「重心動揺計」とは?測定の目的や、測定項目の意味とは?
「重心動揺計」という測定機器をご存知だろうか?
現在病院などでは、“平衡機能検査”として診療報酬を請求することが可能です。
多くの病院で、整形外科疾患のみならず、
高齢者や障害者のバランスを評価するために用いられています。
“重心動揺”という指標は、
その者の重心の変動を測定することで、バランスを評価する指標として知られており、
「重心動揺計」という機器を用いて測定するのが一般的です。
身体重心は第2仙骨の前方付近に位置していることから、直接的な計測は困難であり、
実際には、足底部に加わる力を数カ所で測定し、その作用点である足圧中心を算出するものです。
そのため、厳密には重心動揺という解釈は誤りですが、静止立位を維持している限りは、
ほぼ近似の値となります。
重心動揺計は、比較的安価であり、省スペースかつ短時間での計測が可能であることから、
病院などで導入されやすく、研究などでのパラメータとして多く使われています。
しかしながら、客観性に乏しいことや、
身体が重心を多様に制御した結果として表出される足圧中心を計測しているにすぎないため、
身体に起きている現象や、細かな要因を探るためには、その他の機器を併用して用いる必要性も出てきます。
それでも、重心動揺計から得られるデータを解釈し、
臨床に応用することは非常に有意義であると考えられます。
そこで今回は、「重心動揺計」における疑問を解説します。
重心動揺計の計測における目的とは?
重心動揺計測では、
“立位姿勢におけるバランスを評価する”ために用いられるのが一般的です。
立位姿勢の安定に寄与する固有感覚情報として、
視覚・体性感覚・前庭感覚が挙げられ、これらが中枢神経系により統合され、
四肢骨格筋に出力されることで、平衡を保つことが可能です。
これらのバランス制御は、
疾患ごとに特性があり、それらの動揺パターンを分析することで、
病巣の推測や、その程度を判定することも可能です。
もともと眩暈や平衡機能障害に対して身体の揺れを捉えるために用いられていました。
また、どのような疾患や状態においても、
治療効果の判定においても用いることが可能です。
重心動揺計の構成は?
重心動揺計の多くは、
・フォースプレート
・増幅器
・解析機器(コンピュータやモニター)
・プリンター
などから構成されています。
フォースプレートは、3点以上の垂直荷重センサーと連結され、
時事刻々と変化時する荷重量や荷重点を算出しています。
重心動揺の測定は?
重心動揺計測における方法として、
日本において最も代表的なのは、
“日本平衡神経科学会”が定めている基準です。
・足位は閉脚立位(場合によっては30°開足位)
・時間は60秒間(困難であれば30秒)
・視線は2m前方の目線の高さのマークを注視
などなどに加えて、幾つかの細かい設定が定められています。
必ずしも準ずる必要はないですが、
足位や時間、さらには周辺の環境など、バランスに影響を与える情報の統制は必須です。
重心動揺の測定項目は?
重心動揺計では、
算出された足圧中心の変動を評価します。
この変動を動揺量と捉え、姿勢保持能力が低いほど大きくなると捉えるのが一般的です。
代表的な指標には以下のようなものがあります。
総軌跡長
測定時間における足圧中心の総移動距離です。
左右または前後など分離して算出することも可能です。
面積
足圧中心の変動によって囲まれた面積です。
囲まれた面積を囲む外周面積と、
前後左右の最大移動距離の積で算出される矩形面積があります。
速度
総軌跡長を単位時間で除した速度です。
前後や左右を分けて算出することも可能です。
まとめ
今回は、「重心動揺計」について、目的や指標の意味などについて解説しました。
重心動揺は省スペースかつ簡便であり、非常に臨床上有用です。
しかしながら、その客観性は不十分であることに加えて、
評価指標の捉え方などについても、一様の見解は得られていません。
評価結果だけを参照するのではなく、実際の動揺パターンの観察などから、
それらの関連づけをする作業が必要となります。
バランスの評価方法はこちら
→「バランス」とは?その評価方法とは?
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