人工膝関節全置換術(TKA)における皮切後の侵入方法とは?リハビリへの影響は?
「人工膝関節全置換術」は、
“変形性膝関節症”に対して、除痛を目的とした手術療法です。
人工物へ“置換”するため、
必然的に皮膚や筋を切開する必要があり、その方法には幾つかの種類があります。
「人工膝関節全置換術(以下:TKA)」は、
“変形性膝関節症”などに対して、除痛を図り、再び歩行を始めとした日常生活動作を取り戻すために行われる手術療法です。
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
“変形性膝関節症”では、
大腿骨と脛骨の間の軟骨の磨耗が生じます。
同時に、日本人ではO脚変形をきたし、
特に膝関節の内側の疼痛を生じやすいです。
TKA施行後には、再び日常生活動作を獲得するための
【リハビリテーション】が実施されます。
・関節可動域訓練
・筋力増強訓練
・起立、着座訓練
・歩行訓練
大きく分けると以上のような訓練が実施されますが、
いずれの場合にも、手術侵襲による疼痛が訓練自体を制限することもあります。
→変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
このような疼痛に対しては、
いわゆる“痛み止め”と言われる消炎鎮痛作用のある投薬などを行いますが、
そもそも手術侵襲の大きさと疼痛は関連があり、
皮切(皮膚の切開)後の侵入方法の種類によっても、その差は生じるようです。
そこで今回は、人工膝関節全置換術(TKA)における皮切後の侵入方法の種類やリハビリテーションへの影響などについて解説します。
変形性膝関節症やTKAに関する記事はこちら
→人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?
→変形性膝関節症にヒアルロン酸注射は効果がある?
Contents
TKAに対する皮切後の侵入方法の種類とは?
TKAに対する皮切後の侵入方法の種類は、
幾つかのアプローチが存在し、それらには皮切の形や大きさだけでなく、
深部に位置する筋の切開などに関係します。
その種類とは、
・medial parapatellar approach
・midline approach
・midvastus approach
・subvastus approach
・lateral approach
があります。
lateral approachのみが、膝関節の外側から侵入する方法であり、
その他の4法は内側から侵入する方法となります。
medial parapatellar approach
medial parapatellar approachとは、
最も展開が容易な方法とされています。
大腿四頭筋の内側縁である、内側広筋の筋腱移行部にてで切開する方法と、
大腿四頭筋の内側1/3を縦割する方法が存在します。
大腿四頭筋へ侵襲が加わるため、術後の膝関節伸展筋群の出力は低下すると言われていますが、
正確な骨切りや靭帯バランスを取りやすいので、メリットが大きい方法とされています。
midline approach
midline approachとは、
大腿四頭筋の内側1/3を縦割する方法です。
midvastus approach
midvastus approachとは、
浅筋膜の深層で膝蓋骨内側、内側広筋付着部を展開する方法です。
術後の四頭筋の回復が早く、
膝蓋大腿関節の安定性を得る事が可能で術後の疼痛も少ないのが特徴です。
subvastus approach
subvastus approachは、
膝蓋骨内側から、内側広筋を温存するようにかわしながら切開する方法です。
内側広筋をそのまま温存できることから、
術後の大腿四頭筋の筋力回復も早いと言われています。
また、術後の疼痛が少ないのもメリットの一つです。
lateral approach
lateral approachは、
外側から侵入する方法であり、外反膝に適応となります。
剥離すべき、外側のコンパートメントに直接到達できるメリットがあります。
皮切後の侵入方法によるリハビリテーションへの影響は?
TKAに対する皮切後の侵入方法によって、
リハビリテーションへの影響はあるのでしょうか?
幾つかの皮切後の侵入方法を解説しましたが、
その違いは、“内側広筋”を展開するか否かがポイントとなります。
当然ながら、切開が大きい場合には、侵襲が大きく、
疼痛や膝関節伸展筋力の低下を招くことを考慮しなければなりません。
しかしながら、長期的な成績においては、
どの手法においても疼痛や筋力の回復に差がないといった報告もあるようです。
TKAのインプラントによる違いはこちら
→全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?
→TKAのインプラント「BCR型」や「Medial Pivot型」とは?
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