骨粗鬆症のリハビリテーションとは?運動療法による転倒予防が重要!
超高齢社会を迎えている日本では、
「骨粗鬆症」は医療費増大や要介護状態に直結する社会問題の一つです。
可能な限りこれらの状態に陥ることを予防するための一つの方法として、
リハビリテーションひいては運動療法による転倒予防が重要となります。
「骨粗鬆症」とは、
“骨の量(骨量)が減少し骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気“です。(日本整形外科学会)
日本には1000万人以上の患者がいると言われており、
超高齢社会となった日本ではますます増加されることが懸念されています。
加齢や女性に見られる閉経、生活習慣等が原因となることがほとんどですが、
特定の疾患や服薬による副作用で生じるものもあります。
ただし、基本的に骨粗鬆症になったからといって「痛み」が生じるわけではありません。
また、歩行ができなくなるわけではありません。
日常生活も特別筋肉の衰えがあるわけでなければ送れるでしょう。
では一体、「骨粗鬆症」になると何に困るのでしょうか?
「骨粗鬆症」によって最も困ることは“骨折”です。
特に多いのは腰椎の圧迫骨折や大腿骨の近位部骨折ですが、後者は寝たきりや生命予後にも直結する重大な問題です。
実は、誰でもこれらの骨折をする可能性はありますが、
特に「骨粗鬆症」の人の場合には非常に軽微な転倒によっても骨折が生じてしまいます。
よって「骨粗鬆症」の対策では、「骨粗鬆症」そのものに対する投薬などの治療はもちろんのこと、
転倒を予防することが重要であり、
それらの中核を担うものがリハビリテーションであり、狭義には運動療法(運動による治療)が重要となるのです。
「骨粗鬆症」に対する運動療法の効果とは?
「骨粗鬆症」に対する運動療法の効果は大きく分けて二つあります。
一つは、「骨粗鬆症」そのものの改善です。
もう一つは、前述したように転倒予防です。
「骨粗鬆症」の改善
「骨粗鬆症」の改善というのは、
いわゆる運動による骨密度の維持や改善です。
骨密度の維持や改善のためは、
骨に対する力学的な負荷や衝撃が加わりやすい
「高強度のレジスタンストレーニング」や「ハイインパクトな運動」が有効とされています。
Zhaoらによるメタアナリシスでは、
これらの運動を含んだ複合運動が、閉経後の女性の様々な部位の骨密度に対して有意に増加させたと報告されています。
(Zhao R et al:The Effectiveness of Combined Exercise Interventions for Preventing Postmenopausal Bone Loss: A Systematic Review and Meta-Analysis)
ちなみにこのような骨に刺激が加わりやすい運動は、閉経後の女性に対する骨密度の改善に有効であるということが、
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年度版」に記載され、
推奨グレードはA(行うよう強く勧められる)となっています。
ただし、これらの運動を行うには、身体機能の低下した高齢者や、
骨の脆弱性を有す骨粗鬆症患者やその予備軍にはいくらかリスクが伴うものであるとも言えます。
必ず管理下(病院など)で行うことが理想的です。
運動療法による転倒予防
運動療法による転倒予防こそが骨粗鬆症対策の本質となります。
転倒を予防する方法としては、
患者教育や住環境の整備などがありますが、ここでいう運動療法は自分で行える点で重要です。
転倒予防のために重要な身体機能の要素としては、
「バランス」と「下肢筋力」が重要とされており、これらの要素を含む運動が有効です。
Gillespieらによる高齢者を対象としたメタアナリシスの結果においても、
これらの要素を含んだ運動をグループで行っても一人で行っても転倒を3割程度減少させる効果があると考えられています。
(Gillespie LD et al:Interventions for preventing falls in older people living in the community.)
転倒予防に対する運動療法の実際
では、実際に自宅で一人でも安全に行える運動にはどのようなものがあるでしょうか。
日本整形外科学会が推奨しているロコモーショントレーニング(ロコトレ)は、前述した「バランス」と「下肢筋力」の要素を含む運動です。
そのため、これらの運動は、転倒予防にむけたプログラムとしても有効です。
もとより一人で行えるように作られた運動であり、
簡単に行える点も魅力的です。
いずれの運動も、運動時に転倒してしまっては意味がありません。
必ず何かに捕まるなどの安全を重視して行いましょう。
また、一日行うだけでは効果は得られません。
何よりも継続することが重要です。
まずは自分が続けられる範囲での回数や頻度を設定して行うことが良いでしょう。
詳細な方法はこちらのサイトを参照すると良いです。
まとめ
今回は、骨粗鬆症に対する転倒予防を中心とした運動療法の効果や、
その具体的な方法について紹介しました。
骨粗鬆症対策には、
運動療法による骨密度の維持や改善と、
転倒予防が重要となります。
推奨されている運動を無理せず続けられる範囲で行うことが、
骨粗鬆症対策への近道となるのではないでしょうか。
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