腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリテーションの評価項目は?
腰部脊柱管狭窄症は、60歳以上の高齢者に好発する骨関節系の退行性疾患です。
脊髄の通り道である、「脊柱管」の狭窄によって、下肢を中心とした神経症状が出現します。
保存療法・手術療法などの治療方法がありますが、いずれもリハビリテーションが適応となります。
脊髄の圧迫に起因する症状の改善には、
微細な姿勢や動作の変化を的確に捉える評価能力が重要となります。
腰部脊柱管狭窄症は、
“加齢などによる腰椎の退行性変化により、脊髄の通り道である脊柱管が狭窄し、下肢の運動麻痺や痺れが出現する疾患”
です。
両側性、または片側性に下肢の痛みや痺れ、感覚障害や運動麻痺などの症状が出現し、
歩行を始めとして日常生活動作能力の低下が生じます。
腰部脊柱管狭窄症に関する記事はこちら
→腰部脊柱管狭窄症とは?原因や症状、その治療方法は?
腰部脊柱管狭窄症の治療には、保存療法、手術療法があり、重症度により選択されますが、いずれの場合にも【リハビリテーション】が適応となります。
保存療法では、姿勢の矯正や動作指導による「症状の進行防止」を、
手術療法では、術後の基本動作訓練による「日常生活動作の再獲得」を主な目的として進めます。
腰部脊柱管狭窄症の手術に関する記事はこちら
→腰部脊柱管狭窄症における手術療法の種類や方法とは?
特に保存療法では、詳細な姿勢や動作、筋力や関節可動域などの評価から、
的確な病態解釈の上で治療プログラムの立案がなされなければ、治療の効果はおろか、悪化してしまうことすらあると言えます。
そこで今回は、腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリテーションに必要な評価項目をまとめます。
Contents
腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリテーション評価
腰部脊柱管狭窄症のリハビリテーションに必要な評価項目をまとめます。
腰部脊柱管狭窄症のリハビリに関する記事はこちら
→腰部脊柱管狭窄症のリハビリテーションの方法やポイントは?
<一般情報>
一般情報の中で必ずチェックしなければならないのは、
・現病歴
・X線、MRI所見
です。
現病歴では、「いつ頃から、どのような時に、どこが、どのように」など詳細に聴取します。
後述しますが、疼痛の状況などについても詳しく問診を行います。
趣味や職業などもそうですが、生活歴の中にその疾患に至ったヒントが多く隠されています。
X線、MRI所見は必ずチェックが必要です。
脊柱のアライメントを確認し、どの高位レベルが、どの程度狭窄しているのか、そしてどちらの方向へ動くと狭窄が強まりそうなのかを動作と合わせて評価するのです。
<疼痛>
疼痛の評価は、
・VAS(Visual Analog Scale)
を用いるのが一般的です。
ただし、どのような動きで、どこが、どれくらい、どのように痛いのかを詳細に確認します。
特に、腰椎の運動で再現性の高い痛みを特定しておくことが最も重要と言えます。
<深部腱反射>
腰部脊柱管狭窄症では、神経の圧迫によって、深部腱反射の異常を認めます。
L3-4レベルを含む狭窄:膝蓋腱反射が低下あるいは消失
S1レベルを含む狭窄 :アキレス腱反射が低下あるいは消失
画像所見と合わせて損傷高位の確認が可能であり、左右差などの判断にも有用です。
<整形外科的テスト>
【SLR(下肢伸展挙上)】
仰向けで膝を伸ばしたまま、下肢を挙上します。
L5,S1,S2の神経根が診療され、屈曲70°以下で痛みが出現したら陽性となりますが、一般的にこのテストで陽性となるのは、ヘルニアであり、腰部脊柱管狭窄症は陰性となります。ヘルニアとの鑑別に必要な検査です。
【Kemp’s test】
膝を伸ばしたまま立位をとり、徐々に腰椎を後屈かつ側屈します。
同側の下肢痛が生じた場合に陽性であり、腰部脊柱管狭窄症の半数が陽性となります。
<筋力検査>
神経症状による筋力低下は一般的にMMTによって評価を行います。
圧迫された髄節レベルに応じて筋力低下が生じる部位が決定されます。
脊髄の圧迫の場合、筋力低下という概念ではなく運動麻痺が生じている場合があり、異常な筋緊張に支配され、筋出力が発揮できない場合もあるため、鑑別が必要です。
<感覚検査>
感覚障害も筋力検査同様に、圧迫された髄節レベルによって障害部位が決定されます。
しかしながら感覚障害と一概に行っても、触覚だけでなく、温痛覚、痺れなどの異常感覚まで様々です。
残存する感覚機能を活用していけるよう、これらも細かく評価を行います。
<姿勢・動作分析>
腰部脊柱管狭窄症において、最も重要な評価は姿勢・動作分析です。
腰部脊柱管狭窄症は、一般的に腰椎の【伸展運動】によって症状が強まるとされています。
姿勢や動作の中で、腰椎の伸展運動が強まっていないか、そしてそのタイミングで疼痛などの症状の悪化がないかを確認します。
また、反対にそれらの症状がなく、楽になる姿勢や動作はどのようなものなのかを詳細に評価します。
姿勢や動作の評価によって、直接的に目指すべき姿勢や動作の方向性が決定されます。
ただし、必ずしも伸展運動で症状が悪化する場合だけではないことに注意をしましょう。
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→腰部脊柱管狭窄症に対するプロスタグランジン製剤(PG)の効果とは?
まとめ
今回は、腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリテーションに必要な評価項目をまとめました。
腰部脊柱管狭窄症の評価で重要なことは、検査や測定の数字に囚われないことです。
特に姿勢や動作の分析などの運動をきちんと分析し、それらと症状の再現性をきちんと確認していくことで、自ずと治療方針は決まってくるはずです。
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