変形性膝関節症におけるリハビリテーションの評価項目とは?
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨変性を主体とし、骨の変形や可動域制限、痛みを伴う慢性で進行性の疾患です。
一般的に整形外科などでは、X線(レントゲン)を用いた画像診断が行われます。
→変形性膝関節症とは?その診断や分類方法は?
一方で、リハビリテーションの分野では、画像診断などを参考にしながらも、日常生活動作を阻害する機能的因子を評価することが重要です。
近年、日本では急速なまでの高齢社会を迎え、
加齢による退行性疾患は増加の一途をたどっていると言われています。
その中でも、変形性膝関節症は高齢女性を中心に有病率が高く、潜在的な患者数を含めると約3000万人に及ぶとも言われています。
変形性膝関節症に関する詳しい記事はこちらを参照ください!
→変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
保存療法、手術療法に限らず、日常生活動作の改善が求められるリハビリテーションにおいては、その障害構造を的確に捉え、治療に結びつけていく必要があります。
一般的に変形性膝関節症の最低限必要な評価項目としては以下の項目が挙げられます。
・問診
・視診、触診
・形態計測
・関節可動域
・筋力
・姿勢、動作
・日常生活活動動作
そこで今回は、これらの評価のポイントについて解説します。
なお、本記事は変形性膝関節症のリハビリテーションに携わる医療従事者や、
医療従事者を目指す学生などに非常に有益な情報です。
変形性膝関節症の手術療法に関する記事はこちら
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
→【変形性膝関節症】TKA術後のリハビリテーションって何をするの?
問診
問診において聴取したい情報は、
・疼痛
・現病歴
・生活歴
などが重要です。(年齢や性別などの基本情報は当然必要です)
この中でも【疼痛】は最も重要な問診事項であり、安静時や運動時、日中や夜間などに加え、どういった膝の動きでどこが痛いかなどの詳細な情報まで必要です。
それによって、リハビリテーションによって改善可能な症状なのか、どの部位のどのような動きを治療対象にするのかなどを決定します。
疼痛の客観的評価項目は、
「VAS(Visual Analogue Scale)」
「WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)」
が用いられています。
さらに、現病歴や生活歴からいつ頃から痛みが生じ始め、どのような生活スタイルが発症や増悪に影響しているのかなどを聴取します。
視診・触診
視診においては、内反変形の有無や変形の程度、発赤や腫脹の程度を評価します。
同時にQ角やFTAなども評価すると良いでしょう。(正確には荷重時のレントゲン画像が望ましい)
触診においては、膝蓋跳動、靭帯の弛緩・緊張の程度、筋緊張の程度などを評価します。
靭帯の弛緩や緊張に関しては、前方・後方引き出しテストや、内外反ストレステストなどでACL、PCL、MCL、LCLなどの各靭帯を評価します。
筋緊張の程度に関しては、実際に触れることによって張力などを評価します。
特に高度な内反変形を呈している場合は、大腿筋膜張筋や腸痙靭帯などの外側の支持組織の張力が高まっている場合が多いです。
さらに、過度に大腿が外旋、下腿が内旋するような変形をきたしやすいことも特徴です。
形態計測
形態計測には、
・周径
・脚長差
があります。
周径は、大腿周径・下腿周径があります。
筋の萎縮の程度や腫脹の程度を把握することができます。
特に大腿四頭筋の中で最終伸展の役割を担う内側広筋の萎縮の程度を把握できる膝蓋骨上縁から10cm程度までの周径は重要です。
脚長差は、棘果長・転子果長があります。
変形性膝関節症の場合は、膝関節伸展制限や内反変形などがあるため左右差を評価することは大事です。
関節可動域
日常動作を円滑に、かつ効率良く行なうためには関節可動域の改善は必須と言えます。
変形性膝関節症では、膝関節屈曲・伸展の関節可動域の計測を行います。
加えて、膝関節の機能低下に伴い影響を受ける足関節や股関節といった隣接関節の評価も重要です。
膝関節では基本的に屈曲・伸展と言った一軸の運動と捉えられやすいですが、回旋の動きが特に重要です。
伸展時には「外旋」、屈曲時には「内旋」といった【srew home movement】を適切に評価しておきましょう。
→人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?
筋力
筋力の評価は通常MMT(Manual Muscle Testing)で評価します。
変形性膝関節症では、従来より大腿四頭筋の筋力低下が認められると報告されています。
その中でも、膝の最終伸展域で作用する内側広筋の機能低下が著明となります。
単純に筋力の低下だけではなく、筋の萎縮が存在していることが多いのです。
関節可動域と同様に、代償的な活動を強いられている可能性のある隣接関節の評価も重要となります。
また、MMTの評価だけでなく、荷重下での評価も必要です。
振り向き動作テストやフォワードランジテストが有用であります。
→変形性膝関節症に対する筋力トレーニングとは?自宅で出来る方法は?
姿勢・動作
姿勢・動作の評価は、重心位置との関係から力学的ストレスがかかっていないかを注意深く観察する必要があります。
なぜなら、このような力学的ストレスが発症に関与し、症状を増悪させる要因になるからです。
姿勢の評価は、
・臥位
・座位
・立位
動作の評価は、
・立ち上がり
・歩行
などを評価します。
特に歩行に関して、変形性膝関節症の特徴は、【Lateral Thrust】です。
Lateral Thrustは、立脚初期より急速に膝が外側へ動揺することです。
これは、靭帯の機能低下や、内反膝によって重心線が膝関節の内側を通ることなどによって生じるのです。
日常生活活動動作
日常生活活動動作は、一般的に
・FIM(Functional Independence Measure)
・BI(Barthel Index)
を評価項目にしている病院が多いため、いずれかの項目を用いると良いでしょう。
しかしながら、これは、最低限の日常生活動作であるため、より高度な家事や移動動作、さらにはその人の趣味などを考慮した中での動作遂行能力を評価することが必要です。
変形性膝関節症に関する記事はこちらもどうぞ
→変形性膝関節症|ヒアルロン酸注射って効果があるの?
→変形性膝関節症にサポーターは効果がある?選び方のコツは?
まとめ
今回は、変形性膝関節症に対するリハビリテーションの評価のポイントについて解説しました。
先に挙げた項目だけを評価すれば良いわけではありません。
しかしながら、最低限これだけの評価をすることによって機能障害の把握を行います。
それぞれの評価の持つ意味をきちんと考えながら、病態を理解し、治療につなげていく必要があります。
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