大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容は?期間はどのくらい?
大腿骨頸部骨折は、わが国でも年間10万人以上の高齢者が受傷している骨折です。
脳血管障害や認知症とともに、三大寝たきりの原因の一つです。
しかしながら昨今では、リハビリテーションの早期介入によって、一概に「寝たきり」という図式は成り立たなくなっているようです。
それだけ、術後のリハビリテーションの重要性が認識されています。
大腿骨頸部骨折は、股関節の付け根の部分にあたる「大腿骨の頸部の骨折」です。
構造上の脆さと、高齢者特有の骨粗鬆症が相まって、軽微な転倒などによって容易に骨折をきたします。
大腿骨頸部骨折の治療方法は、【手術療法】が主となります。
画像診断をもとに重症度分類がなされ、
・人工骨頭置換術
・骨接合術
などの手術が施行されます。
→大腿骨頸部骨折の手術療法の種類は?人工骨頭置換術とは?
→大腿骨頸部骨折の診断や分類方法は?Garden分類とは?
手術療法による治療もさることながら、手術後のリハビリテーションは、
寝たきりを予防することのみならず、今後の歩行能力などの日常生活動作能力を左右する重要な要素です。
そこで今回は、大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容や、その期間について解説します。
大腿骨頸部骨折に関する詳しい記事はこちら
→大腿骨頸部骨折とは?原因や症状は?治療方針は?
Contents
大腿骨頸部骨折のリハビリテーションの目的は?
大腿骨頸部骨折のリハビリテーションの目的は、第一に日常生活の再獲得です。
下肢の骨折のため、その中核は【歩行獲得】と言っても過言ではないでしょう!
リハビリテーションを進めていくためのポイントは、以下の点です。
・早期離床
・疼痛のコントロール
・下肢の関節可動域の向上や筋力強化
・歩行の獲得
・日常生活動作獲得
リハビリテーションでは、上記の点に着目して、訓練内容を立案していきます。
冒頭にも記載したように、過去には、
「大腿骨頸部骨折=寝たきり」の図式が成り立っていました。
高齢者が受傷することが多く、術後の不要な安静や不動は、全身的な体力低下や認知機能低下を招きます。
昨今のリハビリテーションでは、術後翌日から座位訓練や立位訓練が開始されます。
人工骨頭置換術、骨接合術いずれの場合も翌日より全荷重が許可されることが多く、疼痛に合わせて歩行訓練を行うことも可能です。
大腿骨頸部骨折のリハビリテーションの実際
実際の訓練内容とは、どのように進めていくのでしょうか!?
※必ずしもこれが全てではありませんが、一例として参考にしてみてください。
関節可動域訓練
手術後は、手術侵襲により腫脹や熱感、疼痛などにより不動をきたしやすいです。
長い間不動を呈すと、皮膚を皮切りに徐々に修復が始まります。
完全に瘢痕化する前に、股関節を中心とした関節可動域の拡大を目指します。
疼痛が関節可動域の制限因子になることも多く、他動運動の際にも防御的な筋の収縮を抑制しながら行う必要があります。
また、自分で動かせる場合は、ストレッチや下肢の屈伸運動など積極的に行いましょう。
ただし、人工骨頭置換術は人工股関節全置換術と同様【脱臼リスク】に注意をしましょう!
→人工股関節全置換術後の脱臼の原因や時期は?
筋力増強訓練
手術後は、腫張や疼痛のみならず、筋肉自体にも侵襲が加わります。
特に人工骨頭置換術では、股関節深層の外旋筋の切除をはじめとして、股関節の安定に寄与する筋肉の出力不全が生じています。
立位や歩行の際にしっかりと支えることが出来るように積極的に行っていきます。
大腿四頭筋セッティングや下肢伸展挙上(SLR)は術後早期からも実施可能です。
【大腿四頭筋セッティング】
【下肢伸展挙上(SLR)】
立位・歩行訓練
人工骨頭置換術では、術後翌日から全荷重が許可される場合が多いです。
(骨接合術は免荷期間が設けられることもあり、執刀医の方針によります。)
平行棒などを利用して徐々に下肢に荷重をかけ、下肢での支持力を高めていきます。
必要があれば、歩行器や杖などを使用しながら歩行獲得を目指します。
大腿骨頸部骨折のリハビリテーション期間は?
大腿骨頸部骨折に限らず、リハビリテーションに必要な決められた期間というものはありません。
本人の望む目標(ゴール)と、現状の能力、社会的な理由(金銭面)によって異なるものです。
また、主治医や病院の方針で、とにかく時間をかけて治すこともあれば、在院日数を短くするために早期退院を目指すなど様々です。
しかしながら、多くの場合が高齢者ということもあり、
平均的に見ても歩行の再獲得までは1ヶ月〜2ヶ月程度の日数は要するのが個人的な印象です。
まとめ
今回は、大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容や、その期間について解説しました。
リハビリテーションの成果も回復までに要する期間も、まず重要なのは【本人のやる気】です。
これなくして良好な回復は望めないと言えるでしょう。
特に術後は痛みも強く精神的にも苦しい時期ではありますが、目標を持って取り組んでいけると良いですね。
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