人工股関節置換術後(THA)の脚延長に伴う神経障害発生との関係は?
人工股関節置換術(THA)は、
変形性股関節症に対する手術療法として知られ、
主に「除痛」や「変形の矯正」に有効であるとされています。
しかしながら、手術療法だけあって、
それなりのリスクがあることを知っておかなければなりません。
変形性股関節症は、
“股関節の軟骨組織の磨耗を主体として、関節の変形や疼痛を呈す退行性疾患”です。
重症度にもよりますが、
最終的には手術療法が適応となり、代表的な手術療法として、
【人工股関節置換術(THA)】があります。
変形性股関節症やTHAに関する記事はこちら
→変形性股関節症って治るの?原因や症状、治療方法とは?
→変形性股関節症の手術療法とは?どんな種類や方法がある?
著明な除痛効果や関節変形の矯正、さらには歩行の再獲得が期待でき、
近年の目覚ましい手術手技の向上ともに、多くの患者が適応となっています。
しかしながら、手術には、リスクがつきものです。
人工股関節置換術のリスクとしてよく知られているものに、
・脱臼
・感染
・血栓症
などが挙げられます。
詳しい記事はこちら
→人工股関節置換術のリスクや合併症は?脱臼や血栓に注意!
その他にも意外に知られていない症状の一つに、
【神経障害】があります。
神経障害は文字通り、神経を損傷したことによる症状で
・歩行時痛
・筋力低下
・痺れなどの感覚障害
が出現する可能性があります。
これらの発生には、幾つかの原因があります。
そこで今回は、人工股関節置換術後(THA)の神経障害発生の原因を解説します。
神経障害発生の原因
人工股関節置換術後の神経障害の原因には、幾つかの原因があります。
その中でも、主要な原因として挙げられるのは、
【脚延長説】と
【術中操作説】です。
【脚延長説】
脚延長説とは、文字通り、脚の長さが延長することに起因します。
変形性股関節症は、関節軟骨の磨耗により、関節裂隙が狭小化することで健側に比して脚長が短縮することが知られています。
人工股関節置換術は、人工物に置換することで、健側と同様の長さになるように脚長を延長することが一般的です。
筋肉や腱は弾性力があるため、この脚長の延長に伴い幾分か適応することが可能です。
しかしながら、血管や神経は伸びることが出来ないので、過緊張状態に陥ります。
この血管や神経の過度の延長が、血管損傷や神経障害を引き起こす原因となるのです。
脚延長による神経障害が出現しやすいには、
・関節リウマチ
・重度の股関節屈曲拘縮
・再置換術
などが挙げられます。
【術中操作説】
術中操作説は、手術手技によって損傷してしまう場合です。
術中に神経を損傷してしまう要因として、
・臼蓋固定のスクリューやセメントの突出による穿孔
・骨切りされた大転子を固定するワイヤーによる穿孔
・術中の脱臼操作
・坐骨神経の直接損傷
などが挙げられます。
また、術後の要因として、【血腫】などによる坐骨神経との癒着を要因とする血腫説なども存在します。
脚延長量と神経障害との関係
では、どれくらい脚が延長すると神経障害が出現するのでしょうか!?
ここでいう引き延ばされる神経は、人間の中でも最大の直径と長さを持つ末梢神経である
「坐骨神経」です。
臀部を通過したのち、「総腓骨神経」と「脛骨神経」に枝分かれします。
実は、脚延長の程度によって、症状が出現する神経領域が異なるようです。
総腓骨神経領域:下肢延長量平均27mm程度(19-37mm)
脛骨神経領域:下肢延長量平均44mm程度(40-51mm)
上記のような延長量でそれぞれ神経障害が発生する可能性があるようです。
変形性股関節症に関する記事はこちら
→変形性股関節症に貧乏ゆすりって効果があるの?
→人工股関節全置換術後の脱臼の原因や時期は?
まとめ
今回は、人工股関節置換術後(THA)の神経障害発生の原因を解説しました。
術後に生じる疼痛は、皮膚や筋、はたまた心理的なものなどなど…
特定できるものから、実際にはよく分からないというものまで様々です。
脚延長による神経障害の発生リスクがあるということを知っておくことで、より詳細な評価が可能となるでしょう。
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