人工関節手術後の傷が「ケロイド」に…これって治るの?
「ケロイド」
怪我などをした後にミミズ腫れのように腫れて跡になってしまう傷。
これって実は、手術などの傷にも出現することがあります。
人工関節の手術後などに、
「手術の傷がケロイドになってるんだけど治るの?」
こんな質問をされる方がいます。
手術後の傷に関しても多くの場合は、
一般に皆さんが「ケロイド」と認識しているような
赤いミミズ腫れのような傷にはならずに皮膚の色に同化するように徐々に目立たなくなります。
(区別が出来ないほど完全に消えることは難しいようです)
しかしながら、稀にケロイドのような、
赤くミミズ腫れのような状態になっている人を見ることもあります。
人工関節など、特に膝関節の患者さんなどではそのような状態になる人も散見され、
・皮膚が擦れると痛い
・傷の周りがかゆい
なんていう悩みが聞かれます。
ただ、「ケロイド」って本当はどのような状態かご存知ですか?
実は、多くの人がケロイドという言葉を誤解している人が多いそうです。
実際には、
・真性ケロイド
・肥厚性瘢痕
の二つに分類されるそうです。
皮膚はどうやって修復する?
怪我や手術などによって、
皮膚が治癒する過程には以下のような修復過程があるそうです。
まず、切った傷口(縫った傷口)の部分にフィブリンと呼ばれる血液成分が集合します。
この成分は、いわゆる“糊”のような働きを持ち、
傷同士をくっつける役割を果たします。
特に表層の皮膚の結合は早く24時間以内に完了するそうです。
その後は徐々に、毛細血管が結合・増殖し、傷口の間に繊維組織が出来上がります。
この繊維組織が結合しながら強固な組織を作っていき、
傷跡が開かないようになるのです。
この修復過程において、
「ケロイド」と呼ばれる現象が出現する可能性があります。
「ケロイド」って何?
冒頭に述べたようにケロイドには以下の二つの種類があります。
・肥厚性瘢痕
・真性ケロイド
肥厚性瘢痕
まず、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)は、
皮膚の修復の過程において、過剰な繊維組織が産生されることによって出現します。
傷口の表面にまで赤く盛り上がったミミズ腫れのような状態になりますが、
これは傷口の部分を超えて広がることはありません。
一見、一般に言われる「ケロイド」のような状態になりますが、
時間経過によって徐々に軽減します。
真性ケロイド
真性ケロイドも、肥厚性瘢痕と同様にミミズ腫れのような赤い腫れ方をしますが、
いつまでたっても改善しません。
それどころか、徐々に傷口を超えて、
周りの皮膚にも侵食していくものです。
これにはアレルギー反応など、
体質的な要因が関与しているとされています。
特に人種間の差や、親子間での遺伝的な要素などが報告されています。
ただし、厳密にどこからどこまでを、
肥厚性瘢痕と言い、
どこからどこまでを真性ケロイドというか、
その明確な基準はないそうです。
人工関節後の傷は治るの?
冒頭に挙げたような、膝などの人工関節後の傷に関して、
「ケロイドは治るのか?」
という不安に対する明確な答えはありません。
ただ、おそらく多くの方が「真性ケロイド」ではなく「肥厚性瘢痕」のような状態である可能性が高いです。
肥厚性瘢痕の場合であれば、個人差はあるもののあくまで一過性であり、
数ヶ月や数年のスパンで軽減していくものと考えられます。
そのため、術後の入院中の経過の中でどうにか判断することは難しく、
それなりに経過を追っていく必要もあるのでしょう。
ただ、真性ケロイドや肥厚性瘢痕になりやすい条件として、
“引っぱられるところや、皮膚の緊張の強いところはケロイドになりやすい”
といった特徴もあるようで、
膝関節の前面(お皿の直上や横)にメスを入れる膝関節の人工関節手術の場合、
膝の屈曲運動(曲げる)によって皮膚が伸長を繰り返されることで生じる可能性も少なくないのではないかと考えられます。
結局ケロイドは治るの?
先に述べたように「肥厚性瘢痕」であれば、
時間経過に伴って自然寛解していきます。
もし本当に「真性ケロイド」と診断された場合、
以下のような治療方法があります。
・手術療法:ケロイドを除去し、再発が生じにくい縫い方で縫合します。
・放射線治療:比較的新しいケロイドに効果がありますが、皮膚障害などの後遺症のリスクもあります。
・注射治療:ステロイド注射をケロイドに直接行うことで改善が期待できますが、痛く、そして繰り返しの治療が必要です。
・塗り薬:注射と同様にステロイドを使用して軟膏を塗ります。
・内服治療:リザ弁と呼ばれる内服薬を使用します。
まとめ
今回は、「ケロイド」について、二つの概念を解説しました。
皆さんがケロイドと思っている膝関節手術後に生じるミミズ腫れのような腫れは、
いわゆる「肥厚性瘢痕」である場合が多く、
時間経過に伴って寛解することがほとんどです。
ただし、一部本当にケロイドへ移行する人もいるようで、そのような場合は担当医や皮膚科などを受診し相談するようにしましょう。
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