「一本杖(T字杖)」の使用目的や適応とは?
高齢社会を迎えている今、街中では多くの人が“杖”を使用しています。
皆さんが使用する、そしてよく見かける杖は、
いわゆる「一本杖」と呼ばれるものが多いと思います。
「一本杖」とは、
一本の棒の形状をしており、持ち手の部分が”T字”になっている杖です。
別名「T字杖」と呼ばれています。
様々な杖の種類が存在しており、
“四点杖”や“多点杖”、やや特殊な“ロフストランド杖”などなど…
その中でも「一本杖」は最もシンプルで、最も普及している杖です。
皆さんは、この「一本杖」の使用目的を正しくご存知ですか!?
人によって様々な目的があり、何らかの身体機能を補うものとして使われます。
しかしながら、適切な使用目的のみならず、使用方法を間違っている人もたくさんいるのも事実です。
そこで今回は、「一本杖(T字杖)」の使用目的や方法、そしてその適応などについてまとめます。
「一本杖」とは?
別名“T字杖”とも呼ばれているように、
その形状は、一本の棒に、持ち手の部分がT字になっている杖です。
日本においては、様々な疾患を有する人以外にも、
使用している高齢者は多く、その普及率は最も高いと言えます。
現在では、医療用品として売られているものから、
中には100円均一などでも安価で購入出来るようになっています。
「一本杖」の使用目的は?
「一本杖」はどのように使うのが好ましいのでしょうか!?
実はその人その人の身体状態によって様々です。
その中でも、「一本杖」が果たす役割として、
“バランスの補助”が最も主要であると言えます。
人は、両足で囲まれる面積である“支持基底面”と呼ばれる範囲の中に、
身体の重心を収めることで立っていることが出来ます。
※支持基底面の外に重心が位置したら基本的に倒れます。
杖をつくことで、この面積が、両足と杖が接地している面積に拡大し、
支持基底面が広くなるのです。
支持基底面が広くなることは、その中で重心を収めることが容易となり、
結果としてバランスの補助、ひいては転倒予防に寄与するのです。
(足を閉じた姿勢より、開いた姿勢のが倒れにくいことと同様の原理です。)
勘違いしてはいけないのは、
「一本杖」は、体重をかけることが目的ではないということです。
強く体重をかけると、杖が滑ってしまったり、逆によろけることもあります。
体重をかけるための杖として、”四点杖”や”ロフストランド杖”が存在します。
「四点杖」に関する記事はこちら
→「四点杖(多点杖)」ってどんな杖?役割や適応は?
「一本杖」の使用方法は?
杖を持っていれば安心というわけではありません。
正しい使用方法を知ることが重要です。
杖を持つ手は、「右」それとも「左」?
「杖は、利き手に持てば良いですか?」
よく聞かれる言葉ですが、正確にはそうではありません。
杖を持つ手は、“良い方の足の側で持つ”ことが正解です。
(これは、最も頻繁に認められる一足の下肢の障害などの場合です。)
なぜかというと、通常の歩行の場合、
「右足を出した時に左手が前に出る」
「左足を出した時に右手が前に出る」
はずです!
そのため、悪い方の足を着く時に杖を持つ方が動作としても理にかなっているし、
自信のない悪い方の足で支える時のバランスを補助できるからです。
ただし、特にどちらの足も悪くはなく、
“御守り代わりに”
杖を持つ人などは、利き手で持つのも良いでしょう。
正しい杖の高さは?
正しい杖の高さは、
・杖をつく位置がつま先の15cm前で15cm外側
・肘の角度は30°屈曲位
・杖の高さは、大腿骨の付け根の外側の出っ張り部(大転子)
この3つのポイントを確認しながら高さを調整すると良いでしょう。
「一本杖」の適応は?
「一本杖」の使用目的は、
前述のように“バランスの補助”が挙げられます。
つまり、「一本杖」の適応となるのは、
杖を持つことで“バランスを保つことができる人”が適応となります。
しかしながら、「一本杖」の構造的な問題として、
多くの体重を受けることが出来ません。
(体重をかけすぎると逆にバランスを崩します)
そのため、一つの基準として、
・杖がなくてもある程度歩ける人
・杖をついた状態で、身体をまっすぐに保持したまま片足立ちができる人
を目安として使用しましょう。
具体的な疾患としては、
【変形性膝関節症】
【変形性股関節症】
【変形性足関節症】
【脳血管障害】
【下肢骨折の手術後】
などが適応となります。
(挙げたらきりがないくらいに万人に適応となります。)
まとめ
今回は、「一本杖(T字杖)」の使用目的や方法、そしてその適応などについてまとめました。
【転ばぬ先の杖】
とはよく言ったもので、
転倒予防として、御守り代わり、使用することが本来の「一本杖」の目的と言えます。
様々な杖の種類や特徴を記載している記事はこちら
→杖の種類や特徴|適応や杖の選び方
スポンサーリンク