変形性膝関節症と肥満との関係は?
「変形性膝関節症」は、
加齢による退行性変性疾患です。
高齢社会を迎える昨今では、
増加の一途をたどっている疾患です。
変形性膝関節症の進行と肥満との関連性に関して、
数多くの報告がなされています。
「変形性膝関節症」は、
“膝関節軟骨の磨耗により、変形や荷重時の疼痛を症状とする退行性疾患”です。
自覚症状を有する患者は約1,000万人、
潜在的な患者数は約3,000万人と言われています。
主な症状は、
O脚変形や、歩き始めの疼痛、関節可動域制限などですが、
進行すると、歩行を始めとした日常生活動作に支障をきたします。
最終的には、「人工膝関節全置換術」などの手術療法へ発展します。
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
→TKAのインプラント「BCR型」や「Medial Pivot型」とは?
多くは、高齢女性に好発します。
一次性の要因が多いとされる中、
危険因子として、
・関節動揺性
・動的負荷
・関節周囲筋力の低下
などの力学的要因が示唆されます。
詳しい原因はこちら
→変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
加えて、「肥満」との関係が示唆されており、
古くから多くの関連性を示唆した報告がなされています。
今回は、変形性膝関節症と肥満との関係について解説します。
変形性膝関節症の原因は?
変形性膝関節症と肥満との関係性を考える前に、
変形性膝関節症の原因をおさらいしましょう。
冒頭に述べたように、
高齢女性に多発することから、
“加齢”や“ホルモン”などが一つの危険因子と考えられています。
このような変形性膝関節症になりやすい素質に加えて、
繰り返される姿勢や動作の力学的ストレスが発症の引き金と考えられています。
具体的には、もともとO脚変形をきたしやすい日本人は、
膝関節O脚の状態での運動や動作を継続することで、
膝内側へのストレスが増加し、さらなるO脚へと進行していくのです。
このように、力学的ストレスこそが、変形性膝関節症の引き金であり、
介入すべきポイントでもあります。
変形性膝関節症と肥満の関係は?
変形性膝関節症の原因が、力学的ストレスである場合、
肥満による体重増加は、力学的ストレスを増加させる要因となります。
変形性膝関節症と肥満との関連において過去の報告では、
・肥満は変形性関節症の発症以前に存在し、肥満が変形性膝関節症の結果ではない。
・女性の変形性膝関節症の症例の40%は肥満である。(内訳:男性1098人、女性1198人,in 英国,1963 Lawrence)
といった報告や、
・男性においては体重と変形性膝関節症との相関はなかったが、女性においては、40歳時の体重、現在の体重、40歳からの体重変化が、多重ロジスティックモデルにて有意な危険因子として挙げられた。(内訳:男性136人、女性435人,in 福岡)
などが報告されている。
さらに、スペイン・カターニャ地方の変形性膝関節症患者のコホート研究において、
・肥満度が高いほど人工膝関節全置換術(TKA)へ進展するリスクが高く、軽度肥満(BMI25以上30未満)群でも、BMI正常群に比較してTKA実施リスクが40%高い。
Kirsten Leyland氏ら,2013
と報告されている。
これらの報告では、
変形性膝関節症と肥満には関連があり、
かつ変形性膝関節症患者においては、肥満はTKA実施のリスク因子ということが言えるでしょう。
予防方法として歩行が有効とされています。
→「変形性膝(股)関節症」歩けば良くなるのか?適切な歩数は?
まとめ
今回は、変形性膝関節症と肥満との関係について解説しました。
事実、日常生活において、体重の4〜7倍の負荷が膝関節に加わることが知られており、
力学的な負荷が変形性膝関節症を進行させるというのは、容易に想像がつくでしょう。
代謝の乏しい高齢者の減量は一筋縄では困難であり、
栄養の専門家である管理栄養士や、運動の専門家である理学療法士などの専門家のアドバイスの元、進めると良いでしょう。
変形性膝関節症の治療に関する記事はこちら
→変形性膝関節症にヒアルロン酸注射は効果がある?
→変形性膝関節症にサポーターは効果がある?選び方のコツは?
→変形性膝関節症に対する筋力トレーニングとは?自宅で出来る方法は?
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