人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?
変形性膝関節症に対する手術療法として
「人工膝関節全置換術」は最も代表的な手技とされています。
その効果は除痛や変形の矯正によって、
多くの日常生活動作の改善が期待されます。
その中でも関節可動域の改善は日常生活動作の改善に必須の機能回復です。
変形性に対する人工膝関節全置換術は、軟骨の磨耗によって変性した膝関節を金属などでできた人工物に置換する手術です。
多くの場合、除痛効果や変形の矯正が見込まれます。
人工膝関節置換術に対する手術療法はこちらの記事を参照ください!
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
しかしながら、手術の効果で得られる成果は、「除痛」や変形の矯正であって、歩行などの日常生活動作ではありません。
更に言うならば、歩行以外の日常動作である、階段昇降や、床上動作、自転車漕ぎなどは、自然に行えるようになるわけではありません。
それらの能力の回復は、手術後のリハビリテーションの成果にかかっていると言っても過言ではありません。
人工膝関節置換術後のリハビリテーションはこちらの記事を参照ください!
→【変形性膝関節症】TKA術後のリハビリテーションって何をするの?
そのようなリハビリテーションの中でも術後早期から重視される機能は、
【関節可動域】です。
関節可動域とは文字通り、関節が可動する範囲のことですが、これが獲得されなければ様々な日常生活動作に支障が出ます。
では、実際に何度の角度があればいいのでしょうか!?
そこで今回は、様々な動作に必要な膝関節の関節可動域を紹介します。
※あくまで目安であって、必ずしもこの角度がないと出来ないわけではありません。訓練やエクササイズの参考にして下さい。
関節可動域獲得の意義は?
関節可動域というのは、各関節に参考可動域と言われる可動域が存在します。
例えば膝関節では、
屈曲:130°
伸展:0°
となっています。
しかし、実際には130°以上の角度を有している人もたくさんいれば、それより少なくても生活が可能な人もいます。
この角度になっていないから関節可動域を向上させようではなく、
「この動作をしたいから関節可動域を向上させよう」という考え方をしてみましょう。
また、人工膝関節全置換術後は、インプラントの種類にもよりますが、一般的に獲得可能な関節角度は【120°前後】であることを念頭に入れましょう!
人工膝関節全置換術におけるインプラントの違いはこちら
→全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?
それでは、各動作ごとに必要な関節可動域を以下に紹介します。
歩行
歩行に必要な膝関節可動域は、
約60°です。
単純に歩行と言っても大股の歩行だったり、速歩きなどがありますが、ここでは一般的な通常歩行とします。
膝関節の可動域が特に必要なのは、床からつま先から離れた直後から接地するまでの間です。
走る
走るために必要な膝関節可動域は、
約135°です。
歩くのと違いがあるように、速度が上がる(大きく踏み切る)たびにより大きな関節角度を必要とします。
起立・着座
起立・着座に必要な膝関節可動域は、
約90°-100°です。
角度が大きければ大きいほど、楽に立ち座りが行えます。
また、より低い椅子にも座ることが可能となります。
階段昇降(のぼり)
階段昇降のぼりに必要な膝関節可動域は、
約80°です。
一般的には80°程度の可動域は確保したいところですが、高さが極端に高い、横向きで登る、後ろ向きで登るなどの場合はその限りではありません。
また、筋力の強さによってもその可動域は異なるといえるでしょう。
階段昇降(くだり)
階段昇降くだりに必要な膝関節可動域は、
約90°-100°です。
のぼりよりも大きい関節可動域が必要となります。
このような角度に達しておらず、強引に降ろうとする場合は、まっすぐ下りれないか疼痛を生じることがあるために注意が必要です。
しゃがみ込み
しゃがみ込みに必要な膝関節可動域は、
約120°-130°です。
人工膝関節全置換術の場合、しゃがみこむためには最大程度の関節可動域の獲得が必須です。
自転車こぎ
自転車こぎに必要な膝関節可動域は、
約120°です。
サドルの高さを調整することによって多少の前後はあります。
正座
正座に必要な膝関節可動域は、
約150°以上です。
正座が最も関節可動域を必要とする動作です。
人工膝関節置換術の場合はほぼ不可能と言えるでしょう。
無理に行うと、人工関節の破損を招くこともあります。
変形性膝関節症に関する記事はこちらもどうぞ
→変形性膝関節症に対する筋力トレーニングとは?自宅で出来る方法は?
→変形性膝関節症でO脚となる原因は?O脚は治るの?
まとめ
今回は、様々な動作に必要な膝関節の関節可動域を紹介しました。
あくまで目安であって、必ずしもこの角度がないと出来ないわけではありません。
というのも、人によって、動作方法によって、環境によって、必要な関節可動域は簡単に変わってしまうからです。
あくまで参考までに活用してください。
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