脊髄損傷の合併症とは?褥瘡や異所性骨化に注意!
脊髄損傷は、
脊柱の中を走行する「脊髄の損傷」です。
運動麻痺や感覚障害のみならず、
日常生活に関わる様々な後遺症を残します。
さらに、注意が必要なのは、
脊髄損傷の合併症です!
脊髄損傷とは、
“脊柱に強力な外力が生じた結果、脊髄を損傷する病態”
です。
多くは、交通事故や転倒・転落、スポーツ外傷で生じますが、
中には、脊髄腫瘍や椎間板ヘルニアなどの内的な要因が原因となる場合もあります。
詳しくはこちら
→脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?
→脊髄損傷における不全損傷の特殊型とは?
脊髄損傷は、損傷の程度や部位によって
・完全損傷
・不全損傷
に大別されます。
いずれにせよ、損傷によって
運動麻痺や感覚障害をはじめとして、
膀胱直腸障害や呼吸障害、循環器障害や消化器障害など、
様々な症状から、日常生活動作が高度に障害されることがあります。
このような脊髄損傷によって生じる症状とは別に、
脊髄損傷には注意しなければならない
二次的な合併症が多く存在します。
命に関わるものから、予防が可能なものまで様々です。
そこで今回は、脊髄損傷の合併症について解説します。
気になる脊髄損傷の再生医療はこちら
→脊髄損傷の再生医療とは?
脊髄損傷の合併症とは?
脊髄損傷には、損傷によって直接引き起こす身体麻痺のみならず、
二次的に引き起こされる合併症もしくは併存症などが存在します。
呼吸器合併症
呼吸器の合併症は、
頚椎4番(C4)以上の頸髄損傷者に見られます。
自発的な呼吸を司る筋である「横隔膜」が麻痺するためです。
C4レベルでは一部、C3では完全に人工呼吸器などが必要となります。
また、呼吸の問題だけでなく、
腹部の筋の麻痺によって、咳が行えず、痰を排出できずに
「肺炎」などを併発することも少なくありません。
循環器合併症
循環器の合併症は、大きく分けて
・起立性低血圧
・深部静脈血栓症
があります。
起立性低血圧は、座位や起立などの抗重力姿勢をとることで、
身体の血流が下肢に貯留したまま還流できずに脳の血流が不足するために生じます。
具体的には意識消失などをきたすことがあります。
→脊髄損傷による「起立性低血圧」の原因や対策、リハビリ方法とは?
深部静脈血栓症は、
いわゆる「エコノミークラス症候群」と呼ばれる病態です。
自発的に動かすことの出来ない下肢の静脈に血栓が生じやすくなります。
この血栓が肺まで到達すると、「肺塞栓症」という重篤な疾患に発展します。
消化器合併症
消化器合併症は、特に急性期である1ヶ月以内に生じやすいと言われています。
具体的には、
ストレス性潰瘍や十二指腸潰瘍などの危険性があります。
このような潰瘍を生じても痛みを感じないことが重症化を招くことにつながります。
異所性骨化
異所性骨化は、弛緩性麻痺にある股関節や膝関節に骨化が生じる現象です。
骨化は炎症を起こすだけでなく、重篤な関節可動域制限をきたすことがあります。
原因は不明でありますが、
「受傷早期の下肢の非愛護的な取り扱い」
が発症の要因となっているようなので、感覚がないからといって、粗雑に扱ってはいけません。
まして、理学療法士などの専門家はきちんと熟知した上で治療を行う必要があります。
脊髄損傷のリハビリテーションの記事はこちら
→脊髄損傷のリハビリテーション「関節可動域訓練」の目的や方法は?
→脊髄損傷におけるリハビリテーションに必要な評価項目とは?ASIAって?
排尿障害
脊髄損傷によって、膀胱機能の直接的な低下が生じます。
バルーンの留置などによって排尿を行う場合も多いですが、
機器の清潔を保たなければ、
尿路感染さらには、敗血症などへ発展し、命の危険もあるため、注意が必要です。
褥瘡(床ずれ)
褥瘡とは、長時間同一姿勢でいることで、
支持面と身体との間で生じる持続的な圧迫が生じ、
血流が減少・消失し、組織の壊死を起こすのです。
褥瘡に関する詳しい記事はこちら
→脊髄損傷の合併症である「褥瘡」の原因や対策は?
好発部位は、骨の突出部で、
踵や仙骨などには特に注意が必要です。
脊髄損傷の中でも、一度発生すると、治療に苦渋するとともに、積極的なリハビリテーションにも支障をきたすため、
その予防や指導には十分気をつける必要があります。
脊髄損傷に関する記事はこちらもどうぞ
→脊髄損傷における主要残存筋と、その機能とは?
→脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力とは?
まとめ
今回は、脊髄損傷の合併症について解説しました。
直接的に発症した症状よりも複雑で、厄介なものも多いです。
むしろそれらの合併症の方が、命の危険もある恐いものが潜んでいると言っても過言ではありません。
適切な身体管理が、予後を左右するということは言うまでもありません。
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