し始め、最終的にその効果は1年以上継続して作用(再生)すると言われています。

 

 

 

どれくらいの効果がある?

現在までに脊髄損傷における「治験」が行われています。

実際には、年齢が20〜70歳までの、Frankel分類の上位3つ、A、B、Cに該当する「頸髄損傷者」が対象となっています。

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また、発症から14日以内の転院が可能な者としています。

治験のお知らせはこちら

 

 

実際の症例紹介では、

・損傷から40日以内のC5不全損傷
・下肢筋力は0〜1程度
・動作能力はギャッチアップ座位がなんとか可能

このようなレベルの患者が、投与翌日に、

 

「下肢筋力3以上(自力で挙上可能)」

「自力での端座位保持可能」

 

という普通では考えられない回復を呈していました。

また、最終的に、「独歩」で自宅に帰るという信じられない回復力を示しました。

 

 

 

リハビリとの併用効果は?

このような回復が現実であれば、

リハビリテーション関連職種である、

「理学療法士や作業療法士、言語療法士は必要ない!」

と思われるかもしれません。

 

安心してください!

 

リハビリテーションとの併用効果が高いということも証明されたようです。

 

しかしながら、再生医療の普及によって、

これまでのような機能回復を目指したリハビリテーションのあり方は、違った形に変化していかなければならないでしょう。

 

もしかしたら、回復を促進するといった積極的なリハビリテーションよりも、

再生医療を待つ間の機能低下の予防といった方向性へのシフトが必要になるかもしれませんね。

 

 

 

実用化はいつ?

さて、最も気になるのは、この実用化ですね。

 

現在は、厚生労働省に対して、医薬品としての認可が下りるための臨床試験を行っている最中です。

その治験も現在は、第二相へ到達しております。

(第二相:比較的少数の患者に対して第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で薬剤が投与される。)

第三相の治験が終了し、厚生労働省に承認されれば、数年後には医薬品として全国に拡がるというわけです。

 

脳梗塞に対する治験は第三相に達しており、2017年ごろには世に出るのではないかと言われ、脊髄損傷は、それにやや遅れるといったところでしょうか。

 

軟骨再生に対する再生医療はこちら
「自家培養軟骨 ジャック」とは?リハビリテーションは必要ない?その意義とは?

 

 

 

まとめ

今回は、自家骨髄間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷に対する再生医療の進歩について解説しました。

「まだか、まだか」と心待ちにしていましたが、いよいよ目前に迫っています。

その効果は、確実かつ、今までの常識を覆すもので、あとは安全性さえ確立できればといったところでしょうか。

しかも、実は脳梗塞、脊髄損傷のみならず様々な疾患に応用可能だそうで、すでに幾つかの疾患における応用もなされているとのこと…

様々な医療職種は、この再生医療によってパラダイムシフトが要求され、その準備が必要といえるでしょう。

 

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