脊髄損傷の合併症である「褥瘡」の原因や対策は?

    
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脊髄損傷は、

損傷で生じる身体障害や後遺症のみならず、

様々な合併症が発生します。

その中の一つに「褥瘡」があります。

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「脊髄損傷」は、

“脊柱の中を通る脊髄の損傷”

です。

 

 

受傷機転には、

交通事故や転倒・転落、スポーツ外傷などの外力によるものと、

脊髄腫瘍や椎間板ヘルニアなどの内的な要因によるものがありますが、

圧倒的に、外力によるものが多いです。

詳しくはこちら
脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?

 

 

脊髄損傷は、損傷の程度や部位によって、

「完全損傷」
「不全損傷」

に大別できます。

脊髄損傷における完全麻痺と不全麻痺の判定方法は?
脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力とは?

 

 

いずれの場合にも、損傷レベルに応じた、

運動麻痺や感覚障害、さらには膀胱直腸障害などの症状が発生します。

この中でも、感覚障害は、脊髄損傷の合併症の一つである

「褥瘡」の発生要因の一つになります。

脊髄損傷の合併症はこちら
脊髄損傷の合併症とは?褥瘡や異所性骨化に注意!

 

 

「褥瘡」は一度発生すると、

治療のケアに苦渋し、リハビリテーションの進行を阻害する因子として十分に注意しなければなりません。

そこで今回は、脊髄損傷の合併症である「褥瘡」の原因や対策について解説します。

「褥瘡」とは?

褥瘡とは、

別名「床ずれ」とも言われるように、

臥床や同一姿位による持続的な圧迫が身体に加わることで発症します。

 

持続的な組織の圧迫によって、

組織の血流が減少し、虚血状態に陥ることで低酸素状態となり、

組織の壊死に発展するのです。

 

寝たきりで自分で動けない場合や、

感覚障害で痛みに気がつかない場合などは要注意です。

まあ、好発部位として骨の突出部位が挙げられ、

仙骨部などは特に要注意です。

 

 

原因や対策は?

 

(1)運動麻痺や感覚障害に起因するもの

一般に褥瘡は、2時間の持続的な圧迫で発症すると言われています。

(もちろん圧迫の程度によって異なります)

脊髄損傷では、運動麻痺や感覚症状が生じることで、

自分で姿勢を変えられない、または、痛みに気がつかないことが問題です。

 

対策として、2時間に一度を目安に体位交換を行います。

特に仙骨や踵などが持続的に圧迫を受ける背臥位は避けて、半側臥位などが望ましいです。

無論、リハビリテーションなどを行い自分で動ける能力を獲得したら、

自分での寝返りや、車椅子上でのプッシュアップ動作を指導します。

 

 

(2)低栄養に起因するもの

低栄養状態は、褥瘡形成を早めるとともに、難治性につながります。

貧血や低タンパク血症、鉄や亜鉛、ビタミンの減少などは要注意です。

 

対策としては、栄養士などによる栄養管理や、

食事の摂取量などのコントロールを行います。

 

 

(3)皮膚の不衛生に起因するもの

尿や便の失禁により、

皮膚が水分を含んでいる状態は褥瘡の状態を引き起こしやすいのみならず、

細菌などの感染症を招きやすいので注意が必要です。

 

対策としては、

おむつ交換などの排尿・排泄管理を十分に行います。

陰部のみならず全身的な皮膚の清潔を保つことが重要です。

 

 

(4)マットやシートの固さに起因するもの

褥瘡は2時間の持続的な圧迫が一つの発生の目安の時間と言われています。

しかしながら、圧迫の圧が強ければ強いほどこの時間は短縮されます。

そのため、普段寝ているベッドマットや、車椅子のクッションなどの固さが褥瘡発生のリスクとなります。

 

対策としては、褥瘡予防シーツやマットレスを使用すること、

車椅子にはロホクッションやウレタンフォームなどのクッションを使用することが推奨されます。

ちなみに褥瘡が発生する圧力の最低値は、

「32mmHg」と言われており、この数値を下回る必要があります。

しかしながら実際には、この数値を下回るよう圧をコントロールするのは難しく、

40〜50mmHgが一つの目安とされています。

 

 

(5)全身状態の悪化に起因するもの

呼吸や循環など全身状態の悪化は、

寝たきりの要因となるとともに、局所の血流不全などを招きます。

さらに、関節拘縮などにより不良姿位が強まると、骨の突出部位などが圧迫されやすい状態を作りやすくなります。

 

対策としては、全身状態悪化の原因を早期に改善することです。

さらには不要な臥床を予防するため、リハビリテーションの中でも早期離床を図り、関節拘縮などを防止することが必要です。

 

 

 

まとめ

今回は、脊髄損傷の合併症である「褥瘡」の原因や対策について解説しました。

褥瘡の発生は、全身状態を悪化させる要因となるとともに、

治療期間中はリハビリテーションの進行を阻害することで、さらなる全身状態の悪化や体力低下などを引き起こす悪循環の要因となりやすいです。

医師や看護師のみならず、様々な職種がチームとしてケアしていく視点が非常に重要となります。


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