「自家培養軟骨 ジャック」とは?リハビリテーションは必要ない?その意義とは?

    
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iPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見から、およそ10年になります。

昨今でも様々な方法での「再生医療」が注目を集め、

臨床応用に期待がかかっています。

この再生医療は、中枢神経系の改善のみならず、すでに軟骨再生に関する再生医療公的医療保険下で始まっていることをご存知でしたか!?

 

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「自家培養軟骨 ジャック」

これは、広島大学の整形外科医“越智教授”らが開発した軟骨移植法です。

 

関節の軟骨には血管が存在していないので、

損傷が生じた際の自己再生力に乏しいです。

自然修復はほぼ困難と言われています。

 

このような軟骨に対して、

患者自身の軟骨細胞を体外で培養し、

再び患者自身へ移植することで軟骨再生が促され、修復が進行します。

 

これまでの報告では、外傷性軟骨欠損症離断性骨軟骨炎に適応があるとされています。

軟骨変性によって生じる代表的な疾患の一つに、変形性膝関節症がありますが、

変形性膝関節症のような広範な軟骨変性には不向きのようです。

変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?

 

このような自家培養軟骨を「ジャック」と称した製品として開発され、

2013年4月より医療保険での適応となり、

全国でおよそ190もの認定医療機関で治療を受けることが可能です。

 

まるで夢のような効果をもたらす再生医療ですが、

この治療を受けることで全て良しとなるのでしょうか!?

再生医療後にリハビリテーションは必要か?

「再生医療は万能か…?」

様々な方法での再生医療がすでに現実的に行われたり、研究段階でもある程度の成果を上げています。

 

再生医療自体、当初は根治療法として期待されていましたが、

昨今のようにある程度その効果が見えてきた今、細胞治療後におけるリハビリテーションの重要性が示唆されています。

 

その効果や役割として、

1、治療効果の促進

2、再発の防止

が挙げられます。

 

1に関しては、運動と併用することの効果として、中枢神経系に対しては、神経ネットワークの促進を、整形系では荷重などの物理的な刺激が骨の再生を促通することが報告されています。

2に関しては、身体全体を見たときに再生医療にて補えない部分に関して、再発予防に向けて装具療法との組み合わせや、筋のアンバランスの調整などの有効性が示唆されます。

 

よって、必ずしも再生医療そのものの効果だけではなく、

リハビリテーションとの併用によってその効果も大きく飛躍する可能性があるのです。

 

 

 

「自家培養軟骨 ジャック」リハビリテーションの意義や方法とは?

では、実際に「自家培養軟骨 ジャック」などの場合、その後のリハビリテーションはどのように考えれば良いのでしょうか!?

 

移植した関節軟骨は成熟するまでに時間を要すため、

過剰な負荷は制限する必要があります。

 

その上で、時期がきたら適切な負荷(循環の促進や荷重)を施していく必要があります。

このように時期によって行うべきリハビリテーションが異なるのです。

 

以下に移植軟骨の成熟度に応じた生物学的な4つのフェーズに関して記載します。

 

 

増殖期(0〜6週)

増殖期とは、移植細胞が生着する時期です。

 

この時期には、CPMを用いたり、他動的な関節可動域訓練などによって、

関節内の循環を促通し、移植部位への栄養の供給と、代謝を促す必要があります。

 

また、早期からの部分荷重訓練などにより、

適度なメカニカルストレスを付与し、骨再生を促通します。

超音波などを併用することで、安全にメカニカルストレスを付与することも可能です。

 

 

移行期(6〜12週)

移行期は、まだ移植軟骨自体が脆弱であるものの、

部分荷重から徐々に全荷重へと移行していく時期です。

ただ、リスクを伴うため、過剰なメカニカルストレスは避ける必要があります。

「部分荷重訓練」とは?その目的や効果とは?

 

 

リモデリング期(12〜26週)

リモデリング期は、細胞外マトリクスの再生や再構築がより活発に行われます。

それに合わせて移行期よりも、より高負荷な運動が必要となります。

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成熟期(26〜52週)

成熟期では、移植軟骨は周囲組織とほぼ同等の強度にまで成熟するため、

競技レベルを目的とした運動負荷も可能です。

個々の能力に合わせた運動能力の獲得を目指します。

 

 

 

まとめ

今回は、「自家培養軟骨 ジャック」におけるリハビリテーションの意義や、その方針についてまとめました。

再生医療自体が、すでに公的な医療保険で始まっているのです。

重要なことは、再生医療そのもので完結するわけではなく、リハビリテーションが付随し、効果を促進するとともに再発予防に向けたアプローチを施していく必要があります。

そのためにも、常に最新の再生医療における動向に注目し、それぞれの特性に合わせたアプローチができるよう、理解を深めていく必要があると強く感じています。

 

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