「運動器不安定症」とは?ロコモティブシンドロームとは違うの?
「運動器不安定症」
このような疾患名を聞いたことがあるでしょうか?
一般にはあまり馴染みがないかもしれませんが、
このような診断を受ければ、
保険診療でのリハビリテーションを受けることも可能です。
「運動器不安定症」は、
高齢化社会において、運動機能の低下が原因で、転倒や予期せぬ事故などで、介護を受ける高齢者が増加したために、
平成18年4月より認められた新たな疾患名なのです。
「運動器不安定症」の最新の定義は、
「高齢化にともなって運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態」
となっています。(日本運動器科学会 2016)
また、最近では似たような言葉として
「ロコモティブシンドローム」があり、
両者を混同して用いてしまうことも少なくありません。
しかしながら、似たような概念である両者にも違いがあります。
そこで今回は、「運動器不安定症」とは何か?
そして、ロコモティブシンドロームとの違いなどについて解説します。
「運動器不安定症」とは?
「運動器不安定症」は、冒頭にも述べたように、
“高齢化にともなって運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態”
と定義されます。
「運動器不安定症」は、明確な診断基準が存在しており、
日常生活自立度、運動機能テスト、
そして以下に示す11の状態に当てはまる時に診断されます。
日本運動器科学会によると、
機能評価基準
1. 日常生活自立度判定基準ランクJまたはAに相当
2. 運動機能:1)または2)
1)開眼片脚起立時:15秒未満
2)3m timed up-and-go(TUG)テスト:11秒以上高齢化にともなって運動機能低下をきたす11の運動器疾患または状態
・脊椎圧迫骨折、各種脊柱変型(亀背、高度腰椎後弯・側弯など)
・下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)
・骨粗鬆症
・変形性関節症(股関節、膝関節など)
・腰部脊柱管狭窄症
・脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷など)
・神経・筋疾患
・関節リウマチおよび各種関節炎
・下肢切断後
・長期臥床後の運動器廃用
・高頻度転倒者
注:日常生活自立度ランク
J:生活自立 独力で外出できる
A:準寝たきり 介助なしには外出できない
このように明確な診断基準が存在します。
主として整形外科を中心として診断されることが多く、
診断後は保険診療下でのリハビリテーションを受けることが可能となります。
下肢を中心とした筋力訓練や、バランス訓練、歩行訓練など、
その人にあった訓練内容を提案し、機能改善を目指します。
「ロコモティブシンドローム」とは?
「ロコモティブシンドローム」とは、
2007年に日本整形外科学会によって提唱された概念です。
高齢社会を迎える日本の平均寿命は80歳を越え、
これに伴って運動器の障害が増加しています。
このような時代背景に合わせた言葉として、ロコモティブシンドロームが提唱されました。
ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)とは、
加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより
運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、
そのリスクの高い状態を表す言葉
まとめ:結局両者の違いは?
「運動器不安定症」そして、「ロコモティブシンドローム」両者の定義を見てきました。
非常に似たような概念であるのは確かですが、
その両者の違いは、
ロコモティブシンドロームに比し、運動器不安定症はその適応範囲が狭く、
診断基準を満たすことで診断されます。
一方でロコモティブシンドロームは、運動器不安定症よりも広い概念であり、
明確な診断基準がありません。
ロコモティブシンドロームといった広い概念の中に、
運動器不安定症が含まれており、重なる部分も多いがそうでない部分もあるということです。
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