前十字靭帯損傷とは?受傷機転や症状、その治療方法は?
「前十字靭帯損傷」は、
膝関節に存在する大腿骨と膝関節を結ぶ強靭な靭帯の損傷です。
多くは、スポーツ選手などが外傷によって受傷します。
では、その受傷機転や症状、治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか!?
前十字靭帯損傷は、
主にスポーツをしている人が激しい外力によって受傷する疾患です。
よくスポーツニュースなどでも、多くの場合膝の外傷といえば、この前十字靭帯が多数を占めるのではないでしょうか!?
前十字靭帯は、膝関節に存在する靭帯で、
「大腿骨の後方から脛骨の前面に向かって斜走し、脛骨の前方への過度な変位を防止」します。
関節包内に位置し、全長は3cm、幅は1cm程度の強靭な靭帯です。
運動や動作を行う際に、関節の安定を保つためには非常に重要な靭帯です。
前十字靭帯は、その強靭さゆえに、簡単なことでは損傷しません。
多くの場合は、スポーツによる受傷です。
急な方向転換やジャンプでの着地などの非接触型の受傷、
または、タックルなどによる接触型の受傷です。
前十字靭帯損傷の症状は、疼痛よりも、
脱力感や膝のぐらつき、膝崩れなどの症状です。
たとえ切れていても歩行が可能となります。
ただし、そのような状態では関節の安定も得られず、スポーツなどにおいても良好なパフォーマンスは得られません。
では、前十字靭帯損傷にはどんな治療法があるのでしょうか!?
そこで今回は、前十字靭帯損傷の受傷機転や症状、その治療方法などについて解説します。
前十字靭帯とは?
まずは、前十字靭帯の位置や走行を確認しましょう。
走行:大腿骨の顆間窩後外側から前内方へ斜走し、脛骨の前顆間区へ付着
役割:膝関節の過伸展や内旋、前方への引き出しを制限する
関節包内に位置し、全長は3cm、幅は1cm程度の強靭な靭帯です。
前十字靭帯損傷の受傷機転は?
前十字靭帯は、強靭な靭帯ゆえに多くの場合はスポーツなどにより受傷します。
受傷機転としては、2つの要因があります。
【非接触型】ジャンプの後の着地や、急な方向転換時
【接触型】タックルなどの接触プレー
受傷割合としては、非接触型が70%、接触型が30%程度となります。
また、非接触型の中でも、減速や着地などの動作の際の受傷がおよそ90%を占めるそうです。
前十字靭帯の機能を考慮すると、損傷する際には、膝関節に対して、
強い【内旋力】が加わることで受傷します。
また、前十字靭帯単独損傷以外にも、50%前後の確率で半月板損傷を伴うのも特徴です。
具体的に受傷が多いスポーツは、
・サッカー
・スキー
・バスケットボール
・ラグビー
・バレーボール
・格闘技
・野球
などです。
膝の中でも最も重篤な複合損傷はこちら
→不幸の三徴候(アンハッピー・トライアド)とは?
受傷後の診断には徒手検査法が用いられます。
→前十字靭帯損傷における徒手的検査法とは?
前十字靭帯損傷の症状は?
前十字靭帯損傷を受傷した際にはどのような症状が出るのでしょうか!?
まず受傷時には、膝の激痛と前十字靭帯の断裂音(ブチッやバチッなど)が生じます。
少し時間が経つと関節内に血腫ができ腫脹や熱感が出現します。
急性期の症状が落ち着くと、多少の困難さはありますが、歩行することも可能となります。
しかし、歩行時の膝崩れ(giving way)などの症状を認めスポーツなどにおいては膝の不安定性から良好なパフォーマンスを発揮することは困難です。
反対に言えば、高度な運動を要求されない場合は、放置される人もいるほどです。
では、前十字靭帯損傷の治療法にはどのような方法があるのでしょうか!?
前十字靭帯損傷の治療方法は?
前十字靭帯損傷の治療方法は、
・保存療法
・手術療法
があります。
保存療法
前十字靭帯損傷は放置して治癒する疾患ではないですが、前述のように高度な運動を要求されない場合、装具療法などを用いた保存療法も適応となります。
※ただし、成長期から思春期にかけての対象では、保存療法の成績は不良であるとの報告もされています。
この場合は、リハビリテーションなどによって、大腿四頭筋やハムストリングスなどの筋力強化によって関節の安定性を高めるなどの方法が有効です。
前十字靭帯損傷のリハビリテーションの記事
→前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法は?
手術療法
スポーツ選手のスポーツ復帰などを目指す場合は、保存療法では困難です。
手術療法が必要となります。
放置した状態で、スポーツを再開すると、半月板や軟骨の損傷などの合併症を呈すため早期の治療が重要です。
代表的な手術療法は、【前十字靭帯再建術】です。
前十字靭帯再建術には、2種類の方法があり、
・骨付きの膝蓋腱を用いたBTB法
・半腱様筋腱と薄筋腱を用いたSTG法
です。
前十字靭帯再建術の詳しい解説はこちら
→前十字靭帯損傷に対する手術療法!STG法やBTB法とは?
それぞれの方法においても利点や欠点はあるものの、重要なのは、術後のリハビリテーションです。
膝装具装着下での荷重や筋力訓練を行い、再建膝に過度の負荷がかからない範囲で実施します。
前十字靭帯損傷に対する装具療法はこちら
→前十字靭帯損傷における装具療法とは?DONJOYの役割や費用は?
再建膝の強度が回復することを見越しても、競技復帰するには最短でも半年はかかるといわれるため、サッカー選手などでも前十字靭帯損傷は長期離脱を余儀なくされます。
まとめ
今回は、前十字靭帯損傷の受傷機転や症状、その治療方法などについて解説しました。
スポーツ選手にとっては長期の離脱を余儀なくされ、かつ不十分な治癒での復帰は再損傷や断裂を引き起こす可能性もある疾患です。
焦らず長期的な視点で治療、リハビリテーションを行っていくことが重要となります。
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