脊髄損傷のリハビリテーション「プッシュアップ」に必要な筋とその機能とは?

    
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脊髄損傷は、

四肢・体幹の運動や感覚などを支配する神経束である

「脊髄」の損傷です。

リハビリテーションでは、残存機能に応じた動作獲得を目指します。

その中でも「プッシュアップ」動作能力は、

日常生活動作の自立のために必須の動作となります。

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脊髄損傷は、

“脊椎の中を走行する脊髄の損傷”

です。

交通事故や転倒・転落、スポーツなどによる外傷が受傷機転となります。

詳しくはこちらを参照ください!
脊髄損傷とは?原因や好発年齢は?

 

脊髄損傷は、損傷部位や損傷レベルによって様々な程度の障害が出現します。

損傷以下すべての機能が全廃するものを「完全麻痺」

損傷以下の機能が一部残存するものを「不全麻痺」と言います。

脊髄損傷における完全麻痺と不全麻痺の判定方法は?

 

 

いずれの状態においても、

日常生活動作の再獲得に向けて

【リハビリテーション】が適応となります。

損傷レベルに応じて残存機能が決まっており、

それらに応じた動作の獲得を目指します。

脊髄損傷における主要残存筋と、その機能とは?
脊髄損傷における損傷レベルごとの残存機能や能力とは?

 

 

頸髄の上位の損傷でなければ、多くの場合上肢の使用が可能な場合が多く、

移乗動作や褥瘡予防などに向けた

「プッシュアップ」動作の獲得は、もはや必須の課題と言っても過言ではありません。

そこで今回は、脊髄損傷のリハビリテーションの主要課題の一つ、「プッシュアップ」に必要な筋とその機能について解説します。

気になる脊髄損傷の再生医療はこちら
脊髄損傷の再生医療とは?

プッシュアップとは?

脊髄損傷者にとって、

「プッシュアップ」動作は、日常生活動作の自立に向けて必須の動作と言っても過言ではありません。

・座位での移動
・移乗動作(床⇄車椅子も含む)
・車椅子上での褥瘡予防

などの場面において、必ず行わなければなりません。

 

そもそもプッシュアップってどんな動作でしょうか!?

プッシュアップとは、

「両上肢で体幹を垂直方向へ挙上し、腰部を後方へ引き上げた後、再び元に戻す一連の動作」

です。

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図のように長座位から行うこともあれば、

ベッド端に腰掛けて端座位で行うこともあります。

 

 

 

プッシュアップは4相の動作?

プッシュアップがどのような動作かは確認できました。

このような一連の動作として成り立つプッシュアップは、

4つの「相」に分類できます。

 

【第一相】両上肢で体幹を鉛直方向へ挙上する
【第二相】体幹のバランスを取りながら、臀部を後上方へ引き上げる
【第三相】腰部を最高位まで挙上する
【第四相】体幹のバランスを崩さないように、臀部を床まで下ろす

 

 

 

プッシュアップは主要な筋と機能?

頸部筋群

プッシュアップでの体移動に伴う頚椎屈曲位での伸び上げやバランスの代償を担う。
臀部を挙上する際のカウンターとして機能する。

 

僧帽筋

プッシュアップに際して、両上肢を体側に固定する。
頸部体幹を前屈させ、肩甲骨を外転位で固定する。
特に僧帽筋下部は、臀部を挙上させるための肩甲骨の引き下げに作用する。

 

広背筋

プッシュアップに際して、体幹を前屈させ、骨盤を後方に引き上げる。
この際には、僧帽筋下部繊維で肩甲骨を引き下げ、
大胸筋下部繊維や広背筋の共同作用で両上肢を支点として腰部の引き上げに作用する。

 

前鋸筋

大胸筋と共同で働き、肩甲骨の外転・外旋固定に作用する。
また、僧帽筋下部繊維と共に、体幹の引き上げにも作用する。

 

大胸筋

上腕骨を体側へ引きつけ、肩甲骨を外転・突出させる。
さらに、三角筋や烏口腕筋と共に、頭や体幹を前屈させながら、腰部の後上方への挙上を補助する。

 

横隔膜

プッシュアップ時に腹圧を高めることで体幹を有効なてこ作用として機能させる。

 

三角筋

ローテーターカフや僧帽筋と共に肩の固定に作用する。

 

上腕三頭筋

肘関節伸展位での固定や、体幹の横移動などの際に体幹自体の支持に作用する。

 

脊髄損傷のリハビリテーション記事はこちら
脊髄損傷におけるリハビリテーションに必要な評価項目とは?ASIAって?
脊髄損傷のリハビリテーション「関節可動域訓練」の目的や方法は?

 

 

 

まとめ

今回は、脊髄損傷のリハビリテーションの主要課題の一つ、「プッシュアップ」に必要な筋とその機能について解説しました。

一つ一つの筋の強化はもちろん重要ですが、

様々な筋が関わりながら、共同作用として機能するため、動作として訓練を行う必要があります。


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