頚椎症性脊髄症に対する手術療法とは?
頚部には、7つの頚椎が存在しており、
頚椎の真ん中の脊柱管には、四肢の運動や感覚などを支配する
「脊髄」が通過しています。
加齢などの影響で、頚椎周囲の組織の変性が生じることで、
脊髄を圧迫し、様々な神経症状が出現します。
これを「頚椎症性脊髄症」と言います。
頚椎の変性によって生じる神経障害を総称して「頚椎症」と呼びますが、
「頚椎症性脊髄症」は、狭義の頚椎症に分類されます。
似たような疾患に、「頚椎症性神経根症」がありますが、
その病態の違いから区別されます。
詳しい記事はこちら
→「頚椎症性神経根症」または「頚椎症性脊髄症」ってどんな病気?
「頚椎症性脊髄症」は、
椎間板の変性や骨棘の新生により、脊髄を圧迫することで発症します。
男女比では男性の方が女性の2倍の発症率を誇り、
年齢は50歳以上に好発します。
手の痺れや巧緻性の低下はもとより、
下肢の脱力や、ふらつき、膀胱直腸障害など、上肢に限局した障害だけでなく全身的な障害が出現します。
頚椎症性脊髄症の治療は、
軽症であれば保存療法が施行されることがありますが、
その効果は高いとは言えません。
最終的に、【手術療法】へ移行する場合がほとんどです。
そこで今回は、頚椎症性脊髄症に対する手術療法について解説します。
頚椎症性脊髄症に対する手術療法
頚椎症性脊髄症に対する代表的な手術療法は、
・前方除圧固定術
・後方除圧固定術
・椎弓形成術
などが挙げられます。
前方除圧固定術
前方除圧固定術は、
頸部の前方より侵入し、除圧と固定を行う手術手技です。
除圧は、頸部の前方より椎体を削って脊髄の圧迫を除去します。
固定は、金属製の内固定材や骨盤などから採取した自家骨などを使用して固定します。
通常は、1〜2椎間の限局性の病変に適応があるとされています。
症状の改善が早いことが特徴ですが、固定された部分の上下の椎骨に負担がかかり、術後しばらく経過した後に症状が出現することも、稀にあるようです。
後方除圧固定術
後方除圧固定術は、
頸部の後方から切開して侵入する方法です。
除圧と固定の組み合わせは、前方除圧固定術と同様であり、
除圧や固定の目的も前方と同様です。
前方除圧固定術に対して、後方除圧固定術では、
前方除圧固定術で適応とならない広い範囲(3椎間以上)で脊髄に圧迫がある場合や、脊柱管の狭窄がある場合などで行われます。
椎弓形成術
椎弓形成術は、
椎弓に切れ込みを入れて開き、人工骨や自家骨などを挿入しながら脊柱管を広げる手術です。
椎弓を開く方法にも2種類あり、
・縦割法(椎弓を正中で開く)
・片開き法(片側から開く)
が行われます。
2椎間以上の多椎間例や、脊柱管の狭窄を伴う例で適応となります。
まとめ
今回は、頚椎症性脊髄症に対する手術療法について解説しました。
手術の目的は、当然症状の改善ですが、もっと大きな目的として症状の進行防止が挙げられます。
実際に痛みは取れても痺れが残存するケースが大多数です。
それだけに、早期の手術が重要であるということは言うまでもないでしょう。
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