大腿骨転子部骨折に対する骨接合術「CHS法」や「ガンマネイル法」とは?
「大腿骨転子部骨折」は、
大腿骨の頸部骨折と並び高齢者に頻発する外傷性の骨折です。
転倒などの軽微な外傷が受傷起点となり、
多くは【手術療法】が適応となります。
骨接合術と呼ばれる手術療法には幾つかの種類があります。
「大腿骨転子部骨折」は、
大腿骨の中でも転子間稜から小転子までの部分の骨折です。
多くは、転倒などの外傷を起点として、
高齢者に頻発する外傷性の骨折です。
高齢者に頻発するだけに、生活機能障害も大きく、
社会的・医療経済的にも非常に重要な骨折であることが指摘されています。
大腿骨転子部骨折の重症度分類には、
世界的にも【Evans分類】が用いられています。
この分類は、牽引を主体とした整復操作後のレントゲン前後像を用いて分類します。
分類された重症度によって、
保存療法または、手術療法の適応になるかが判断されます。
→大腿骨転子部骨折の診断や分類方法は?Evans分類って何?
大腿骨転子部骨折に対する手術療法は、
【骨接合術】という方法が用いられます。
ラグスクリューを用いた、
・Compression Hip Screw(CHS法)
・Gamma nail(ガンマネイル法)
が日本でも主流となっています。
いずれの手術ともにラグスクリューによる特性が、
手術成績の向上に寄与したとされています。
そこで今回は、大腿骨転子部骨折に対する骨接合術「CHS法」や「ガンマネイル法」のラグスクリューの理論などについて解説します。
→大腿骨転子部骨折に合併する小転子骨折とは?リハビリは進めるべき?
骨接合術「CHS法」や「ガンマネイル法」とは?
大腿骨転子部骨折に対する骨接合術では、
・CHS法
・ガンマネイル法
が主流となっています。
CHS法
CHS法は、遠位骨片をプレートで固定し、骨頭の固定をラグスクリューにて行う方法です。
CHS法の利点は、
・手術侵襲が少なく、比較的安定した骨折の型に適応がある
・lag screwのtelescopingにより骨折部の圧迫による癒合が期待できる
※テレスコーピング・・・荷重によりlag screwがスライディングし、骨折間に圧迫が加わること
一方で、CHS法の欠点は、
・lag screwの刺入位置の不良によって骨頭の内反変形やカットアウトを生じる
・骨粗鬆症などを有していると、ブレート端の骨折が起こりうる
などが挙げられます。
→大腿骨転子部骨折術後に生じるテレスコーピングやカットアウトとは?
ガンマネイル法
ガンマネイル法は、遠位骨片を髄内釘で固定し、
骨頭の固定はラグスクリューを用いる方法です。
ガンマネイル法の利点は、
・安定型、不安定型の療法に適応がある
・lag screwのtelescopingにより骨折部の圧迫による癒合が期待できる
・髄内に荷重軸があるため固定力が強固である
・手術手技が閉鎖的なため、感染防止に有効である
一方で、ガンマネイル法の欠点は、
・lag screwの刺入位置の不良によって骨頭の内反変形やカットアウトを生じる
・遠位の横に止めているスクリューによって大腿骨骨幹部骨折のリスクがある
などが挙げられます。
→大腿骨転子部骨折術後に生じるテレスコーピングやカットアウトとは?
ラグスクリューの特性とは?
ところでラグスクリューとは、どのような機構でどのような特性があるのでしょうか!?
CHS法、ガンマネイル法に共通して利用されているラグスクリューとは、
プレートとの接続部分にスライディング機構を要しています。
このようなスライディング機構を有していない場合、
荷重に伴う骨折部の短縮により、Cut Out(カットアウト)のリスクが高まります。
一方でスライディング機構を有している場合、
荷重に伴う骨折部の短縮によってスクリューは、遠位に移動し、近位骨片と遠位骨片がかみ合ったところで安定します。
骨癒合に関しても非常に有利であるとともに、カットアウトのリスクを軽減できます。
まとめ
大腿骨転子部骨折に対する骨接合術「CHS法」や「ガンマネイル法」とはどのようなものか!?
そして、ラグスクリューの特性などについて解説しました。
非常に画期的な特性により、大腿骨転子部骨折の術後成績は飛躍的に向上しました。
早期からの荷重も可能であり、長期の臥床に伴う二次的な障害の発生も最低限に抑えることができます。
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