「肩関節周囲炎(五十肩)」の発症のメカニズムとは?

    
Pocket

スライド26

一般に“五十肩”“四十肩”と呼ばれるものは、

正式な病名ではありません。

 

40代から50代に生じる肩関節の疼痛や拘縮は、

正式には、「肩関節周囲炎」と呼ばれる疾患です。

 

スポンサーリンク

 

「肩関節周囲炎」とは、

肩関節周囲に生じる炎症性の疾患であり、

主に痛みと関節可動域制限を主徴とする疾患の総称です。

 

 

狭義の「肩関節周囲炎」は、

・肩峰下滑液包炎
・腱板炎
・関節包炎
・石灰沈着性腱板炎
・腱板疎部炎
・上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎

など、その原因によって幾つかに細分化されます。

 

 

そのため、「肩関節周囲炎」の原因は、

“加齢”であることは確かなのですが、

肩関節を構成する骨や筋、靭帯、腱など、器質的な原因は多岐に渡ります。

 

 

そこで今回は、「肩関節周囲炎」の代表的な発症メカニズムについて、やや専門的な観点から解説します。

「肩関節周囲炎」の原因や治療はこちら
「肩関節周囲炎(五十肩)」ってどんな病気?原因や治療は?

肩関節周囲炎の発症メカニズムとは?

肩関節周囲炎の発症メカニズムとは、

・suprahumeral gliding mechanismの障害
・biceps mechanismの障害
・腱板疎部の病変
・肩甲上腕関節の癒着性病変

に大別されます。

 

以下にそれぞれの病態を解説します。

 

 

 

suprahumeral gliding mechanismの障害

肩関節(肩甲上腕関節)は、

肩関節を外転した際には、上腕骨頭の“外旋”を伴い、

肩関節を屈曲した際には、上腕骨頭は“内旋位”のままで、

大結節が烏口肩峰靭帯の下の中央を通過します。

 

このメカニズムこそが、

suprahumeral gliding mechanismであるのですが、

骨頭の運動を滑らかにする滑液包(肩峰下滑液包・三角筋下滑液包・烏口下滑液包)の癒着によって障害されます。

 

これらは、加齢などによる棘上筋の石灰化や不全断裂を生じることがあり、

それらが滑液包の炎症や癒着へと進行させるとされています。

 

 

 

biceps mechanismの障害

biceps mechanismとは、

上腕二頭筋の長頭腱が、肩関節内部に付着を持つことで、

どの方向においても関節窩と骨頭のStabilityを高めるメカニズムのことを指します。

 

結節間溝は、血行豊富で癒着しやすい部位とされており、

上腕二頭筋を断裂した場合や、滑膜部分に癒着が生じると、上腕二頭筋長頭腱の滑動性が低下し、

肩甲上腕関節の運動に制限が生じます。

 

 

 

腱板疎部の病変

腱板疎部とは、

烏口突起の外側の肩甲下筋と棘上筋の間のことを指します。

 

腱板疎部は、解剖学的にも疎な膠原線維からなり、

肩甲下筋と棘上筋の走行の違いを緩衝するための調整機構として存在します。

 

この腱板疎部に癒着が生じることで、棘上筋腱と肩甲下筋の間の滑動性が減少、

さらには烏口上腕靭帯の癒着によって著明な関節可動域制限が生じます。

 

 

 

肩甲上腕関節の癒着性病変

肩甲上腕関節の癒着性病変は、

関節運動の直接的な制限へとつながります。

 

関節包の前方は、後方に比しゆとりが大きいが、

肩関節周囲炎患者においては、この前方の関節腔や、下方のinferior pouchが縮小されやすいと言われています。

また、肩甲下滑液包なども閉塞しやすい特性を持つことなどからも、

同部位の癒着性病変の存在が確認されています。

 

 

 

まとめ

今回は、「肩関節周囲炎」の代表的な発症メカニズムについて、やや専門的な観点から解説しました。

このように、一概に肩関節周囲炎といっても、

その病態や発症のメカニズムは幾つかに大別されます。

言い換えると、それらを適切に評価できなければ、治療につなげることも難しいということです。

 

肩関節周囲炎に対するリハビリテーションはこちら
「肩関節周囲炎(五十肩)」の3つの病期とリハビリテーションとは?


スポンサーリンク
Pocket