CRPS(複合性局所疼痛症候群)の検査や診断方法とは?
「CRPS」は、
交感神経の過剰な活性化によって、
治療抵抗性の“疼痛”を示す疾患です。
日本名では、
【複合性局所疼痛症候群】と言います。
CRPS(Complex regional pain syndrome)とは、
骨折や外傷、筋組織の損傷や神経損傷に後発する、
疼痛が遷延する一連の症候群です。
過去には、
“カウザルギー”や“RSD”などといった呼称が用いられていましたが、
これらの疼痛関連領域の用語が、
1994年に「CRPS」と言う用語に統一されました。
これらの背景には、
整形外科領域、リハビリ領域等、各領域によって異なる呼称や定義が存在していたからです。
と言うのも、CRPSが極めて多彩な臨床症状を示すことがあり、
その定義や診断方法にもばらつきがあったためです。
現在でも、CRPSの診断に関しても特異的な検査法はないという現実があります。
では、実際にどのような検査や診断方法があるのでしょうか!?
CRPSに関する記事はこちら
→CRPSとは?原因や症状は?治療方法はある?
CRPSの検査方法とは?
現在CRPSに関する検査法はいくつか存在するものの、
実際には、CRPSを特異的に検出するものではないそうです。
異常を検知することはできても、
様々な外傷性の変化や炎症、不動化による変化を検出しているにすぎないようです。
【検査方法】
・サーモグラム
・X線写真
・MRI
・CT
・神経伝導速度
・筋電図
・骨シンチグラフィー
・皮膚温度左右差(全身交感神経刺激時)
・網羅的感覚機能評価(QST)
これらの検査に加えて現在では、
fMRIなどといった新たな検査法の試みなどが行われています。
既存の検査においても同様ですが、
“感度”そして“特異度”の両者が高検出力を有する検査法はなく、
まだまだ多くの課題を抱えているようです。
CRPSの診断方法とは?
CRPSの診断方法に関して、
【厚生労働省CRPS研究班から提唱された本邦版CRPS判定指標】
というものが存在します。
これは、患者の皆らず、医療者においても
その判定をめぐる混乱を回避するために提案された指標です。
よって、この指標に基づいて診断を行うことが、
患者の治療方針の決定や適切な予後予測に重要であると言えます。
【厚生労働省CRPS研究班から提唱された本邦版CRPS判定指標】
- CRPS臨床用判定指標
A . 自覚的症状(病気のいずれかの時期に、以下の自覚的症状のうち2項目以上該当すること)
- 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
- 関節可動域制限
- 持続性ないし不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、または知覚過敏
- 発汗の亢進ないしは低下
- 浮腫
B . 他覚的所見(診察時において、以下の他覚的所見の項目を2項目以上該当すること)
- 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
- 関節可動域制限
- 異痛症(触刺激または熱刺激)ないしは痛覚過敏(ピンプリック)
- 発汗の亢進ないしは低下
- 浮腫
なお、これらの指標には、2つの重要な但し書きが存在します。
この但し書きを十分に理解して活用されることが求められています。
以下は、2つの但し書きです。
※但し書き1
1994年のIASP(国際疼痛学会)のCRPS診断基準を満たし、
複数の専門医がCRPSと分類することを妥当と判断した
患者群と四肢の痛みを有するCRPS以外の患者とを弁別する指標である。
臨床用判定指標を用いることにより感度82.6%、特異度78.8%で判定できる。
※但し書き2
臨床用判定指標は、治療方針の決定、専門施設への紹介判断
などに使用されることを目的として作成した。
外傷歴がある患者の遷延する症状がCRPSによるものであるか
を判断する状況(補償や訴訟など)で使用するべきでない。
また重症度・後遺障害の有無の判定指標ではない。
詳しい治療法に関する情報はこちら
→CRPS(複合性局所疼痛症候群)に対する治療方法とは?
まとめ
今回は、CRPS(複合性局所疼痛症候群)の検査や診断方法について解説しました。
様々な検査法がある中でも、CRPSを特異的に判定することは非常に難しいようです。
それだけに、診断の遅れは、治療の発見や開始を遅らせることがあります。
治療抵抗性と言われるように、
難治性の病に発展しないように早期診断・早期治療が重要となります。
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