上腕骨近位端骨折に対する手術療法やリハビリテーションとは?
上腕骨とは、
二の腕に相当する骨です。
上腕骨の中でも、上腕骨の近位端は、
高齢者にとって転倒などの軽微な外力によって容易に骨折をきたす部位です。
重症度に応じて手術療法が選択され、
その後のリハビリテーションが機能的な予後を左右します。
「上腕骨近位端骨折」は、
上腕骨でも肩関節に近い部分の骨折です。
主な受傷機転は、【転倒】であり、
その際に床に上肢を伸ばして接地することで受傷します。
受傷機転の詳しい記事はこちら
→上腕骨近位端(外科頸)骨折とは?原因や症状、治療方法は?
好発年齢は、60歳以上の高齢者です。
もともと「骨粗鬆症」などを有している場合が多く、
骨の脆弱性を呈します。
「上腕骨近位端骨折」に加えて、
大腿骨頸部骨折・橈骨遠位端骨折・脊椎圧迫骨折などは、
高齢者に生じやすい【四大骨折】と言われています。
上腕骨近位端骨折の治療方法は、
部位や重症度によって決定されます。
関節内骨折や粉砕骨折などに対して、
【手術療法】が適応となりますが、どのような種類があるのでしょうか!?
そして、術後のリハビリテーションはどのようにして行うのかについて解説します。
「上腕骨近位端骨折」の手術療法
上腕骨近位端骨折の手術療法の適応は、
骨折部位の転位の有無や、関節内に及ぶ骨折か、粉砕骨折かなどがあります。
上腕骨近位端骨折の代表的な分類方法である
「Neer分類」によって決定されます。
上腕骨近位端骨折の手術療法には、
・鋼線を用いる方法
・髄内定固定術
・プレート固定術
などの整復固定術が行われます。
また、脱臼骨折の場合などには、
「人工骨頭置換術」が適応となります。
「上腕骨近位端骨折」のリハビリテーション
上腕骨近位端は、場合によっては肩関節にも及ぶ骨折で、
そうでなくても固定期間の存在や手術による侵襲は、肩関節を含んだ機能低下を招く可能性があります。
肩関節は、肩関節周囲炎でも知られるように、
「拘縮」をきたしやすい関節としても知られています。
よって、関節可動域訓練を始めとして、
適切な管理やリハビリテーションこそが、術後の機能予後を左右する大きな因子なのです。
手術後のリハビリテーションでは、
手術方法の違いによって多少の時期や方法に違いがあるものの、
肩関節の関節可動域の維持や向上、筋力の維持や向上に関する部分は近似しています。
【整復固定術】が用いられた場合、
術後翌日から、運動療法を開始します。
代表的な運動方法には、
「腕を下垂させた状態での振り子運動」があります。
別名【コッドマン体操】とも言われます。
おおよそ2〜3週程度までは、重力を除いた肢位で、過度の負担がかからない範囲での運動が推奨されます。
それ以降、徐々に自動介助運動、さらには、骨癒合が得られたのを確認した段階より、自動運動、抵抗運動へと進めていきます。
【人工骨頭置換術】が用いられた場合、
早期には脱臼のリスクがあるため、
三角巾や外転枕などによって外固定を行います。
とりわけ、前方脱臼には注意が必要です。
術後1週頃より、徐々に下垂位での振り子運動を開始し、
術後2~4 週後頃から自動介助運動を、
術後 5~6 週頃より自動運動へと進めていきます。
「上腕骨近位端骨折」の手術療法
今回は、上腕骨近位端骨折に対する手術方法やリハビリテーションを解説しました。
適切な安静や必要な運動などの管理を怠ると、関節可動域制限はもちろんの事、
骨の遷延治癒や偽関節などの合併症を招くこともあります。
再手術の適応となる可能性も十分にあるので、
理学療法士や作業療法士の指導の元、適切なリハビリテーションを行いましょう。
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