人工膝関節置換術(TKA)後もスポーツは出来る?行っても良いスポーツとは?
人工膝関節置換術後の患者から聞かれる言葉の中に、
「スポーツはしても良いの?」
という問いがあります。
人工膝関節置換術後もスポーツを行うことは可能なのでしょうか?
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)とは、
変形性膝関節症や関節リウマチによる膝関節の変性に対して行われる
標準的な手術療法です。
主な効果としては、
“除痛”が挙げられ、歩行を始めとした日常生活活動動作の改善に寄与します。
無論、歩行のみならず階段昇降なども改善が期待できる対象になりますが、
それ以上に激しい運動、いわゆるスポーツなどは行えるようになるのでしょうか?
事実、これはTKA後の患者から多く質問される事柄の一つでありますが、
競技特性を考えると一概に一つの答えに結びつけることは困難です。
また、単純に疼痛が軽減し、歩行をはじめとする動作が改善できるのであれば行えるようになるだろうと思うのが当然でしょうが、
人工物がゆえに、必要以上の酷使は耐用年数を縮めることや、高い強度での運動が骨折や脱臼などのリスクに直結することさえあるのです。
そこで今回は、TKA後のスポーツ活動において推奨される運動や行えない運動などにはどのようなものがあるのかを紹介します。
TKA後にスポーツ活動は行っても良い?
まずは、
「TKA後にスポーツ活動は行っても良い?」
という問いから始めてみましょう。
TKAは、
・人工関節に加わる力学ストレスによる摩耗や破損などのリスク
・転倒や衝撃などによる骨折等のリスク
の二つのリスクの面でスポーツ活動の是非を考えなければなりません。
反対に言えば、これらのリスクが最小となるものであれば行っても良いという判断にもなるかもしれません。
実はこれらに関して、明確な基準となるものは報告はされていません。
しかしながら最も参考になりうるものとして、
Healyらによる人工膝関節に精通した医師らによるアンケートを元に作成したガイドラインが存在します。
(Athletic activity after total joint arthroplasty.Healy WL1, Sharma S, Schwartz B, Iorio R.J Bone Joint Surg Am. 2008 Oct;90(10):2245-52. doi: 10.2106/JBJS.H.00274.)
このガイドラインには、
○行っても良いスポーツ
△十分に注意して行うスポーツ(経験のあるもの)
×行ってはいけないスポーツ
に分類されています。
○行っても良いスポーツ
・サイクリング(屋内固定型)
・ウォーキング
・テニス(ダブルス)
・水泳
・クロケット
・ホールダンス
・ゴルフ
・射撃 等
△十分に注意して行うスポーツ(経験のあるもの)
・低衝撃エアロビクス
・サイクリング(屋外)
・ボウリング
・ハイキング
・乗馬
・クロスカントリー
・カヌー
×行ってはいけないスポーツ
・衝撃の激しいエアロビクス
・サッカー
・ラグビー
・ジョギング
・バレーボール
・バスケットボール
・ハンドボール
・ホッケー
・ラクロス
・ロッククライミング
・テニス(シングルス)
・器械体操
・野球
・ソフトボール
まとめ
今回は、TKA後のスポーツ活動において推奨される運動や行えない運動などにはどのようなものがあるのかを紹介しました。
ただし、これらは長期成績に関しての調査は含まれておらず、それらは不明でありエビデンスはないとしている。
行ってはいけないスポーツというのは、明らかに接触を伴うものや、強い走行や跳躍を伴うものが含まれており、容易にリスクが高いことは想像できます。
これが現在の人工関節に対するスポーツのあり方の考え方の基本であり、人工関節に強い衝撃が加わることや、予測不能の運動が生じないことが前提であると思われます。
ただし、人工関節に対して適度な力学的負荷を加えることはインプラントの固定性を高めることが期待できるとも言われており、やはり必ずしも全てを否定するものではなく、種目を選ぶ必要があるということです。
事実、ゴルフなどへ復帰される方は多く、それを目的に人工関節置換術を受けに来る人も少なくありません。
これらの点に関しては年齢や個々の運動能力や性格など多様な面が影響するナーバスな問題であり、必ず執刀した主治医の意見を参考にする必要があると思います。
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