前十字靭帯損傷の保存療法とは?
前十字靭帯損傷は、若年者に好発するスポーツ外傷です。
前十字靭帯の損傷後は、
・保存療法
・手術療法
とがありますが、
保存療法の場合、どのような治療を行うのでしょうか!?
前十字靭帯は、
“大腿骨の後方から、脛骨の前方へ斜走する靭帯”であり、主にスポーツなどの激しい運動によって損傷することがあります。
受傷機転は、ジャンプ後の着地や急激な方向転換、タックルなどがあり、
脛骨の前方移動の強制や、内旋方向への回旋ストレスによって受傷します。
前十字靭帯損傷の詳しい記事はこちら
→前十字靭帯損傷とは?受傷機転や症状、その治療方法は?
前十字靭帯損傷の治療方法は、
・保存療法
・手術療法
に大別されます。
前十字靭帯損傷の手術療法はこちら
→前十字靭帯損傷に対する手術療法!STG法やBTB法とは?
スポーツなどへの競技復帰を目指す場合は、ほぼ全例に手術療法が適応になります。
損傷した靭帯は、血行不良などの要因から自然治癒は難しいとされています。
それでも、通常の歩行などの軽い運動などの生活レベルを有する者であれば、
保存療法が適応となる場合があります。
そこで今回は、前十字靭帯損傷の保存療法について解説します。
前十字靭帯損傷の保存療法とは?
前十字靭帯損傷に対して保存療法が適応となるのは、
日常生活レベルの活動量を有するもので、スポーツなどの競技復帰の場合は手術療法が適応となります。
もちろん、入院費や手術日がかからないというメリットはありますが、
それ以上にデメリットもあるので注意が必要です。
保存療法のデメリット
保存療法を行うということは、
前十字靭帯は機能を失っているということです。
そのような状態で生活を続けたばあい、
・膝崩れ(giving way)を起こす
・運動に伴う膝の不安定性がつきまとう
そして、これらの状態が継続することで、
【半月板損傷】や、将来的に【変形性膝関節症】を高頻度で合併するということです。
このようなデメリットがある中で保存療法を選択するか否かは、専門医に相談の上、判断するのが良いと思われます。
保存療法の実際
保存療法が適応となる場合、一体どんなことが行われるのでしょう!?
ポイントとなるのは、
【膝の不安定性を引き起こさないように注意しながら、筋力強化によって膝の安定化を図る】
ということです。
大抵の場合、膝サポーターを使用し、膝の不要な動揺を抑制した中で、
・関節可動域訓練
・筋力増強訓練
などを行い、膝関節の機能の維持・向上を図ります。
→前十字靭帯損傷における装具療法とは?DONJOYの役割や費用は?
しかしながら、受傷後早期は、強い疼痛や、腫脹が残存しているため、アイシングなどの炎症の緩和が必要です。
急性期が過ぎ、炎症症状も消炎し膝の関節可動域がある程度回復した頃より、筋力増強訓練を開始します。
膝関節の安定性を得るには、膝関節の周囲筋である大腿四頭筋の筋力訓練が効果的です。
中でも内側広筋は膝完全伸展〜屈曲15°域で発揮し、膝の安定に有効であるとされています。
自己訓練として行える方法としては、
・下肢伸展挙上(SLR)
・Quad setthing
などがあります。
下肢伸展挙上(SLR)
Quad setthing
しかしながら、これらの筋はあくまで前後方向に関しての膝関節の安定です。
残念ながら回旋方向に関しては、膝関節に制動する筋は存在しません。
いくら、日常生活レベルといえど、回旋方向への運動が加わることは容易に想像できます。
そのためには、膝のみならず、
・足部や股関節のストレッチ
・脊柱の可動性改善
などにより、身体に生じるモーメントを膝で受けるのではなく、他の部位で吸収できるよう柔軟性を改善する必要があります。
ただし、このようなレベルの運動となると、理学療法士などの専門家による指導が必要です。
保存療法とはいえど、適切に行うためには、外来通院でリハビリテーションを受けるなどの対策は必要です。
前十字靭帯損傷のリハビリテーションはこちら
→前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法は?
まとめ
そこで今回は、前十字靭帯損傷の保存療法について解説しました。
前十字靭帯損傷に対する保存療法は、回復に向けた積極的な治療とは言い難いものの、何らかの理由で手術ができない、必要がない人にとっては有効な治療と言えるでしょう。
ただし、幾つかのデメリットもあることを念頭に入れてリハビリテーションに取り組みましょう。
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