TKA術後のリハビリテーション「膝関節伸展制限」の原因は?
人工膝関節全置換術(以下:TKA)は、
変形性膝関節症に対する最もスタンダードな手術方法として知られています。
TKA術後のリハビリテーションでは、
関節可動域の改善は必須命題となります。
TKA術後の膝関節は、
手術侵襲による疼痛や腫脹などの炎症症状が生じ、
筋の防御性収縮をはじめとした不動によって
“関節可動域制限”が生じることが少なくありません。
加えて手術療法に至るレベルの膝関節では、
術前より骨の変形のみならず、
筋や靭帯、軟部組織の短縮などをきたしている場合が多く、
術後の関節可動域の改善に苦渋します。
膝関節の関節可動域訓練といえば、
通常は“屈曲”に焦点が当てられることが多いと思います。
しかしながら、本当に大事なのは、“伸展”なんです。
そこで今回は、TKA術後のリハビリテーションで苦渋する
「膝関節伸展制限」の原因について解説します。
Contents
なぜ伸展可動域が重要なの?
TKA術後のリハビリテーションにおいて、
通常は“屈曲”に焦点が当てられます。
事実、屈曲方向の関節可動域は、
最低でも90°以上曲がらなければ日常生活動作に支障をきたします。
詳しくはこちら
→人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?
一方で伸展方向の関節可動域は、
二足歩行を行う人にとって、構造的な安定性を獲得するために非常に重要な要素です。
立位において完全伸展が行える膝であれば、
構造上立位を保持するための膝周囲筋の活動は最小限で済みます。
(わずかな身体同様に対する調整程度)
しかしながら、5°程度であっても伸展可動域制限が残存すれば、
立位において、重力の影響で生じる膝関節屈曲モーメントに抗する筋活動を常に発揮しなければなりません。
このような状態では筋や骨に対する力学的なストレスが積み重なり、
疼痛などの二時的な障害をきたすことがあるのです。
そもそも術後に伸展可動域が低下する原因は?
TKAの手術以前に、変形性膝関節症を有する場合、
骨の変形などから、膝関節後面筋の短縮や軟部組織の癒着などが生じている場合が少なくありません。
→変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
手術療法では、通常は膝関節後面に対する操作は行わないため、
(骨棘などの切除を行うことはある)
術前後では、通常伸展可動域に大きな変化はないことが考えられます。
しかしながら、実際には後述する原因の中でも、
・術後の疼痛による膝屈曲位での防御性収縮
・炎症症状による腫脹
・臥床時の屈曲での管理
などが更なる膝関節伸展関節可動域制限を作るのです。
膝関節伸展可動域制限の原因は?
TKA術後のリハビリテーションにおける膝関節伸展可動域制限の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
大きく分けて以下の四つの要素を疑います。
・骨性の要素
・筋性の要素
・軟部組織の要素
・その他の要素
です。
骨性の要素
骨性の要素において、
骨棘の残存や、異所性骨化などの構造上の問題は、
徒手的な改善は難しいと考えられます。
手術した医師とのアセスメントが必要です。
重要な骨性の要素は、
膝蓋骨の可動性や、大腿骨と脛骨間の可動性(インプラントのタイトさにもよる)であり、
いずれもある程度の動きが必要です。
筋性の要素
筋性の要素では、
主に膝関節の後面の筋の伸張性に左右されます。
・膝窩筋
・ハムストリングス
・大腿筋膜張筋(腸脛靭帯)
・腓腹筋
などの筋群の伸張性や滑走性の低下が、
伸展可動域制限の大きな原因と言われています。
軟部組織の要素
軟部組織の要素では、
関節包や靭帯が主要な制限因子です。
特に、
・後方関節包
・斜膝窩靭帯
・弓状膝窩靭帯
・ファベラ腓骨靭帯
などが考えられます。
その他の要素
その他の要素としては、
前述したように、手術侵襲による疼痛や腫脹などの炎症症状です。
疼痛を回避するためには、軽度屈曲位が安楽であり、
臥床に伴う、この肢位での不動は伸展可動域の低下を助長します。
まとめ
今回は、TKA術後のリハビリテーションで苦渋する「膝関節伸展制限」の原因について解説しました。
膝関節の伸展可動域は、
立位における構造上の安定を保証するものであるため、必ず完全伸展を目指す必要があります。
ただ、その原因が必ずしも膝のみにとも限らず、
例えば脊柱の円背などを伴う患者であれば、自ずと膝は屈曲します。
身体全体との関係性もきちんと評価することも重要です。
変形性膝関節症のリハビリテーションはこちら
→【変形性膝関節症】TKA術後のリハビリテーションって何をするの?
→変形性膝関節症に対する筋力トレーニングとは?自宅で出来る方法は?
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