大腿骨頸部骨折とは?原因や症状は?治療方針は?
近年、急速な高齢化社会を迎える本邦において、
当然のごとく高齢者の病気や怪我の絶対数が増加しています。
その中でも、「大腿骨頸部骨折」は年間約10万人以上の高齢者が受傷している骨折です。
そして、脳血管障害や認知症とともに3大寝たきり原因の一つにも数えられています。
「大腿骨頸部骨折」は、股関節の付け根の部分である、大腿骨の頸部の骨折です。
急速な高齢者の増加に比例するように、受傷者数は年々増加しています。
注目すべきは、脳血管障害や認知症とともに3大寝たきり原因の一つにも数えられている点です。
しかしながら、この骨折の治療法や看護体制なども進歩を遂げており、
【大腿骨頸部骨折=寝たきり】
の図式は今では適切ではなくなっているようです。
それでも、年間受傷者は10万人以上とされており、その多くが高齢者に多発し、
【転倒】にて受傷をしています。
もとより骨粗鬆症などが基盤にある場合が多く、軽微な外力でも容易に骨折を生じてしまうのです。
その治療法は、多くの場合が【手術療法】が選択されます。
重症度によって、様々な手術方法が選択されますが、重要なのは術後のリハビリテーションです。
積極的な手術療法と、その成績を支えるのは、リハビリテーションの発展によるもので、両者が大腿骨頸部骨折治療の両軸となります。
今回は、大腿骨頸部骨折の原因や症状、治療方針などについて詳しく解説していきます。
大腿骨頸部骨折とは?
大腿骨頸部骨折とは、股関節の付け根にあたる大腿骨の頸部の骨折です。
縦に長い大腿骨の先端にあたる「大腿骨頭」のすぐ下の細くくびれた部分が「大腿骨頸部」です。
性差や好発年齢は?
大腿骨頸部骨折は高齢者に多い疾患です。
70歳以上の高齢者において特に増加します。
性差もあり、約80%が女性です。
原因は?
大腿骨頸部骨折の受傷原因の多くは【転倒】です。
尻もちをついたり、横向きに倒れたりと、様々な方向への転倒で受傷します。
高齢者に多発することもあり、元々骨粗鬆症などによる骨の脆弱性を認める場合がほとんどです。
加えて、大腿骨の頸部はちょうど細くなっている部分で、構造的にも折れやすい特徴を持つのです。
中には、
「何もしていないのに折れた…」
なんて報告もあるほどです。
症状は?
大腿骨頸部骨折を受傷した場合、最も顕著な症状は、
【疼痛】です。
関節内の骨折であり、内出血が少なく腫脹自体は目立たないことが多いですが、よほど軽微でない限り、疼痛のために歩くことは難しいでしょう。
大腿骨頸部骨折の治療方針とは?
大腿骨頸部骨折を呈した場合、多くは【手術療法】が選択されます。
ごくごく軽微な場合は、「保存療法」が適応となる場合もありますが、以下のような理由で、手術療法が適しているのです。
・大腿骨頸部-骨頭は結構が乏しく、骨壊死の可能性あり
・剪断力に対して脆弱
・筋の張力により転移しやすい
などがあります。
稀に選択される保存療法に関する記事はこちら
→大腿骨頸部骨折や転子部骨折の保存療法のポイントは?
実際の手術の方法には大きく分けて2つの種類があります。
・人工骨頭置換術
・骨接合術(ピン・スクリュー etc…)
です。
大腿骨頸部骨折の手術療法に関する記事はこちら
→大腿骨頸部骨折の手術療法の種類は?人工骨頭置換術とは?
前者は、文字通り、人工の骨頭へ置換する方法です。
後者は、ピンやスクリューなどを用いて骨を接合する方法です。
骨折の重症度や年齢、活動度などによって、適応が分かれます。
大腿骨頸部骨折の重症度分類はこちら
→大腿骨頸部骨折の診断や分類方法は?Garden分類とは?
そして、最も重要なのは、術後の【リハビリテーション】です。
かつては、”大腿骨頸部骨折=寝たきり”と言われていましたが、手術手技の向上に加えて、リハビリテーションの発展によって、この構図はもはや成り立たなくなりました。
術後早期からのリハビリテーションの実施により荷重や歩行が進められるため、不要な不動期間が減少したためです。
大腿骨頸部骨折に対するリハビリテーションの詳しい記事はこちら
→大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容は?期間はどのくらい?
まとめ
今回は、大腿骨頸部骨折の原因や症状、治療方針などについて詳しく解説しました。
大腿骨頸部骨折は、昨今の日本にとっても、医療費や社会保障費の増加を招く重大な外傷性疾患です。
骨を丈夫にし、転倒を防ごうという高齢者に対する基本的な健康対策によって、この大腿骨頸部骨折も多くの部分が予防できると考えられます。
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