人工股関節全置換術(THA)の脱臼予防の外転枕はいつまでするべきか?
人工股関節全置換術(以下:THA)は、
変形性股関節症や、突発性大腿骨頭壊死に対する標準的な手術療法です。
荷重時に生じる疼痛の軽減が見込まれ、
日常生活動作の大きな改善が得られますが、
手術手技によっては、「脱臼」のリスクが伴います。
THAは、
荷重時の疼痛の改善をはじめとして、
関節可動域の改善により靴下の脱着など、様々な日常生活動作に改善が見込まれます。
しかしながら、
THAは手術手技によっては、ある特定の方向へ可動させた際に「脱臼」のリスクが伴います。
その手術手技とは、
人工関節を入れる方向によって、大きく分けて
・前方侵入
・後方侵入
があり、「後方侵入」の場合には特に注意が必要です。
THAの侵入方向における脱臼のメカニズムなどに関しては、
以下の記事を参照して下さい!
病院で手術を行った場合、
脱臼管理に関して多くの指導を受けると思いますが、
その中でも重要な脱臼予防の方法として用いられるのが、
「外転枕」です。
今回は、この「外転枕」を退院後も含めてどのくらいの期間使用するべきなのかについて考えます。
外転枕って何?
そもそも「外転枕」はどのような効果があるのでしょうか?
「外転枕」は、
両下肢の間に挟み、脱臼方向である股関節の“内転(ひいては内旋)”を防止するための装具(クッション)です。
※脱臼リスクのある運動方向に関する記事はこちらを参照して下さい
→人工股関節全置換術後の脱臼の原因や時期は?
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上記の画像の「外転枕」は、
仰向けで寝る場合に両下肢を外転に保持するためのものですが、
以下のように横向きになって場合にも外転位を保持できるくぼみ型のタイプもあります。
実際に外転枕で長い間外転位を保持していると、
仰向けが続いて腰が疲れるなどどうしても横向きになりたいときに大変便利です。
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ただし、実際に病院などを退院した後に自宅で用いるものは、
やや大きめの枕で代用する場合がほとんどです。
脱臼リスクが高い時期は?
以下の記事の中でも記載していますが、
股関節の脱臼は時期によって発生頻度も異なります。
術後の脱臼が生じやすい時期としては、
1ヶ月以内が70%(Williams)
3ヶ月以内は59%(Woo & Morrey)
4ヶ月以内が89%(Lweinnek)
と報告されています。
著者や国ごとに様々な報告がありますが、ほとんどの脱臼は「術後3ヶ月以内に起こる」とされています。
この原因としては、
“切開された筋や関節包の強度が未熟であること”が挙げられます。
ただし、最近では医療技術の進歩によって脱臼のしにくいインプラントや手技の向上などによって、
さらに発生頻度は減少傾向にあるのは間違いないです。
結局のところ、「外転枕」はいつまで使う?
「外転枕」を退院後も含めてどのくらいの期間使用するべきなのかについて、
明確な決まりはありません。
それは、人によっても修復の過程が異なることや、
そもそも脱臼のしやすさにも個人差があるからです。
また、夜間の寝相が悪く、すぐに足が様々な方向に動いてしまう人や、
認知症のように脱臼管理を行わなければならないことそのものを忘却してしまう人は脱臼リスクが高いとも言えるでしょう。
あえて、それらのことを踏まえた上で必要な期間を考えると、
最低:3ヶ月
最高:一生
というのが一つの見解です。
前述したように修復過程の問題で3ヶ月以内はリスクが高いので必要となるでしょう。
その後は、「外転枕」を使用しなくても寝相もよく、自分で管理ができるという人は使用しなくても良いかもしれません。
反対に、どうなってしまうか分からないという人や、そういった心配事を常にすることが神経を使うと思えば一生使えば良いのです。
まとめ
今回は、この「外転枕」を退院後も含めてどのくらいの期間使用するべきなのかについて見解を述べました。
“一生使う”
これで納得できる人は使うことである程度の安全が保証されるので使う方が良いと思います。
しかしながら、文中で述べたように脱臼のしやすさは人によって異なります。
必ず手術を行った医師の指導を仰ぎ、必要か不必要かの判断を行って下さい!
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