前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法は?

    
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前十字靭帯損傷とは、大腿骨と膝関節を連結し、膝関節の安定に寄与する靭帯の損傷です。

多くはスポーツなどを行う人が受傷します。

競技復帰を目指す場合は、手術療法が選択され、

術後早期よりリハビリテーションを開始します。

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前十字靭帯は、

「大腿骨外側顆の内側面から、脛骨近位端の前顆間区を繋ぐ靭帯」です。

全長はおよそ3cmで、幅は1cm程あり、脛骨の前方移動や内旋を制動する役割があります。

 

前十字靭帯損傷の受傷機転は、サッカーやバスケットボールなどのスポーツで、

急激な方向転換やジャンプ後の着地、タックルなどの接触で受傷することがあります。

前十字靭帯損傷の受傷機転などの記事はこちら
前十字靭帯損傷とは?受傷機転や症状、その治療方法は?

 

治療方法には、保存療法や手術療法がありますが、

競技復帰などを目指す場合には、手術療法が適応となります。

ただし、再建された靭帯の強度は3ヶ月以降に徐々に増してくるため、早期より激しい運動は行えず、運動強度は徐々に上げていくしかありません。

前十字靭帯損傷の手術療法の記事はこちら
前十字靭帯損傷に対する手術療法!STG法やBTB法とは?

 

スポーツ選手の場合、長期の離脱を余儀なくされるため、

その間に十分な【リハビリテーション】を行う必要があります。

術後の理学療法では、術直後からの装具療法を用いた荷重訓練や関節可動域訓練、筋力増強訓練などがありますが、いずれも段階的に負荷を上げていくのがポイントです。

そこで今回は、前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法について解説します。

前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション

前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーションは、再建靭帯の強度に合わせた負荷量の設定が必要です。

再建靭帯は、術後一度壊死し脆弱化し、9週以降より骨との接合部の強度が増していくという特徴があります。

前十字靭帯損傷における手術後の再建靭帯の修復過程は?

 

そのため、時期に合わせたリハビリテーションの進行が重要です。

特に再建術初期には、移植腱にストレスが加わらないように保護しながら実施します。

以下に術後からの経過に合わせたリハビリテーション方法の例を紹介します。
(一つの例としての紹介であり、病院やDrの方針によって違いがあります)

 

術後1日

術後翌日より、運動療法が開始されますが、膝関節の過度な運動を抑制するための

【膝装具】の装着が必要です。

代表的な装具はDONJOYと呼ばれる膝装具で、段階的に膝関節に許容させる関節角度の調整が可能です。

前十字靭帯損傷に対する装具療法はこちら
前十字靭帯損傷における装具療法とは?DONJOYの役割や費用は?

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この装具を装着して、

膝蓋骨の可動性維持程度の関節可動域訓練を開始します。

また、筋力増強訓練は、装具装着にて早期より開始可能ですが、膝関節に関しては等尺性の運動が原則です。

膝関節の安定性に寄与する内側広筋の強化のためにも、

下肢伸展挙上(SLR)Quad Setthingなどは積極的に実施しましょう。

 

下肢伸展挙上(SLR)

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Quad Setthing

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さらに、装具装着下にて荷重訓練も開始します。

ただし、この時期の荷重量は「toe touch」程度が推奨されます。

完全免荷は、脛骨が大腿骨に対して離開する方向への外力が加わり再建靭帯に負荷がかかるため推奨されません。

 

 

術後7日

術後1週間経過しても装具の装着は必要です。

この時期より徐々に負荷量も向上します。

 

関節可動域訓練では、0-90°程度の自動介助運動を開始します。

また、病室などでもCPMを用いた関節可動域訓練が可能です。

 

筋力増強訓練は、膝関節屈曲60°までの付近での等尺性の筋力増強訓練が可能となります。

大腿四頭筋の中でも内側広筋の筋力増強は非常に重要です。

 

荷重は、1/4部分荷重訓練を開始します。

 

 

術後14日

関節可動域訓練や筋力増強訓練はこれまで同様に継続します。

荷重訓練は、1/2部分荷重訓練を開始します。

 

 

術後21日

関節可動域訓練や筋力増強訓練はこれまで同様に継続します。

荷重訓練は、3/4部分荷重訓練を開始します。

 

 

術後28日

関節可動域訓練や筋力増強訓練はこれまで同様に継続します。

荷重訓練は、全荷重での訓練を開始します。

 

 

術後1ヶ月以降

関節可動域訓練は、0-120°の範囲で開始します。

筋力増強訓練はハーフスクワット、バランスボードを用いたDyjog訓練など、徐々にClosed kinetic chainでの運動を開始します。

また、エアロバイクなどを用いて漸増的に負荷を増加させます。

 

 

術後3ヶ月-4ヶ月以降

この頃になると、再建靭帯も徐々に強度を増してくるため、負荷量も向上させます。

関節可動域もほぼフルレンジでの運動が可能です。

ジョギング片脚でのバランス訓練などを開始します。

 

 

術後6ヶ月以降

種目別の訓練を開始し、徐々に競技復帰を目指します。

アジリティー訓練ステップ訓練など、より実践的な運動に移行します。

最短でも半年が競技復帰の目安とされていますが、不完全な状態での復帰は再発を招くことがあるため注意が必要です。

 

リハビリテーションを行う上で徒手検査法は重要です。
前十字靭帯損傷における徒手的検査法とは?

 

 

 

前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーションのポイント

前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーションのポイントは、

・再建靭帯に負荷のかからないよう段階的な負荷量の増加
・関節可動域訓練では、脛骨の前方引き出し力が加わらないように注意する
・筋力増強訓練では、伸展位での膝関節の安定性に寄与する内側広筋の強化が重要
・競技復帰のためには膝だけでなく、体幹や股関節、さらには足関節などの運動連鎖を考慮して、再発のないような動作方法の獲得が必要

上記の点を考慮したプログラムの実施が原則です。

 

 

まとめ

今回は、前十字靭帯損傷の手術後の経過に合わせたリハビリテーション方法について解説しました。

再建靭帯の強度の回復に合わせた負荷量の設定が重要となります。

競技復帰を焦って進めても、良い結果は生まれません。

膝の回復とともに、再発予防も含めた新たな動作戦略の獲得が重要となります。


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