腰部脊柱管狭窄症における手術療法の種類や方法とは?
腰部脊柱管狭窄症は、脊髄の通り道である脊柱管の狭窄によって生じる疾患です。
主な症状は、下肢の痺れや疼痛、感覚障害などを呈し、60歳以上の高齢者に好発します。
幾つかの治療方法がありますが、症状が重度の場合は【手術療法】が適応となります。
腰部脊柱管狭窄症は、
“椎間関節の変形や椎間板変性による脊柱管への膨隆、または黄色靭帯の肥厚などによる脊柱管の狭小化に起因する神経症状を呈す疾患”
です。
【加齢】が発症の一つの要因となり、60歳以上の高齢者に好発します。
腰部脊柱管狭窄症に関する詳しい記事はこちら
→腰部脊柱管狭窄症とは?原因や症状、その治療方法は?
腰部脊柱管狭窄症の治療方法は大きく分けて
・保存療法
・手術療法
に大別されます。
保存療法では、リハビリテーションや薬物療法、さらには装具療法などが含まれます。
しかしながら、保存療法でも症状の改善が得られない場合は、
【手術療法】が適応となります。
保存療法の中でも効果が高いとされる治療法はこちら
→腰部脊柱管狭窄症に対するプロスタグランジン製剤(PG)の効果とは?
手術療法にも幾つか種類がありますが、大きく分けて
・除圧術
・固定術
に分けられます。
それぞれに利点や欠点、適応が存在します。
そこで今回は、腰部脊柱管狭窄症における手術療法の種類や方法について解説します。
腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリテーションの記事はこちら
→腰部脊柱管狭窄症のリハビリテーションの方法やポイントは?
腰部脊柱管狭窄症の手術療法とは?
腰部脊柱管狭窄症の手術療法は、大きく分けて以下の二つに大別されます。
・除圧術
・固定術
簡単に説明すると、
除圧術:脊髄の狭窄部位を除圧して圧迫を除去する
固定術:脊柱を固定して、脊柱の不安定性を軽減する
以下にそれぞれの方法を解説します。
除圧術
除圧術は、脊柱管の狭窄によって圧迫されている脊髄を除圧し、症状を緩和する方法です。
除圧術にも幾つかの方法が存在します。
以前最も行われていた手術療法は、
【腰椎広範椎弓切除術】です。
腰椎広範椎弓切除術は、椎弓と棘突起を大きく除去する手術です。
神経組織の除圧を得られるものの、腰椎の支持性を大きく損なうものでした。
なんせ棘突起というのは、腰椎の安定に寄与する「多裂筋」の付着部だからです。
これらのデメリットを解消するために発展した方法として、
【開窓式部分椎弓切除術】が行われるようになりました。
開窓式部分椎弓切除術は、棘突起を温存して椎弓を部分的に切除する方法です。
腰椎広範椎弓切除術より侵襲は少ないものの、腰椎に付着する筋肉を両側性に剥離することや、椎間関節の内側を切除することは同様であり、筋肉の障害を強く残すものでした。
そこでさらなる改善を目的とした最新の手術は、
【片側侵入両側除圧術】です。
腰椎の片側から侵入し、同側から開窓式に椎弓を部分切除し除圧することで、反対側をそのまま温存することが可能になりました。
除圧が可能となるとともに、腰椎の支持性を極力温存した手術方法です。
出血量も少ないため、高齢者にも適応が良いとされています。
しかしながら、除圧だけでは、症状が改善しない場合もあるのです。
固定術
固定術は、脊柱をチタン性のスクリューなどで固定する手術です。
これは、高度のすべり症や側弯変形、局所の後弯などで脊柱自体に不安定がある場合に、除圧のみでは効果が得られない時に適応となります。
実際には、
【腰椎除圧固定術】と呼ばれ、同時に除圧も実施します。
続いて、変性した椎間板の摘出や、すべりの整復を行い、スクリューを用いて脊柱を固定します。
除圧かつ固定を行うことで、不安定な脊柱に対しても適応となり、手術成績も良好とされています。
ただし、固定された脊椎は当然可動性を失っているので、動かすことは出来ません。
日常生活でそれらの運動が要求された場合には、固定された椎体の直上・直下に過度な負担がかかり、圧迫骨折やヘルニアのリスクが伴うのです。
腰椎圧迫骨折に関する詳しい記事はこちら
→腰椎圧迫骨折とは?原因や症状、治療方針は?
分類やタイプによっても症状の出方が異なります
→腰部脊柱管狭窄症の分類やタイプは?
まとめ
今回は、腰部脊柱管狭窄症における手術療法の種類や方法について解説しました。
最近では手術手技の向上によって、低侵襲で行え、その長期成績も良好であると言われています。
しかしながら、できることなら手術は避けたいもの…
重症化する前に早めに受診し、保存療法を中心に対応していくことが最善です。
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