人工股関節全置換術(THA)後は足が長く感じる?リハビリで治るの?
人工股関節全置換術(THA)を施行された患者からよく聞かれる訴えの一つに、
「足が長くなった気がする」
という事があります。
これって手術のミスじゃないのかと気にされる人も沢山いますが、
多くの場合、それはミスではありません。
人工股関節全置換術(THA)とは、
変形性股関節症や関節リウマチなどによって変性した股関節に対する標準的な手術療法です。
日本では膝関節に次いで多く行われている人工関節置換術であり、比較的満足度の高い手術と言えます。
疼痛の軽減はもちろんのこと、関節可動域の改善や歩行能力の改善が見込まれ、日常生活活動のみならず、生活の質(QOL)の改善にも期待できます。
そんなTHAにおいても術後は関節を動かしたり筋肉を強化したり、歩行訓練を行ったり、機能改善に向けたリハビリテーションが行われます。
→変形性股関節症や人工股関節全置換術後のリハビリテーションとは?
そんな中、術後初めて地に足をつけて歩く患者からよく聞かれる質問の一つに、
「足が長くなった気がする」
という事があります。
そう!手術した側の足が長く感じるのです。
これは本当に多い訴えなのです。
基本的に手術のミスや致し方ないものでない限り左右の足の長さは均等に整えられます。
今回はそんなTHA後に足が長く感じてしまう原因や改善に向けたリハビリテーションについて解説します。
術前の足の長さがそもそも違う?
外科的な手術の場合、基本的には左右の足の長さが均等になるように計算され人工関節が挿入されます。
(必ずしもそうならない場合もありますが)
となると、
基本的に左右の足の長さは同じはずなのですが、術側だけは伸びたように感じるのです。
ここで考えなければならないのが術前の状態です。
基本的に変形性股関節症の場合、大腿骨と骨盤で形成される関節裂隙が狭小化したり、大腿骨の頸部と呼ばれる部分が短縮する事があります。
この時点で構造上、反対側の足よりもすでに短い足になっているのです。
また、例えば股関節が変形や可動域制限、痛みにより伸ばせない場合にはやや曲がった状態で歩くことになります。
この場合においても、床面から股関節の部分までの鉛直方向の長さは短縮しており反対側の足よりも短い状態なのです。
つまり、術前においては大抵の場合、術側の足が短いのです。
さらに片方の足が短い場合、歩行するときには足が床に接地しなければ支えられないので、
大抵の場合、術側の骨盤を傾けて(下げて)適応します。
このような状態で長い期間を経ると骨盤が傾いた位置が不可逆的な固さになってしまう事があるのです。
術後に足が長く感じるのはなぜ?
さて、前述したように外科的な手術では左右の足の長さが同じになるように調整されます。
また、術前には術側のとなる側の足が短くなること、必要に応じて骨盤を傾けて調整することを解説しました。
つまり、THAの手術では、もともと短くなっていた下肢を、反対側の下肢と整えるように調整する分、
若干ではありますが伸びることがあるのです。
加えて、もともと短い足を補正しようと骨盤の傾斜(術側骨盤の下制)を行なっていた分は、
手術によって侵襲や修正を受けることはないので、反対の下肢よりも長く感じてしまうこともあるのです。
特に手術直後などは、下肢の延長分だけ筋肉や皮膚が伸ばされたりするためより敏感に身体は長くなったと信号を起こります。
加えて、見た目の感じでも骨盤の傾斜の分、術側下肢が長く見えるので気持ち的にもよりそう感じてしまうことも少なくありません。
さて、このような状態は改善できるのでしょうか?
術後のリハビリで修正はできる?
「足が長く感じる」
というのは、特に手術の後や、足を着いて歩き始めるようになった時に感じることが多いのです。
これは、まだ筋肉や皮膚、ひいては脳までもが新しい関節に馴染んでいないため違和感を感じるためでもあります。
このような状態でもリハビリテーションの中で、筋力を使いながら関節を動かしたり、荷重の感覚を掴んでくることによって改善されます(ほぼ間違いなく)。
基本的に反対の足の長さと同じなため、とりわけ問題なく経過が進むことで違和感もなくなります。
ただし問題なのは、骨盤の傾斜が残存する場合です。
あまりにも長く代償的に骨盤を傾斜させていた場合、
それを運動などによって修正することも難しく不可逆的になる場合があります。
この場合はいつまでも術側の下肢が長い状態が続いてしまうます。
そのような場合には靴の中にインソールを入れたり、補高と言って足底に高さをつけることによって補正することも出来ます。
必ず主治医や理学療法士などの専門家に相談しましょう。
スポンサーリンク