前十字靭帯損傷における手術後の再建靭帯の修復過程は?
前十字靭帯は、若年者に好発するスポーツ外傷です。
代表的な治療法としては手術療法があります。
競技復帰を目指す場合、大抵、手術療法の適応となりますが、
再建された靭帯の強度に注意が必要です。
前十字靭帯損傷は、
“大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯の損傷”で、
スポーツ外傷が大半を占めます。
受傷機転には、「ジャンプ後の着地」「急な方向転換」「タックル」などがありますが、多くは非接触性の要因が占めます。
前十字靭帯損傷に関する記事はこちら
→前十字靭帯損傷とは?受傷機転や症状、その治療方法は?
前十字靭帯損傷の治療方法には、大きく分けて
・保存療法
・手術療法
に大別されます。
前十字靭帯を損傷した後も、歩行などの日常生活動作が可能でありますが、スポーツなどへの競技復帰を目指す場合は、手術療法が適応となります。
手術療法を行う場合、自家腱を用いた靭帯再建術が行われます。
・骨つき膝蓋腱を用いたBTB法
・半腱様筋や薄筋を用いたSTG法
とがありますが、いずれの場合も再建後の靭帯は一度脆弱化したのち、再び強度を増すという特徴があり、競技復帰には時間がかかります。
また、リハビリテーションなどにおいては、再建靭帯の強度に合わせた負荷量の設定が重要となります。
そこで今回は、前十字靭帯損傷における手術後の再建靭帯の修復過程について解説します。
前十字靭帯損傷のリハビリテーションに関する記事はこちら
→前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法は?
Contents
再建靭帯は一度弱くなる?
BTB法、STG法問わず、
再建後の靭帯は、術後に一度壊死することが知られています。
この時は、再建靭帯の脆弱化により、おおよそ正常の前十字靭帯の20-30%程度の強度まで低下します。
その後、約9週以降で徐々にコツとの接合部の強度が増してきますが、術後一年の時点でも正常の前十字靭帯組織の強度までの回復しているかどうかは定かではないようです。
BTB法、STG法それぞれの手術方法はこちら
→前十字靭帯損傷に対する手術療法!STG法やBTB法とは?
再建靭帯の修復過程は?
術後に壊死する再建靭帯ですが、術後はどのように修復していくのでしょうか!?
再建後に壊死した靭帯は、その後再血行により移植腱のリモデリングが生じます。
※リモデリング:再建や再組織化
しかしながら、術後8週までの間は、移植腱と骨孔との結合部または移植腱自体の祖血性壊死が生じるために力学的強度が不十分となります。
術後9週以降となると、移植腱と骨接合部の強度が増すとともに、移植腱自体の強度も徐々に増していきます。
それでも、術後一年での再建靭帯の強度は、正常の前十字靭帯と比べると、異なる組織であり、広範な壊死部分の存在が確認されます。
このような移植腱には、コラーゲンや小径コラーゲンフィブリルで構成されていると言われています。
上記の背景によって、術後のリハビリテーションにおいても、再建靭帯の強度を考慮した負荷量設定が重要となり、実際の競技復帰は最低でも半年はかかると言われています。
前十字靭帯損傷のリハビリテーションに関する記事はこちら
→前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法は?
まとめ
今回は、前十字靭帯損傷における手術後の再建靭帯の修復過程について解説しました。
再建手術をしたら終わりではありません。
むしろ手術してからのリハビリテーションこそが前十字靭帯の治療の本当の試練となるようです。
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