大腿骨転子部骨折に合併する小転子骨折とは?リハビリは進めるべき?
大腿骨の「小転子」は、
単独で骨折することは非常に稀であり、
主として、「大腿骨転子部骨折」に合併します。
「小転子」は、下肢における重要な筋である【腸腰筋】の付着部位となります。
大腿骨の「小転子」は、
股関節の付け根のすぐ下、
かつ内側に存在する小さな突起です。
この部位には、体幹と下肢を連結する
【腸腰筋】の付着部位となります。
小転子の単独骨折は非常に稀であり、
時には、腸腰筋の牽引による剥離骨折を生じることもあります。
しかしながら多くは、「大腿骨転子部骨折」に合併して損傷します。
このような場合、大腿骨転子部骨折に対する骨接合術では、
小転子まで整復できない場合があります。
→大腿骨転子部骨折とは?手術の種類は?骨接合術ってどんな手術?
→大腿骨転子部骨折に対する骨接合術「CHS法」や「ガンマネイル法」とは?
そのような場合、
骨片が剥離もしくは遊離している小転子に更なる牽引力が加わるような腸腰筋の収縮を促していっても良いのでしょうか!?
また、その際にリスクなどはあるのでしょうか!?
大腿骨転子部骨折に小転子骨折が合併するケース
小転子骨折は、単独で生じることは少なく、
大腿骨転子部骨折に合併することがあります。
大腿骨転子部骨折の重症度分類であるEvans分類で言うと、
以下のようなタイプか、
または、Type 2が該当しやすいです。
→大腿骨転子部骨折の診断や分類方法は?Evans分類って何?
骨接合術による整復が困難な場合が該当し、
小転子の骨片は剥離、または骨片が組織内に遊離する形となります。
それでも、医師からの指示では、
“全荷重での立位・歩行”
“SLR(下肢伸展挙上)の習得””
といった処方が出されることがあります。
不安定な小転子に対して、腸腰筋の強力な収縮を促せば、
容易に骨片が引っ張られ、さらなる転位が予想されます。
このような場合には、指示通りに運動療法を進めていっても良いのでしょうか!?
腸腰筋の筋発揮がもたらすリスク
上記のような処方が出た時に、
“SLRの獲得”は、主動作となる筋が腸腰筋であることは容易に気がつくため、
行おうか、どうしようか悩むことがあるでしょう。
または、行おうと思っても出力が出せないケースが多いのではないでしょうか!?
一方で、”全荷重での立位・歩行”は、
「特にリスクがないんじゃないか」と思いますよね。
しかしながら、立位や歩行などの起立位における腸腰筋の役割は、股関節の屈曲ではなく、
「骨頭を前方から後方に向かって押し込む作用」
が中心となります。
このことにより、股関節の安定化を図っているのです。
そのため、このような機能を引き出すような立位や歩行は、
反対に骨盤の前傾または、股関節の屈曲姿勢といった代償活動を招きやすいとも言えます。
どのように運動療法を進める?
まずは、上記のような小転子に強い負荷がかかる運動を控えることです。
特に注意が必要なのは、骨片との連続性がある場合で、
安易な使用が骨片を完全に遊離させることもあるからです。
ただし、安静が招くリスクとも天秤にかけなければならず、
できるだけ小転子に負荷をかけないように動いていかなければなりません。
おおよそ2〜3週程度で、
完全に遊離している骨片なども脂肪組織内で癒着などによる安定が得られるとされています。
実際にこのあたりから腸腰筋の出力が上がってくることも確認できるはずです。
→大腿骨頸部骨折や転子部骨折の保存療法のポイントは?
→大腿骨転子部骨折術後に生じるテレスコーピングやカットアウトとは?
まとめ
大腿骨転子部骨折に合併する小転子骨折について、
運動療法の進め方なども踏まえて解説しました。
このような判断を行うには、最低でもレントゲン画像を読み取る技術が必要ですね。
また、患者の筋の出力の低下具合や疼痛などから総合的に判断できる観察力が必要であることは言うまでもありません。
スポンサーリンク