脊髄損傷における完全麻痺と不全麻痺の判定方法は?
脊髄損傷は、
脊柱(いわゆる背骨)の脊柱管を通る「脊髄」の損傷で生じる疾患です。
「完全麻痺」と「不全麻痺」とでは、
生じる症状や残存機能も大きく異なり、
その予後をも左右する重要な要素です。
脊髄損傷は、
“脊柱に強い外力が加わり、脊柱管を通る脊髄が損傷を受けた病態”
のことを言います。
脊柱の外傷には、
交通事故や、転倒や転落、スポーツ外傷などが主要な要因となります。
好発年齢では、
20代と50-60代でピークを迎える二峰性を示すことが特徴です。
詳しくはこちら
→脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?
脊髄損傷は、
損傷の程度や部位によって
・完全損傷
・不全損傷
に分類されます。
文字通り、損傷レベル以下が完全に損傷するか、
残存するかの違いがあり、
この違いこそが、残存能力や予後をも左右する重要な要素です。
そこで今回は、
脊髄損傷における完全麻痺と不全麻痺の判定方法について解説します。
気になる脊髄損傷の再生医療はこちら
→脊髄損傷の再生医療とは?
完全麻痺と不全麻痺とは?
脊髄損傷は、
「完全麻痺」か「不全麻痺」かによって、
症状や残存能力、回復の程度から予後までもが変わってきます。
「完全麻痺」とは、
脊髄が横断的に離断され、損傷レベル以下の神経機能が完全に絶たれた状態です。
そのため、上肢の筋や感覚を支配するような頸髄レベルの損傷においても、
同時に下肢機能までもが全廃します。
一方で、「不全麻痺」とは、
脊髄の一部が損傷または圧迫を受けることで、損傷レベル以下の機能も残存します。
この時の残存の仕方には、症状や左右差など、損傷の大きさによって様々です。
「不全麻痺」における病態はこちら
→脊髄損傷における不全損傷の特殊型とは?
完全麻痺と不全麻痺の判定方法とは?
完全麻痺と不全麻痺を判定することは、
残存能力の有無を判断し、日常生活にその機能を生かしていく上でも非常に重要です。
「完全麻痺」と「不全麻痺」の判定の指標として、
【仙髄部機能の温存】が挙げられます。
脊髄の中でも最も下位の機能が残存しているかどうかで判定するのです。
具体的な判定方法として、
(1)母趾屈筋の筋力テスト(S1領域)
(2)肛門周囲の知覚検査(S2,3,4領域)
(3)肛門括約筋の反射(S2,3,4領域)
これらの機能が一つで温存されていれば、「不全麻痺」と判断できます。
実際に、行う場合(1)は容易に検査が可能です。
(2)、(3)の方法は、肛門の知覚を直接確認するため、
医師と一緒に必要性を説明の上、行うようにしましょう。
なお、脊髄ショック期には、「不全麻痺」の状態であっても、浮腫や出血などの影響により、「完全麻痺」の様相を呈すので、注意しましょう。
髄節レベルごとの残存機能や能力はこちら
→脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力とは?
まとめ
今回は、脊髄損傷における完全麻痺と不全麻痺の判定方法について解説しました。
不全麻痺においても、その残存機能の程度によって、機能的な予後も大きく変わってくることは言うまでもありません。
適切な残存能力の判定により、早期よりそれらの強化を図ることが可能となります。
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