頸髄損傷に好発する自律神経障害とは?

    
Pocket

スライド35

 

脊髄は、脊柱の中を走行する神経束で、

頚髄・胸髄・腰髄・仙髄が存在します。

 

その高位によって支配している領域も異なりますが、

とりわけ上位である

 

「頚髄」の損傷は、

様々な障害を引き起こすことで知られています。

 

スポンサーリンク

 

脊髄損傷とは、

“脊髄に対して内的または外的な損傷が加わって生じた病態”

です。

 

交通事故や転倒・転落、スポーツ外傷などの外力によって生じる場合が多いですが、

脊髄腫瘍や椎間板ヘルニアなどの内的な要因で生じることもあります。

受傷原因の詳しい記事はこちら
脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?

 

 

脊髄損傷の中でも、より高位の損傷である

「頸髄損傷」は、生じる症状や後遺症も最も重篤なものとなります。

例えば、C3以上の損傷では呼吸もままならず「呼吸補助器」を用いるなど、

生命の危険も十分に考えられるレベルとなります。

損傷レベルに応じた残存機能能力はこちら
脊髄損傷における主要残存筋と、その機能とは?
脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力とは?

 

 

頸髄損傷において、特有の症状として挙げられるのは、

【自律神経障害】です。

自律神経障害は、末梢神経の病気の一種で、

自律的に(意識的な努力を伴わずに)体内のプロセスを制御している神経系の損傷が起きるのです。

そこで今回は、頸髄損傷に好発する自律神経障害について解説します。

頸髄損傷で生じる自律神経症状とは?

自律神経とは、神経系の中でも、

「内臓機能」を調整する働きを有しています。

 

例えば、消化管の運動や、ホルモン分泌、末梢の血流調整、排尿、心拍数の調整などがあります。

実はこの自律神経は脊髄を重要な通過路としているのです。

 

自律神経の中でも

「交感神経」は、胸髄の1番(Th1)から腰髄の3番(L3)までの間で神経鎖を形成しており、

頸髄損傷においては、これらの神経系の損傷を免れないというわけです。

 

以下に、頸髄損傷で好発する自律神経障害を開設します。

 

 

自律神経過反射

自律神経過反射は、Th6以上の脊髄損傷患者に生じる自律神経の異常反射です。

発生機序は不明であるが、

膀胱刺激や直腸刺激、内臓刺激、皮膚刺激が引き金となって、

・頭痛
・発汗
・発作性高血圧
・徐脈
・呼吸困難
・動悸
・胸痛

などの症状が生じる現象です。

内臓調整機能の障害のため、血管系の不適応が生じ、あらゆる刺激が引き金となるのです。

反対に、これらの症状が発現したら、排泄の合図として捉えたりすることもあります。

 

 

体温調節障害

Th6以上の脊髄損傷者は、放熱面と産熱面のバランスが崩れることで体温調節障害をきたします。

基本的に外界の温度に左右され、高体温あるいは低体温を示します。

夏季には、発汗障害により「うつ熱」を生じることがあり、脈拍数の増加や皮膚温の上昇が認められることがあります。

受傷後数年しても改善しないケースもあるため、室温や衣類での体温調節が有効とされています。

 

 

異常高体温

体温調節障害と似た様な病態ではありますが、

受傷後数時間から数日後に40℃以上の高体温を示すことがあります。

脳幹における体温調節障害もしくは、麻痺域の発汗機能低下による体温拡散不能などの機序が考えられています。

 

 

血管運動神経障害

Th5以上の脊髄損傷者は、腹部の臓器や下肢の交感神経系の支配が絶たれます。

障害領域における血管運動神経麻痺などが生じており、

抗重力位をとることで、

【起立性低血圧】を引き起こします。

通常であれば、重力の影響で下肢へ流れた血液は反射的に脳の方へ押し出されるような機能が働きますが、この機能が障害を受けているわけです。

対策として、早期からの端座位や起立位などの体位変換が重要です。

詳しくはこちらを参照ください!
脊髄損傷による「起立性低血圧」の原因や対策、リハビリ方法とは?

 

 

知覚脱失性疼痛

知覚脱失性疼痛は異常疼痛とも呼ばれ、

知覚が脱失している部位から、激痛痺れなどの主観的な疼痛の訴えを認めます。

この機序は不明でありますが、

身体的な条件や天候などが影響しているとも言われています。

 

軽症では、身体を動かすことや摩るなどの対応を、

中程度異常の症状では、電気刺激療法や温熱療法、薬物療法、外科的治療、さらには心理療法などの治療法が行われることがあります。

ただし、原因が明らかでないため、根治的な改善には繋がりにくいです。

 

 

異所性骨化

異所性骨化は、受傷後早期の弛緩状態の下肢に、骨化が生じ、著しい関節可動域制限をきたします。

原因は不明であるが、悲愛護的な下肢の扱いなどにより生じる微小損傷や浮腫が誘因となるとされています。

技術力によっては理学療法士や作業療法士による関節可動域訓練で生じることも….

発症直後には、熱感や腫脹、血清アルカリフォスファターゼの上昇などを認めます。

具体的な治療法はなく、予防と早期発見が重要で、手術が必要となる場合があります。

 

脊髄損傷に関する記事はこちらもどうぞ
脊髄損傷におけるリハビリテーションに必要な評価項目とは?ASIAって?
脊髄損傷における不全損傷の特殊型とは?

 

 

 

まとめ

今回は、頸髄損傷に好発する自律神経障害について解説しました。

予防できるものと、そうでなく上手に付き合うことが必要な症状まで様々です。

特に医療関係者であれば、このような症状が出現することと、その対策方法については知っておく必要がありそうですね。


スポンサーリンク
Pocket